ここ最近「原価バー」が至るところで見られるようになっています。中にはハイボール1杯30円、ビール1杯100円という顧客にとっては魅力度が高い価格でドリンクを提供する店すらあります。ところで、これほど安い価格で商品を提供する店舗は、独占禁止法の「不当廉売」に違反しないのでしょうか?考察してみましょう。
原価バーの価格破壊は独禁法に違反しないの?
最近「原価バー」というスタイルのお店が増えています。
一定の入場料を支払うと食べ物・飲み物が原価で提供されるというもので、入場料がお店側の利益になる仕組みです。
中には、ハイボール1杯30円など驚きの価格設定をする店舗すらあります。
しかし、少し詳しい人なら「あまり低い金額で商売すると独禁法に違反しないのか」という疑問を持つかもしれません。
果たして、原価バーは独禁法に違反する安売りに該当しないのでしょうか?
独禁法で不公正とみなされる「不当廉売」の水準
独禁法では「不当廉売」を不公正な取引として禁止しています。
不当廉売の定義は以下のとおりです。
「正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであって、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」
「不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること」
ここでいう費用を著しく下回る対価や不当に低い対価とは、原価割れの価格とイメージするとわかりやすいでしょう。
とはいえ、商品を原価割れで販売したとしても、それで直ちに独禁法違反となるわけではありません。
例えば、以下の場合は原価割れであっても、廉売に「正当な理由があると認められる」とみなされています。
- ・生鮮食料品など品質が急速に低下する場合の値下げ販売
- ・季節商品で、季節が過ぎたため在庫処分として見切り販売
- ・市場の需要が低迷し、価格が大幅に下落した場合の値下げ販売
- ・新規開店や店内改装など際の一時的なセール
- ・閉店セール(継続的と認められる場合を除く)
原価バーはあくまで「原価売り」で適法の範囲内
それでは原価バーはどうでしょう?
原価バーは食べ物や飲み物を「原価」で提供することを謳っています。
この謳い文句を前提とすれば、提供価格は「原価」であって、「原価割れ」ではないことになります。
仮に若干の原価割れ商品があったとしても、入場料まで含めて考えたときに利益が確保できているような状況であれば、不当廉売とは認められないでしょう。
ギリギリのラインで顧客のニーズを喚起し、集客に成功している原価バーの経営者も、当然これらのことを踏まえて店舗を経営していると考えられます。