人件費の高騰により、経営者にとって社会保険料の負担は大きな問題となっていますが、これに対して、マル秘テクニックなどと称する本やセミナーも現れています。実際に「社会保険料削減のマル秘テクニック」は、経営者の臨む社会保険料の節約を実現するものなのでしょうか?
社会保険料の支払いは経営者にとって負担大
昨今の人件費高騰に伴い、付随する社会保険料の負担は、経営の重要課題となっています。
なにせ、従業員を20万円で雇用した場合、社会保険料の会社負担は約3万円弱となり、従業員を5人雇用すれば、毎月15万円の保険料負担となります。
一年で換算すると、会社の保険料負担は5人の社員を抱えた場合、なんと180万円にもなります。
なんとか社会保険料を削減したい!と考える経営者の方のお気持ちも、本当に切実なものです。
そのため世間では「社会保険料削減のマル秘テクニック」といったセミナーが経営者向けに開催されたり、教材も数多く販売されるようになりました。
しかし、私は以前から、マル秘テクニックと呼ばれるものについて、疑問を持っています。
本日は、巷に出回っている、社会保険料の削減のテクニックやノウハウが本当に正しいものか、検証してみたいと思います。
社会保険料削減のマル秘テクニックはあるか?
たとえば、社会保険(健康保険と厚生年金保険の総称です。)の加入基準は、労働日数と労働時間で判断され、1週間の労働時間が30時間を加入の目安とされています。
従って、社会保険料削減のテクニックとして、「社会保険に加入する必要が無い、パートタイマーやアルバイトを積極的に活用しましょう。」といった文章が必ずノウハウ本には掲載されます。
確かにこれは事実なのですが、でも「これってテクニックなの?」と思いませんか?
セミナー等でかしこまって言われると、「なるほど」って思ってしまいますが、社会保険に加入する必要の無い人を多く雇えば社会保険料が削減できるなんて、経営者だったら誰でもわかりますよね。
そして、私自身は、この「社会保険料の削減ありき」な考え方自体に、強い疑問を持っています。
確かに、社会保険に加入させる必要がないパートタイマーやアルバイトを多く雇用すれば、社会保険料が削減されるのは事実です。
しかし、現在のような人手不足の状況下で、社会保険に加入する必要の無い従業員を主体とした経営を行うとしたら、人材確保にもの凄いエネルギーを使う必要あります。
実際に、アルバイト募集の情報媒体掲載料は高騰し続けていますし、アルバイト主体の労働力をメインとする会社の場合は、常に掲載料のキャッシュアウトを続ける必要が生じます。
仮にそれだけの人材を確保したとしても、アルバイト、特に学生アルバイトの方が働かれる場合は、突然の欠勤もよくある話です。
アルバイトさんに欠勤されれば、他の社員にしわ寄せが行ってしまい、割増賃金を支払う結果となる場合も生じますし、最悪な話が経営者自体が常に現場でフル稼働しなければならなくなります。
つまり、社会保険料削減ありきで、パートタイマーやアルバイトを活用してしまうと、業務に支障が出てしまい、本末転倒となる可能性が高まるのです。
テクニックはあくまでも手段であり目的でない
このように「テクニック」として使えるとうたわれていても、ビジネスの仕組みができあがっていなければ、かえって会社に負荷をかけてしまうものは沢山あります。
わかりやすくして、ノウハウ本を売るために「これでOK!」などと言い切っているものが沢山ありますが、個別の事情に照らし合わせなければ、テクニックはただの知識にしかなりません。
「ビジネスモデルを作った結果、メインの労働者として最適なのはパートやアルバイト(または社員)である」というように、まずはビジネスモデルがどうしたら成功するかを踏まえたうえで、人員を採用しなければなりません。
ビジネスモデルの付加価値が高いものであれば、それに伴う業務の付加価値もあがるため、良い人材を採用できれば社会保険料も十分ペイできる場合があるのです。(逆もあり得る)
もちろん、教材等を購入するしないは、個人のお考えです。語られるノウハウに対して、どう思われるかも個人の自由ですので、あくまで今後の参考と思っていただければと思います。