イオン巨額赤字〜GMS部門の不振以外に考えられるもう一つの可能性

企業分析

 イオンが先週発表した2017年2月期第2四半期の連結決算は最終損益が53億円の赤字となり、GMS部門(総合スーパー)の業績不振に大きな注目が集まっています。しかし、実際にはこれだけがイオン業績不振の原因ではなく、グループ会社からの利益取りこぼしを起こしていることが、業績不振のもう一つの要因として考えられます。

スポンサーリンク

イオン巨額赤字の理由は、GMS部門の不振以外にもう一つ存在する

 イオンが先週発表した2017年2月期第2四半期の連結決算で、最終損益が53億円の赤字と、前年の21億円赤字から更に業績悪化していることがわかりました。

 多くの報道は、イオンの業績不振の理由として、「スーパー事業の不振」を報道していますが、実際にそれだけが理由ではありません。

 以下の中間決算資料を、しっかりみてみましょう。

 イオン決算短信

 実は、この数値を客観的に見ていくと、GMS部門の業績悪化以外にも、イオンの赤字幅が拡大しているもう一つの理由が浮かび上がります。

スポンサーリンク

数値からGMS部門の不振ぶりをおさらいしよう

 まず、不振といわれるGMS(総合スーパー部門)の数値を見ると、確かに赤字幅が広がっています。

 その赤字を金融、ディベロッパー部門でカバーしているのが近年におけるイオン業績の傾向です。

 GMS部門単体で見ると、赤字幅が100億円近く広がっており、これは非常に厳しい数字と言えます。

 何と言っても、半期で売上が1.3兆円あるのに「赤字」というのは、商売として考えれば、まともな経営者が事業撤退を検討する数字です。

 GMS部門の業績悪化要因は、消費者へ販売する価格(売価)が安すぎることに尽きます。

 コンビニが儲かる大きな要因は、コンビニでは定価販売が当然、という常識を作り上げたことが一番大きい、と私は考えています。

 GMS部門の成功を支える本質が、「安く大量にモノを売る」こと以外に無いならば、業績の立ち直りは今後も期待できないでしょう。

***以下、イオン決算短信より引用***

節約社長

***引用、ここまで***

スポンサーリンク

イオン業績不振もう一つの理由として考えられる「利益の取りこぼし」

 次に、P/L(損益計算書)を見ていきましょう。P/Lを引用致しましたので、文章の一番下段をご参照ください。

 トータル50億円以上の赤字となっているのは冒頭でお伝えしたとおりですが、気になるのは四半期純利益が黒字だということです。

 その後、非支配株主に帰属する四半期純利益という項目が控除され、最後に赤字となっています。

 これは、イオンの子会社であるが、例えばイオンが60%、他の企業が40%議決権を保有する場合に、イオンの連結P/Lでは子会社の売上や利益を合算するものの、その会社の利益の40%はイオンが保有しているわけではないので、最後に控除して、イオングループに残る利益をできるかぎり正確に計算しよう、という方法をとっています。

 イオンの場合、この非支配株主に帰属する四半期純利益330億円以上控除しています。

 要するにグループで結構儲かっている企業があるにも関わらず、イオンが100%株式を持っていない企業が相当数ある、ということです。

 逆に、「イオンが100%か100%に近い議決権を持つ会社はあまり儲かっていない」とも言え、GSM部門の不振に加え、イオン単体ではなかなか利益が稼げなくなっている可能性もあります。

***以下、イオン決算短信より引用***

節約社長

***引用、ここまで***

Photo credit: benjamin.krause via Visualhunt.com / CC BY

企業分析
シェアする
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
大原達朗

一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会代表理事・アルテパートナーズ株式会社代表取締役として、M&Aを手掛ける公認会計士です。

BBT大学、法政大学院イノベーションマネジメント科の教員も兼任しております。

大企業だけではなく中小企業にとっても、ユーザーフレンドリーな会計業界を、世界中に広めることが目標です。

M&Aの悩み(会社や事業を売りたい/会社や事業を買いたい/小規模M&A投資を検討している)があれば、お気軽にお問い合わせください。

運営サイト:
経営者のための実践ファイナンス

【現職】
一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会代表理事
アルテ監査法人代表社員
アルテパートナーズ株式会社代表取締役
日本マニュファクチャリングサービス株式会社監査役
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼任講師
ビジネス・ブレークスルー大学大学院准教授
ビジネス・ブレークスルー大学准教授
PT. SAKURA MITRA PERDANA Director

【職歴】
1998年10月 青山監査法人プライスウオーターハウス入所
2004年1月 大原公認会計士事務所開設
2004年6月 株式会社さくらや 監査役
2006年1月 株式会社ライトワークス リスクコンサルティング部ディレクター
2007年4月 ビジネス・ブレークスルー大学大学院講師
2008年4月 法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼任講師(現任)
2008年4月 アルテ公認会計士共同事務所開設 代表パートナー
2008年6月 日本マニュファクチャリングサービス株式会社 監査役(現任)
2009年4月 アルテパートナーズ株式会社設立 代表取締役(現任)
2010年7月 アルテ監査法人設立代表社員(現任)
2010年8月 日本M&Aアドバイザー協会 理事
2014年10月 日本M&Aアドバイザー協会 代表理事(現任)
2016年4月 ビジネス・ブレークスルー大学准教授(現任)

【所属団体】
日本公認会計士協会、一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)、日本税理士会、日本CFO協会

【資格】
公認会計士、税理士、 JMAA認定M&Aアドバイザー (CMA)

【その他】
ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA/経営管理修士(専門職) 日本CFO協会主任研究員(2006年)

大原達朗をフォローする