M&Aを行う際は、買い手・売り手ごとに注意するべきポイントがあります。
注意点を踏まえてM&Aを行わないと、M&Aの交渉やM&A後の企業経営に支障をきたしてしまいます。
本記事では、M&Aの注意点について、買い手・売り手ごとに分けて、詳細を解説していきます。
M&Aの注意点 ~買い手編~
買い手側の企業が注意するべきポイントは下記のものです。
- 人材流出が起こる
- のれんが減損する
- 社員の士気が下がる
- 統合プロセスに時間がかかる
- シナジー効果を期待しすぎる
人材流出が起こる
これはM&Aを行う上で避けては通れません。
M&Aを社員の満場一致で進めることができるのが理想ではありますが、どうしても反対意見も出てきます。
また、表面上はM&Aに反対していなくても、胸の奥底では反対意見を抱いている人も存在します。
M&Aを進めるにあたって、事前に社員がどのような意見を持っているのか、ヒアリングしておくことをおすすめします。
社員の大多数が反対している場合は、企業統合後のことも考えて、M&Aのタイミングを再検討する必要もあります。
のれんが減損する
M&Aで行われる事業譲渡・株式譲渡では、「無形資産」も含めた買収価格が決められていきます。
無形資産とは、従業員や企業が生み出した利益など、目に見えない資産を指します。
無形資産の金額は「のれん」として経費計上することが可能なため、節税面で非常に大切です。
ただし、M&Aによる企業買収後に利益が下がってしまった際は、のれん代と獲得利益の差額を減損処理しなければなりません。
M&Aが利益拡大につながるものか否か、入念なチェックが必要です。
社員の士気が下がる
これは人材流出と似ているのですが、合併によって自身のポジションが無くなってしまったり、買収先の社員と上手くいかなったりなど、様々な要因が絡んで、社員の士気が下がってしまいます。
社員の士気が下がってしまうと、業務効率が下がったり、従業員同士のコミュニケーションが滞ってしまったりなど、支障が出てきます。
社員の士気を下げないためにも、「なぜM&Aを行うのか」経営陣が社員に示すことが大切です。
統合プロセスに時間がかかる
統合プロせずは一朝一夕に完了できるものではなく、数か月、半年、長くなると数年以上かかることもあります。
手を抜いて統合プロセスを進めてしまうと、社員同士の関係が悪化したり、経営陣の足並みが揃わない等、企業運営に支障が出てしまいます。
統合プロセスには時間がかかる点、あらかじめ認識しておきましょう。
M&Aの注意点 ~売り手編~
売り手側の企業が注意するべきポイントは下記のものです。
- 買い手の選定に時間がかかる
- 価格交渉で、値下げを強要される
- 企業文化が合わない
- 取引先がM&Aに反対する
- 雇用、労働条件が変更される
- ひとつの買い手企業のみを過信しない
買い手の選定に時間がかかる
買い手側の企業も、M&Aに際して各種条件を設けているので、自社の条件と合致させるのは、想像以上に時間を要します。
自力でM&Aを行うよりも、プロのM&A仲介業者に依頼した方が、時間とお金の節約になります。
M&Aを検討されている場合は、M&A仲介業者を利用して、効率的に業者選定を行っていきましょう。
価格交渉で、値下げを強要される
最初は売り手側の価格条件に前向きな企業でも、交渉中に態度を変えて、買収価格の値下げを強要してくるような企業もあります。
価格高所自体は、M&A交渉の中で必要なプロセスですが、あまりにも値下げを強要してくるような企業とは、交渉を取りやめた方が無難です。
企業文化が合わない
M&Aの交渉過程で、互いの財務状況や収益力など、数字面は入念にチェックされますが、企業文化や従業員同士の関係性など、ソフト面のチェックまでは手が回らないことがあります。
企業文化に関しては、数値化することは困難ですので、実際に社員同士が仕事をしてみたり、コミュニケーションを取り合うまで、合う合わないを把握することが難しいです。
企業文化のすり合わせにも時間がかかる点、認識しておきましょう。
取引先がM&Aに反対する
M&Aを行う際は、M&Aの契約が締結されるまで、外部に情報を漏らさないのが鉄則です。
M&Aの情報が洩れてしまうと、交渉中に干渉される恐れがあるためです。
したがって、M&Aの契約が結ばれた段階で、取引先に通達することになるケースが多いですが、取引先がM&Aに反対することがあります。
M&Aを行ったら、取引関係を解消すると言ってくる取引先も出てきます。
M&Aを優先するのであれば、取引先が離れてしまうこともあらかじめ考慮しておかねばなりません。
雇用、労働条件が変更される
基本的には、買収先の企業ルールに従っていくことになるので、雇用条件・労働条件の変更に反対する訳にはいきません。
経営陣クラスであれば、条件変更による影響は少ないですが、一般の従業員にしてみれば大きな問題です。
条件変更によって、社員の反発を受けないよう、買収先企業と調整していくことが肝要になります。
M&Aの注意点 ~買い手・売り手共通
買い手・売り手に共通するM&Aの注意点は下記の通りです。
- 信頼関係を構築する
- 互いの情報を適切に管理する
- M&A仲介会社を利用する
- 契約書は必ず弁護士のチェックを通す
信頼関係を構築する
信頼関係がない状態で交渉を進めてしまうと、相手の情報を疑ってしまったり、意思疎通に時間がかかったりなど、余計な労力を使ってしまいます。
何も根拠なく、相手企業を信頼してはいけませんが、こちらが誠意ある対応を見せて、相手企業が信頼関係の構築に前向きかどうか、見極める必要があります。
信頼関係を構築できれば、交渉がスムーズに進むのみならず、M&A締結後の統合プロセスもスムーズに進められます。
互いの情報を適切に管理する
相手企業の情報を漏らしてしまうと、M&Aの事実が外部に伝わるのみでなく、企業が公開していない各種情報を他の企業が知ることになります。
M&A交渉の前に「秘密保持契約」を必ず結んで、適切に情報管理をしていく旨を確認し合いましょう。
M&A仲介会社を利用する
M&A仲介業者は、相手候補のマッチングのみならず、M&A交渉中のサポートも行ってくれます。
各種書類作成も代行してくれるので、事務処理の手間も省くことができます。
M&A仲介会社を選ぶ際は、「成功報酬型」の仲介会社を選ぶようにしましょう。
成功報酬型のM&A仲介会社であれば、M&Aの締結が実際に行われた場合のみ、費用を支払います。
M&Aが途中で頓挫した場合は、費用を支払う必要はありません。
着手金も0円のケースが多いので、費用を節約してM&A交渉を進められます。
契約書は必ず弁護士のチェックを通す
一見すると、適切に見える契約内容でも、法律面では穴が合ったり、不備があるケースがあります。
顧問弁護士を雇っている場合は、M&A交渉のグループにあらかじめ入れてしまうのもアリです。
M&A仲介会社を利用すれば、仲介会社に所zくする弁護士が書類のチェックを行ってくれるので、顧問弁護士がいない場合でも安心です。
まとめ
M&Aを行う際は、買い手・売り手ともに各種注意点に留意して、交渉・締結を進めていくことが肝要です。
M&Aでは大なり小なり、どうしても問題が発生してしまいます。
まったく問題が起こらずに、M&Aが進むケースは少ないと見てよいでしょう。
だからこそ、事前に注意点を把握して、対策を講じていく必要があります。
今回解説して注意点を参考にして頂き、M&A交渉を進めていきましょう。