新規事業を考えつき、仲間や社員と共に構想を練る時間ほど、楽しい時間はありませんし、構想が広がって行くほどに、今なら何でも出来そうだという気持ちになります。こんな時こそ、冷静な経営者は識者に相談を持ちかけたいと思うはずですが、どのようなことを聞けば実りあるヒアリングが行えるのでしょうか?
新規事業は始める前の段階が楽しくて面白い
新規事業を考えつき、仲間や社員と共に構想を練る時間ほど、楽しい時間はありませんし、構想が広がって行くほどに、今なら何でも出来そうだという気持ちになります。
こんな時ほど経営者は冷静に、自分が参入しようとしている業界の実情や構想中のビジネスモデルについて、業界の識者やトッププレイヤーに、ヒアリングを兼ねた相談をもちかけたいと考えることでしょう。
もしも相手が依頼に応じ、ヒアリングと相談するチャンスが到来したなら、余すこと無く様々な知見を得たいと考えるはずです。
客観的に新規事業の是非について、有意義なヒアリングの時間を作るためには、予め実り多いヒアリング項目を用意しておく必要があります。
そこで本日は、新規事業を検討する際に識者へヒアリングしたい5つのポイントをご紹介したいと思います。
新規事業算入検討時にヒアリングしたい5項目
1)業界の実情と自らの目指す市場の規模は?
既に自分で調べているはずですが、自分が参入しようと思っている業界の実情と規模はどうなっているのか?ヒアリングする必要があります。
参入しようとしている市場は、縮小しているのか?拡大しているのか?大きいのか?小さいのか?(縮小市場への算入はよほどの技術アイデア無くして難しい)
プレイヤーは増えているのか?減っているのか?(競争が激しいのか?それとも競争が少ないのか?少ないなら少ない裏の理由はないか?)
業界内で成功している人はどんな人か?失敗したのはどのような人か?(成功している人のパターンから隙間を考え、失敗した人の真似は最初からする必要がない)
これらのことは、飛んで火に入る夏の虫とならぬよう、最初にヒアリングしておきたいところです。
2)構想中のサービスは顧客が今すぐ欲しいものか?
自分が考えているサービスは、非常に素晴らしい物です。自分が天才かと思えるくらいです。
確かにステーブ・ジョブズは「多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ。」と言いました。
しかし、市場にいる人達が現時点でそれを必要としていなければ、投資回収期間は長くなるため、一定のキャッシュと時間の必要性をこの時点で想定しなければなりません。
更には自分たちが外側から見て、「このようなサービスが必要なのでは?」というものが、実は市場で既に存在している場合、競争に備え自らの独自スタンスを更に練る必要が生じます。
これらのことを考えれば、自分たちの考えているサービスは、ターゲットが今本当に欲しがっているものかをヒアリングすることは賢明です。
3)顧客から貰うことを想定したお金の額は適切か?
新規事業の構想を練る際には、ターゲットとする人1人当たりから「幾らづつお金を貰えるか?」考えるはずです。
ズバリ識者にヒアリングするなら、自分たちが考えたプランにおける、1人当たりから貰う金額は適正か?質問することは賢明です。
マーケティングの実行は、顧客に感動を与えるものでなければなりません。
更に、私達が考えている以上に、便益を受け取る人とお金を支払う人は、必ずしも同一ではないことが多いのも現実です。
例えば、小学生をメインターゲットにインターネットで1つ100万円のモノを売ろうとしても、商品が売れる確率は僅かです。
ただし、小学生の孫を持つ祖父母をターゲットにするなら、100万円の商品は売れる確率が高まります。
前者と後者で販促アプローチの手段として、インターネットを使うのか?新聞を使うのか?口コミを使うのか?
メディアを展開するならば、小学生向けのメディアか?高齢者層向けのメディアか?などの方法論は大きく変化します。
4)自社の既存事業とどう親和性を生み出すべきか?
全く新しいものを、何の脈略もなくゼロから生み出すことは、非常に困難を極めることです。
お金があれば、能力有る人を引っ張ってきた上で、力技で全く関係ない分野の事業へ新規参入することも可能かもしれません。
しかし、お金を使えば必ず成功するというわけでもなく、中小企業でそのような体力を持っているケースは少ないはずです。
既存事業と親和性がある、人的資源を活かせる、横展開できる技術を持っている、といった自社が持つ何かしらの強みと、新規事業がシナジーを持つか?客観的にヒアリングすることは賢明です。
事業を成功させるために、アイデアの力が1必要ならば、それを成し遂げる実行力は100もしくはそれ以上必要だからです。
5)他者の視線から見た構想に対する客観的評価と意見
全てをヒアリングしたあと、率直な自分のアイデアに対する客観的な評価を貰いましょう。
もしかするとその人は、「貴方の考えていることは素晴らしい。しかし現実的ではない。」というかもしれませんが、この言葉は決して落胆のために用意されたものではありません。
代わりに、優れた業界人・トッププレイヤーは必ず、「こういうサービスが欲しい」というアイデアを持っているはずです。
今、世の中で成功している事業の多くが、これら既存業界の人々が抱えている課題から、生まれています。
1ヶ月後、貴方が始めたサービスは、最初に考えたものではなく、彼からヒアリングしたニーズを元に考えなおして、出来上がったサービスかもしれません。
多くの事業はヒアリングなく進みやがて終わる
新規事業を始めようとすることは、それ自体に大きな価値があります。
既存の仕組みを少しだけ良くするものであろうと、業界を変える革命的なサービスであろうと、新たな一歩を踏み出すことを、殆どの会社が行わないからです。
夢物語で新規事業を終わらせてはなりません。構想を現実に変える必要があります。
世界で初めて、大西洋「単独」無着陸飛行に成功したチャールズ・リンドバーグも「重要なのは始めることだ。計画を立て、一歩ずつ前に進むことだ。たとえそれがどれほど小さな、あるいは大きな一歩に見えても。」と言うように、新しいことを始めるのは、それだけで価値のある行動です。
とはいえ新規事業の殆どは、目隠しされたような状態のまま手探りで始めた後は、何が悪いのかわからぬまま十中八九が失敗して終わります。
もし自分が参入しようとする業界に対して、見識を持った人と話す機会があるならば、まずはそのチャンスを逃さないようにしたいものです。
そして、ヒアリング時には、上記にあげた5つの項目について、質問することをオススメします。
きっと競合より半歩進んだ、良いスタートが切れるはずです。