有給の買取りは、法律では原則的に認められていませんが、退職時に限って例外的に買取りが認められます。なぜかといえば会社にとっては、そのほうがメリットが大きくリスクを防ぐことができるからです。有給を買い取ったほうが良い3つの理由を、労務のプロに解説していただきます。買い取り金額がもったいない?この記事を読んだ後は、意外と感想が変わるかもしれません。
例外で認められる退職時の有給の買い取り
有給休暇の買取りは、法律では原則的に認められていませんが、退職時に限って例外的に買取りが認められます。(必ずしも買取りに応じる必要はなく、買取をしても差し支えないという考え方)
「退職時の有給休暇は、買取り応じた方が良いのか?」という質問を、よく事業主の方から受けますが、私個人としては、退職時の有給休暇は、買取に応じる方をお勧めしています。
なぜなら、退職時の有給休暇は、買取りに応じた方がメリットが大きいからです。
本日は、この理由についてご説明したいと思います。
退職時に有給を買い取るべき3つの理由
有給休暇を買い取ることを私がお勧めする理由は、3つあります。
1)社会保険料に代表されるコストが大きい
例えば、退職時に有給休暇が40日残っている場合で、仮に有給休暇を消化して社員が退職した場合には、40日間一切労働をしないで、40日分の賃金を支払うこととなります。
退職時の有給休暇を買取りしても、有給休暇を消化しても、会社の賃金に対する負担は同じとなります。
しかも、有給休暇を消化する場合には、社会保険料の負担が発生してきます。
社会保険はあくまで、退職時まで保険関係が成立しているため、有給休暇消化中であっても、会社は、当然、社会保険料を負担しなければなりません。
退職日と有給休暇の残日数によっては、2か月分の社会保険料の負担が発する場合すらあるのです。
2)有給中にトラブルがあれば会社にも責が生じる
有給休暇消化中、社員の身に何らかのトラブルが起こる可能性もあります。
はたまた、羽根を伸ばすために訪れた旅先でトラブルに巻き込まれたり、トラブルを社員が起こす場合があります。
辞めることが決まっていても、有給休暇取得中の場合、当然、雇用関係は継続しているわけですから、労働者の権利も残っていることとなります。
従って、何らかの不測の事態が起こって、労働トラブルが発生する可能性も考えられます。
3)欠員補充後に退職の取り消しは十分あり得る
例えば、既に補充要員を確保した後に、退職の取消しを求めてくる事も可能性としては否定できません。
退職時の有給休暇を買取りした場合には、その時点で雇用関係が消滅するわけですから、そのようなトラブルが起こる余地はなくなります。
同じ賃金支払うならリスク少なくメリット追求
確かに、退職していく従業員に対して有給休暇の買取り分を支払うのは、何となく勿体無い気がします。
しかし、有給休暇は労働者の法律で認められた権利であるため、退職時の買取りに応じなかった場合には、労働者は有給休暇を当然の権利として消化(取得)できるわけです。
同じ賃金額の賃金の支払いが必要となるのであれば、客観的にみて少しでも負担が少なく、またリスクも少ない方が、会社にとってはメリットが大きいと言えます。
最後に余談ですが、元従業員が「退職後だけど残った有給休暇を買い取れ!」というケースがあります。
元々、退職時であっても、有給休暇の買取に応じる必要はないのは、一番最初に書いた通りです。従って、退職後に元従業員から有給休暇の買取り要請があっても、応じる必要はありません。
また、有給休暇は、今後に対して労働の義務が課せられた日に対して取得できるわけですから、退職後に労働者が労働の義務を課せられる日というのはありえないわけで、当然ですが、退職後に有給休暇を取得することはできません。
退職時の有給休暇の取り扱いに関しては、これらの問題に直面するケースが多々ありますので、是非今後のご参考としていただければと思います。