1,080円でヘアカットサービスを提供するQBハウスが、ニューヨークに出店すると報道されています。物価の高いニューヨークで、国内では低価格のヘアカットサービスと認知されているサービスを提供することに、同社はどのような狙いを持っているのでしょうか?業績や株主遷移を踏まえながら考えてみましょう。
ヘアカット専門店QBハウスが遂にNYへ出店する
1,080円でヘアカットサービスを提供するQBハウスが、ニューヨークに出店すると報道されています。
ヘアカット専門店のキュービーネットホールディングス(東京・渋谷)は理容店「QBハウス」を米ニューヨークに出店する。
日本の料金体系と同様、カット時間10分で料金は10ドル(約1080円)程度を見込む。
「短時間・低価格」戦略で10年後に50店体制を目指す。国内のデフレ下で磨いた低コストサービスで世界市場を開拓、2年後に来店客ベースの海外比率を3割まで高める。
2016/11/18 日本経済新聞より引用
物価の高いニューヨークで、国内では低価格のヘアカットサービスと認知されているサービスを提供することに、同社はどのような狙いを持っているのでしょうか?
QBハウスの激しい株主遷移と国内における現状
QBハウスは、これまで創業者の小西氏がオリックスへ、オリックスがジャフコへ、ジャフコからインテグラルへ株式譲渡がされ、株主が転々としている状態です。
そんなQBハウスの決算公告は、昨年(2015年)の9月28日付が最新のものとなっております。
最新のものもあるはずですが、キュービーネットのHPによると同社はホールディングス化を図ったこともあり、直近の財務数値が見当たりません。
以下は昨年の決算公告です。
株主であるインテグラルは上場させてexit(株式を売却し、利益を得ること)を狙っているでしょうから、上記で紹介した前期におそらく減損を含め、財務会計上もかなり膿を出したのでしょう。
営業損失を出している点は非常に気になりますが、減損により償却負担も減るはずですから、回復は見込めるはずです。
また、HPでは相変わらず、売上、店舗数とも伸びています。
しかし、国内の需要はなかなか厳しく、都心部はよいものの、地方では地場の1,000円カットも頑張っています。
本来は、こういった企業を買収していきたいのでしょうが、そもそも収益性が低いため、地場の1,000円カット企業を買収し、上場を前提とした管理体制を構築すると利益が出ないと判断しているのではないでしょうか。
QBハウスが海外展開で行う日本とは違うマーケティング
そこで活路は海外、ということになりますが、アメリカで利益が出せるのかは、現時点では「?」としか言いようがありません。
ちなみに国内で517店舗を運営するQBハウスは、アジアでも既に110店舗を運営しており、その内訳は、シンガポール35店舗、香港50店舗、台湾20店舗まで広げています。(2016年11月現在)
日本では、圧倒的な安さで店舗数を伸ばしてきましたが、海外展開する際は、ユニクロのように日本と金額を変えず、富裕層向けのブランドとして認知していただき、高い売価帯を維持し続ける必要があります。
実際に、アジアに展開されている店舗は、「10分1,080円」という安さを訴求したアプローチではなく、「短い時間で高品質なヘアカット」を提供していることにブランドの認知を置いたマーケティング活動が行われています。
確かに考えてみると、10分で1,080円を支払うということは、通常のヘアカットに換算して、約60分で6,480円の費用がかかるわけですから、決して安くはありません。
むしろ、時間をお金で買うイメージが成り立ち、見方を変えれば「10分1,080円」は、忙しい時間を過ごす富裕層向けのブランドとなり得るわけです。
今回のニューヨーク出店は、マーケティング活動の一環として、付加価値の高いブランドを作ることが目的と思われますが、これが成功すればアメリカでも出店を増やすはずです。
アメリカで利益を出す算段があるのでしょう。
いずれにしてもQBハウスは上場へ向けて稼いでいかなければなりません。そのための施策を次々と打ち続けていかなければならない立場にいる、といってよいでしょう。
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