起業相談で頻繁に質問されるキーワードに「起業がうまくいく年齢はあるのですか?」というものがあります。
40代を過ぎると「自分の年齢では起業するのに遅すぎる」と感じる方もいるようです。
ところが統計では全く逆のデータが出ています。
更に長年の脳科学研究により、40代以降だからこそ、起業するメリットも見えてきました。
40代の起業は遅すぎる?そんなことありません
先日、起業相談を受けている時に、「起業がうまくいく年齢ってあるのですか?」という質問を受けました。
実際に、40代以上で起業される方は、「もう遅すぎるのではないか?」と、自分の年齢を気にする方が多いようです。
ところが、2012年度調査による起業時の年齢をみると
- 30~39才が最も多く39.4%
- これに次ぐのが、40~49才で28.3%
- 50~59才は16.9%
- 29才以下は9.8%
- 60才以上は5.6%
となっており、起業時の平均年齢は41.4才であり、1991年度調査の平均年齢は38.9才だったので、20年間で2.5才上昇していることになります。
このような統計データより、「起業に適した年齢は40才前後」という見方もあるのです。
事実、私のところに起業相談に来られる方は40代の方が最も多く、次いで30代に続きます。
年齢を重ねると共に脳は変化し成長し続ける
年齢を重ねた人からは「最近、人の名前が覚えられなくて…、もう歳だからかな~」という声がよく聞こえてきますし、私自身も感じています。
ところが心理学者のジーン・コーエンは、長年の加齢研究の結果、
- 年長者の脳には、若年者と同等の学習能力が無い
- 年齢とともに創造性は衰えるというような脳に関わる常識は全て間違いである
と言っています。
更に、ジーン・コーエンは次のように述べています。
- 経験や学習に応じて、脳は自ら変化する。
- 新しい神経細胞は生涯にわたって生成され続ける。
- 感情を司る脳回路は、年齢とともに成熟しバランスが良くなる。
- 年長者の脳は、若年者よりも脳の多くの場所を同時に使う。
つまり、刺激や学習によって脳自体が活発に結合を繰り返し、年齢とともに成長し続けていくことが、脳科学の最先端分野で明らかになったということです。
人生の後半生はライフワークで起業する適齢期
ジーン・コーエンは人生の後半生を、4つの発達段階に分けています。
- 第1段階:再評価段階(40代前半~50代後半)
- 第2段階:解放段階(50代後半~70代前半)
- 第3段階:まとめ段階(60代後半~80代)
- 第4段階:アンコール段階(70代後半~人生の最期)
コーエンはこのうち、40代から70代前半に至る第一段階と第二段階について、以下のように説明しています。
第1段階:再評価段階(40代前半~50代後半)
- いつかは「死ぬ」という事実に初めて向き合う。
- 探求心や危機感に駆り立てられて計画を立てたり、行動を起こしたりする。
- この段階で起こる脳の変化が発達性知能を刺激し、これが知恵の基盤となる。
第2段階:解放段階(50代後半~70代前半)
- 「いましかない」という意識を持つことが多くなり、これが新たな「内なる解放感」を呼び起こす。
- 自分の要求に従い、自分の思いや行動について発言していいのだという個人の自由意志から計画を立てたり、行動を起こしたりする。
こうしてみると、再評価段階や解放段階は、知的な能力が発達しており、自分の思いを行動に移すことができる点で、起業の適齢期と言うことができます。
このことから考えると、自分の本当にやりたいことで起業し、それを「ライフワーク」にする上で、40代後半から60代前半は起業の適齢期だと言えます。
年齢を重ねると純粋な動機で起業がしやすい
さて、40代後半からの起業の場合、定年前と定年後では、起業の意識が違います。
定年前の人は、こんなきっかけで起業します。
- 自分の先行きが見えてきた
- 退職後、収入がなくなることへの不安
- 自分のやりたいことと、今の仕事のミスマッチ
- 再就職が難しい
一方、定年後の人たちは、こんなきっかけで起業します。
- 定年後、社会とのつながりが欲しい
- 長年温めてきたアイデアを具現化したい
- 共通の仲間が欲しい、居場所が欲しい
定年後の人は、あまりアクセクせずに、自分のペースで仕事をする、いわゆる「ゆる起業」型が多いようです。
これに対して、定年前の人は、もっと、自分の活かしたい、やりがいのある仕事をしたい、収入もしっかり確保したいという、「やりがいも、収入も」型が多いようです。
しかし、ジーン・コーエンの脳の加齢研究の成果からみると、定年前、定年後にかかわらず人生の後半生こそ、自分の内からの要求に従って、本当に自分のやりたいことを仕事にして起業するのが、最も脳に働きに合っているように思います。
しかし、年齢とともに脳は発達していくにしても、体力の方は衰えていきますので、この点を留意して起業を考えるべきでしょう。