今年は新しい休日「山の日」が8月11日(木)に制定されたことで、お盆とセットで長期休暇を取ろうと考えていらっしゃる社員さんも多いようです。とはいえ社員さんが一斉に有給休暇を取得すると、会社がてんてこ舞いとなる可能性も生じます。会社には労働者が有給休暇を使う権利「時季指定権」を変更する権利があるのでしょうか?
2016年のお盆休みは社員にとって長期休暇を取る絶好のタイミング
8月のお盆が近づいてきました。一般的に8月のお盆時期は8月14日から16日までの3日間です。
2016年だと、8月13日(土)から16日(火)まで、会社をお休みとされる方が多いことでしょう。
更に、今年から新しい休日「山の日」が8月11日(木)に制定されたことで、12日(金)と17日(水)に有給休暇を取って、1週間ほどの休暇を取ろうと考えていらっしゃる社員さんも多いようです。
十分に休んでいただいて、英気を養っていただきたいものですが、皆が皆、同じ時期に長期休暇を取ると、会社が回らないと経営者が感じる場合もあるようで、「休暇を会社都合で社員に調整するよう指示して良いものだろうか?」という相談も入り始めています。
確かに、中小零細企業で、お盆が稼ぎ時となる会社などの場合、社員さんが一斉に休むとてんてこ舞いとなる可能性が生じます。
そこで本日は、果たして会社側が、労働者が有給休暇を使う権利「時季指定権」を変更する権利はあるのか?ということについて、解説してまいります。
有給休暇を会社がズラすには合理的な理由が必要となる
ご存知のように、労働基準法は労働者に対して、有給休暇の取得を当然の権利として認めています。
労働者には、入社後6ヶ月を経過した時点で、一定の要件を満たせば有給休暇が付与され、労働者は好きな時期に有給を消費する「時季指定権」を行使することが可能です。
とはいえ、無条件に有給休暇の取得を認めてしまうと、業務に支障が出てしまう場合があるため、労働基準法では、事業の正常な運営が妨げられるときには、事業主に対して、有給休暇を拒否する権利「時季変更権」を認めています。
ただし、時季変更権が適正であると認められるためには、「合理的な理由」が必要となってきます。
「合理的な理由」は、様々な要件を総合的に勘案したうえで判断されますが、現実的には、有給休暇の時季変更権が認められるためのハードルは、非常に高いものです。
単に、「忙しい」「人手が足りない」といった程度の主観的な理由で、会社が機械的に有給休暇の時季変更権を行使することは出来ない、と考えた方が無難でしょう。
社員が有給を取って休んでも良いように、業務を前もって調整するよう指示するのがベストな策です。
普段から社員の休暇に気配りすることで円滑な調整が可能となる
とはいえ、
- 従業員の半数以上が、一斉に有給休暇を取得しようとしている
- どんなに調整しても代替要員の確保が難しい
となれば、会社が本当に回らない場合も生じます。
このような場合は、客観的かつ合理的に、有給休暇の時季変更権行使が適正とみなし、社員に前もって説明し、お互いのスケジュールを調整するようお願いする必要があるでしょう。
代わりに事業主は、労働者が指定する他の時季に、有給がきちんと消化できるよう配慮しなければなりません。
普段から、社員の福利への気配りを行うことで、社員にも会社へ協力しようとする意志が生まれます。