2年前にNECは、700億円でビッグローブを日本産業パートナーズへ売却しました。その2年後に今度はKDDIが、800億円で日本産業パートナーズから、ビッグローブを買収することになりました。KDDIは2年前に、NECから直接ビッグローブを買収することも出来たはずなのに、なぜ期間を置き、高い金額で買収することにしたのか?M&Aのプロが解説いたします。
KDDIがビッグローブを日本産業パートナーズを通じ買収
KDDIがビッグローブを800億円で買収すると報道されています。
ちなみにビッグローブは、2014年にNECが700億円で日本産業パートナーズに売却した会社です。
この2年間強で、日本産業パートナーズは100億円稼いだ計算になります。
KDDIは、なぜ2年の期間を置いて、このタイミングでビッグローブを買収したのでしょうか?
KDDIはなぜ直接NECからビッグローブを買わなかったのか?
そもそも、KDDIが2年前にビッグローブを700億円で買収すればよかったのですが、KDDIがそれをしない理由の1つはリスク、管理コストの増大を避けるためでしょう。
ビッグローブはNECという大企業のグループ会社であったため、管理業務がまったくされていない、ということはなかったと思います。
しかし、全く異なるグループで経営をすると、オペレーションの確立、また想定できないリスク要因を把握するのに時間とコストがかかります。
その点、いったんファンドが買い受ければ、リスク要因、他社でのオペレーションも考慮し、買収後、経営しやすい状態にしているはずです。
KDDIとしてみれば、そこを優先した可能性もあります。
その対価として100億円が適当なのかは判断できませんが、M&Aで付き物のリスク要因をいったんファンドがうけて、買収しやすい形にする、という機能がファンドにあるといってよいでしょう。
不調とはいえNECの資産売却から学ぶべき点あり
一方で、2014年にビッグローブを日本産業パートナーズに売却したNECでは、相変わらずの業績低迷が続いています。
しかし、携帯電話やPC事業を切り離した後でもなお、NECのPBR(株価純資産倍率:解散価値)を見ると、その価値は1倍前後であり、まだ抱負な資産を保有していることがわかります。
こういった益、そして換金できる資産を持っていること自体が、会社の強みであることは改めて抑えておくべきことです。
逆にいえば、今絶好調の経営者は将来に向けて、一時的に業績が悪化した場合に備え、益出し、資金捻出できる資産を準備しておくことが重要だと言えるでしょう。