給与支払いには、意外と多くの方が知らない様々な制限が存在します。例えば、給与支払いを銀行振込で行うことは、原則的にNGであることを皆さんはご存じですか?給与支払いは、労働者の生活の糧の基となる最も重要な部分であるため、原則と例外措置を踏まえた適正な手続きを知る必要があります。
給与支払日は従業員と経営者両方にとっての一大イベント
本日は、月末の25日です。給与支払を楽しみに待っていらっしゃる従業員さんも多いことでしょう。
経営者の皆さんにとってみれば、給与支払いを適正に行うことは、従業員のモチベーションを維持する重要イベントでもあります。
ところが、意外と給与支払いの制度については、法律に定められている原則が知られておらず、例外措置を原則だと考えていらっしゃる経営者の方も多いようです。
そこで本日は、意外と皆が勘違いしている給与支払3つの原則を、ご紹介したいと思います。
意外と勘違いされている給与支払3つの原則
給与の振り込みは例外措置で現金支給が原則!
多くの会社では、従業員の口座へ給与を振込むケースが圧倒的に多いことでしょう。
確かに、事務の簡略化や安全性等からして、口座振込の方が利便性に優れている言えますので、現在では口座振込が一般的です。
しかし、賃金は現金で支払う事が、本来の原則であることをご存じですか?
給与の口座振込は、従業員から同意を得た場合にのみ、従業員が指定した口座に振込ことが認められています。
口座振込で給与を支払う場合は、従業員の同意が必要となり、従業員が振込に同意しない場合は、現金で支払う必要があります。
また、現金が基本なので、小切手や現物給与での支払いは、当然認められていません。
旅行積立金を賃金から勝手に控除することは違法
給与支払いの基本原則には、「全額支払」の原則というものがあります
労働した分の給与は、全額を従業員に支払わなければなりません。
ただし、保険や税務上等の制度の性質から、健康保険等の保険料や所得税、住民税等の税金は、給与から控除することが法律で認められています。
とはいえ、旅行積立金や寮費、購買代金、組合費等は、給与から控除する方が、従業員にとっても利便性が高く、事務作業の軽減になるものについては、給与から控除したほうが、労使共に利便性が良いはずです。
法律で定められている控除以外の控除は、当然に認められるのではなく、従業員代表と書面による取り交わしが必要となります。
また、給与から控除できるのは、あくまで組合費や寮費、旅行積立金等、「事理明白」なものに限られます。
よく経営者の方から相談されることに、従業員が交通事故や機械等の操作ミスで、会社の器物等を破損させてしまい、しかるべき弁償代金を従業員に負担させる場合、弁償代金を給与から控除できるか?というものがあります
このような弁償代金は、事理明白なものに含まれませんから、弁償代金を給与から控除できる旨の書面を取り交わしても、法律違反で無効となります。
アリさんマークの引越社が、昨年この法律に違反したことで、弁償代金の給与控除を否認されたことは、私達の記憶にあたらしいところです。
給料は「絶対」に代理人へ渡してはならない
給与支払いの原則には「労働者への直接支払い」というものがあります。
例えば、従業員に対して金銭債権を持っている者(借金取りや高利貸し、お金を貸している友人や親族)が従業員から委任を受け、代理人と称して給与の受け取りを求めてきた場合があったとします。
ところが、その代理人に給与を支払っても、それは給与を従業員に支払った事にはなりません。従業員が求めてきた場合は、もう一度給与相当額を支払わなければならなくなります。
また、未成年者も独立して給与を請求することができるので、親権者又は後見人に支払うことは、原則として禁止されています。
ただし、従業員が病気等の理由で給与が受領できない場合に、妻子等の「使者」に支払うことは認められています。
給与支払いは従業員の生活を保護するため様々な制限が加えられている
いかがだったでしょうか?
給与支払いについては、意外と当たり前の原則だと思っていたことが、本来は例外措置であり、然るべき手続きを踏まなければならない場合が多いのです。
法律が定める給与支払いの原則は、様々な制限を設けることで、従業員の生活を保護するように出来ています。
労使間で最もトラブルが起こりやすい分野ですから、自社がきちんとした手続きを踏まえて対応しているか、再度確認していただければと思います。