強い自己否定を繰り返すインポスター症候群社員の心理と接し方

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 部下が良い資料を作って持ってきたので、貴方は部下を褒めました。ところが部下は「これは…やれと言われたのでやっただけで…」と、素直に喜ばず、それどころか不安げな表情を浮かべます。このように、自分の能力を過小評価する社員は、インポスター症候群を抱えているかもしれません。弱点を受け入れながら、彼らの成長を促す接し方をご紹介します。

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なぜなのか?褒めたのに「自分なんてダメです」

  社長:「凄く良く出来た資料を作ったじゃないか。よくここまで作りこんだね。Aさん凄いよ!次もよろしく!」

  女性社員A:「いえ、これは…やれと言われたのでやっただけで…私、そんなんじゃないんです…orz」

 貴方は部下と接している中で、このような場面に出くわしたことがありませんか?

 単に謙遜しているだけに見受けられるならば、それでよいでしょう。

 しかし、冴えない表情で自分を否定するような反応を見せたり、大げさなまでに「自分には本当はこの業務を担う能力が無いんだ」というような言葉を返して、社員が落ち込んだ顔をするならば注意が必要です。

 褒められても自分の能力を否定する社員は、もしかするとインポスター症候群を抱えているかもしれないからです。

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自分の能力を過小評価することで自分の心を守るインポスター症候群

 インポスター症候群とは、自分に自信がなく自己評価が低いゆえに、自分の出した成果を正当に認めることが出来ない症状を言います。

 インポスター症候群を抱える人は、自分が成果を出して賞賛を受けても、その言葉を素直に受け入れられず、かえって「自分はその言葉を受けるに値しない人間だ」と考えてしまいます。

 また、自分が成果を出したことによって、誰かを傷つけているのではないか、誰かに迷惑をかけているのではないか、という思考回路に陥りがちです。

 これら、自分が成功することが、誰かを欺いていると感じる状態から、インポスター(詐欺師)症候群と名付けられています。

 社会性が強まる思春期頃から発症しやすくなり、症状に悩む人の大半が「自分が勝手に行動することで誰かを騙したり傷つけてしまった」と感じる原体験を通じて、症状を慢性化させていきます。

 特に女性は、仲間意識を重視する性向を元来持っているため、無意識のうちに「自分が活躍することを誰かに疎れたくない」「なるべく目立たないようにしよう」と考え、インポスター症候群の症状を強める傾向があります。

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相手の存在を肯定し過程を褒める接し方が肝要

 とはいえ、インポスター症候群を抱える人の多くにはある共通点があります。

 彼らの多くは、有能かつ誠実であり、真面目に仕事に取り組む姿勢を持っています。

 このような部下を生かすために経営者(上司)として出来ることを、最後にご紹介したいと思います。

1)存在とパーソナリティを言葉にして肯定する

 インポスター症候群を抱える人は、自分を使えない人間だと過小評価しがちです。

 同じ職場で働いてくれることへの感謝や、その人の性格的な長所を言葉にして肯定してあげましょう。

 「貴方の気遣いに多くの人が感謝している」「貴方が職場にいることを感謝している」などの言葉は、過小評価を緩和する効果的な言葉となります。

2)仕事の成果ではなく過程を評価する

 インポスター症候群を抱える人が、仕事の成果を評価されるのを嫌がるのは、一種の自己防衛反応です。

 もし次の仕事で成果が出なかった時は、自分のことを皆が嫌いになるだろうと考え、「自分はこれしかできない」と成長を拒む負のスパイラルを、自分の中で作ろうとします。

 このような部下に対しては、仕事の成果ではなく過程を評価することを意識しましょう。

 「かなり手間かかったでしょう。本当にお疲れ様。週末はゆっくり休むと良いよ。」など、プレッシャーがかからない形で、過程の承認を繰り返すことが、彼らに自信を深めてもらうコツです。

3)できるだけ1対1の状況で評価と肯定を行う

 手間がかかるかもしれませんが、評価と肯定はできるだけ1対1の状況で行うことが望ましいでしょう。

 というのも、インポスター症候群を抱える人は、他人の目を極端に気にし、人前で賞賛されることを嫌がる傾向を持ちます。

 会議室や外出先など1対1の場面ならば、人の目を気にせず、彼らが評価や肯定を受け入れられる環境が作れます。

 信頼関係が出来上がれば、彼らも本音を語りはじめ、改善点などのフィードバックを素直に受け入れてくれるようになります。

4)相手の能力に応じたシンプルな責任を与える

 最後のポイントは「相手の能力に応じたシンプルな責任を与えること」です。

 先述の通り、インポスター症候群を抱える人は、有能かつ誠実であり、真面目に仕事に取り組む姿勢を持つケースが多いものです。

 彼らが成果に対する賞賛を拒むのは、「仕事をどんどん振られて、どうせ最後に私は失敗する。その時どうしたら良いのだろう?」と言う不安の裏返しです。

 このような場合は、「貴方には◯◯と◯◯だけやってもらいたい。ただし他のことは気にしないで良い。」とシンプルに相手の能力に応じた責任を与えます。

 責任をシンプルに提示することは、「自分の領域(人に入られにくいゾーン)が出来る」という安心感を相手に与えるでしょう。

 ただし一人相撲とならないために、助けを必要としている時は、こちらで察知し惜しみない援助を与えましょう。

 やがて彼らの出来ることは増えていき、成長が見られるようになります。

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