出向と派遣には、「出向:労働契約の一部又は全部が出向先に移る」「派遣:労働契約は派遣先には移らず、あくまで派遣先は指揮命令権のみを有する」という違いがあります。
「出向」と「派遣」で社員の扱いはどう違う?
出向させた社員と派遣した社員の根本的な違いは、従業員との労働契約(雇用契約)が実際に働く会社に移るかという点にあります。
すなわち、
- 出向:労働契約の一部又は全部が出向先に移る
- 派遣:労働契約は派遣先には移らず、あくまで派遣先は指揮命令権のみを有する
という形になるのです。
このような出向と派遣の違いを考える場合には、労働契約以外にも注意しなければならない点があります。
中でも重要なポイントとなってくるのが労災保険の取扱いであり、本日はこの点でどのような違いが出てくるかをご紹介したいと思います。
「出向」と「派遣」で労災保険の適用はどう変わるのか?
社員が業務中に事故等で負傷等を負った場合には、労災保険から保険給付を受けることができます。
出向した社員が労災事故に遭遇した場合
出向の場合は労働契約の一部又は全部が出向先に移るため、それに伴って社員は出向先の管理監督下に入ると考えられます。
派遣した社員が労災事故に遭遇した場合
対して、派遣の場合は派遣元の労災保険の適用を受けます。
なぜなら派遣の場合には、派遣先はあくまで就業員に対して業務に関する指揮命令権を有するのみであり、派遣従業員を管理監督するのは派遣元だからです。
「出向」の場合は給料の支払を誰が行うかで労災保険の計算が変わる
上記のように労災保険の適用は、
- 出向:出向先の労災保険を適用
- 派遣:派遣元の労災保険を適用
となるのが原則ですが、イレギュラーなケースが「出向」の際に考えられます。
例えば、出向従業員の給料が出向元から支払われる場合があります。
このような場合、出向先の労災保険料を計算する際は、出向元から支払われた出向従業員の給料を加算する必要があります。
逆に、出向元では出向従業員の給料分を控除して、労災保険料を計算する必要があります。
ちなみに雇用保険料は、主に給料を支払っている側で計算するため、出向元で給料を支払っている場合には、出向元の雇用保険料に加算する必要があります。
従業員を出向させる場合には、労災保険と労災保険料の取扱いに注意する必要があることを念頭に置いてください。
出向と派遣の違いについて
出向と派遣の違いについては、下記の記事で説明しています。