経営者の多くは、人件費をなるべく削減するため、従業員数を最低限に抑えようとするのが常識と考えています。しかし、そんなのかんけーねーと、人件費を通常の飲食店と比較して3倍かけているのに、業績が伸びている飲食店があります。大阪の「神社」「祭り」をコンセプトとする創作串料理店「鉄板神社」です。人件費が増加してもどうして利益は増えるのか?理由を探りました。
人件費のセオリーは人数を最低限に抑えること
従業員を増やせば増やすほど人件費は上昇し、利益率の低下をもたらすというのは、ごく常識的な考え方だと思います。
ですから、経営者の多くは、人件費をなるべく削減するため、従業員数を最低限に抑えようとするものです。
しかし、あえて逆張りの戦略を取り、従業員数を増やすことで収益アップに成功している企業もあります。
今回はそんな飲食店をご紹介したいと思います。
人件費を増やして全体利益を最大化する飲食店
「神社」「祭り」をコンセプトとする創作串料理店「鉄板神社」を、皆さんはご存知でしょうか?
例えば、鉄板神社の大阪・難波店は、36坪の店舗面積、客席数50席、月商1800万円。同店の食材原価率は30%、一方で人件費率は36%です。
飲食店の売上に対する人件費率は、概ね25%-30%が適正とされていますので、難波店の人件費率はかなり高めになっています。
というのも、1日当たりのスタッフは夜で15人もいるのです。
15人を配置するお店の客席数は、通常は150席程度ですから、難波店は3倍の人員で対応していることになりますね。
これだけスタッフが多いと、料理の提供スピードも速くなります。そして、料理を早く出せば客席の回転率も高まる。
実際、難波店では昼1回転、夜3回転、合計4回転する効率の良さとなっています。
飲食店のような業態は簡単に客席数を増やすことはできませんので、売上を伸ばそうと思ったら、顧客単価を上げるか、回転率を高めるしかありません。
鉄板神社では、スタッフを増やすことで回転率向上に成功、売上アップを果たしているわけですね。
人件費率が高いため、利益率は低めとなりますが、売上が高くなれば、絶対額としての利益金額も増えるものです。
しかも、従業員数が多いとそれだけ個々のお客さんにも目が届きやすくなり、サービスの向上につながります。
すると顧客満足度もアップ。固定客増加をもたらすので、安定収益も期待できるというものです。
サービスの質は結局関わる「人」で決まるもの
人手不足の昨今、従業員数を多めに確保するのはとても大変になっています。
優れた仕組みや制度も、確かに組織を拡大する上で重要な要素ですし、現代はとかく「テクノロジーで人手を減らして、人件費を最小にすることこそ優れた企業の証」という風潮が主流です。
しかし、ビジネスモデルによっては、人手をかけてこそ、サービスの質が最大化するケースがあることも忘れてはなりません。
従業員を増やして売上を伸ばす鉄板神社は、発想を柔軟にしてくれる良い事例だと言えるでしょう。
Photo credit: TAKUMA KIMURA via VisualHunt / CC BY-SA