外食チェーン店の多くが軒並み業績を落としていく中で、気を吐いているのがラーメンチェーン店「日高屋」を運営するハイディ日高である。35期連続黒字かつ10年連続最高益を達成する裏側には、自社人材に対する真摯な姿勢があった。人材の流出を防ぐことにより、無駄な採用経費をかけない日高屋はまさに節約経営のお手本と言えよう。
デフレの寵児「日高屋」の躍進は続く
外食チェーンの多くは、消費税の増税、人件費や材料費の高騰といったコスト上昇、人材の確保難により、売り上げが伸びずに苦しんでいる。ワタミしかり、マクドナルドしかり、すき家や三幸フーズ(チカラめし)の業績も想定以上の落ち込みを見せている。
デフレの寵児達が墜落している中で気を吐くのが、ラーメンチェーン店「日高屋」を運営するハイデイ日高である。
直近2014年3~8月期の売上高は全店ベースで8.1%の増加となり、客数も全店ベースで6.8%増と大きく伸ばした。しかも驚くべきことに、ハイディ日高は35期連続増収、10期連続で過去最高益を続けているのだ。
ハイディ日高の人材に対する真摯な姿勢
日高屋がデフレ時に活躍した他社と違い、今も好業績を維持している理由の一つは、人材教育、人材に向き合う姿勢が、圧倒的に他社と一線を画していることにある。以下ご紹介する。
1)仕組み化された料理の質を担保するオペレーション
中華料理といえば職人の腕に料理の質が左右されやすい。そのため日高屋では、誰もが同じ料理を同じ質で作ることが可能な仕組みを導入している。誰もが調理できるようにDVD教育に力を入れており、教育の仕組み、人員配置まで、オペレーション全てが独自のシステムで成り立っている。※1
2)社員育成に投資し落ちこぼれを作らない仕組み
キャリアアップに必要な基準を、明確に社員へ周知する「SMDP(ストア・マネジャー・デベロップメント・プログラム)」という、キャリアアップに必要な試験が行われる。入社7カ月で新入社員のうち、2名が既に店舗の責任者に抜擢され、そして25名は等級が上がり給与アップをしているのだからやる気があがらないわけがない。更に「成長シート」を使用し常に個々人とコミュニケーションを取るため、落ちこぼれを出さず、常に全員が成長し続けられる仕組みも取り入れられている。※1
3)福利厚生の一環で焼き鳥屋を開く
「焼鳥日高」という焼き鳥チェーン店を新業態として作りはじめ、2014年12月現在店舗数は18店舗まで増えた。この業態をはじめた理由を日高屋の神田正社長は、福利厚生の一環と言い切る。※2中華料理店の仕事は体力を使い、高齢になった従業員では仕事がきつくなるので、焼き鳥屋を作ってシニア社員も、イキイキと働ける場を作ろうと言う考え方だ。
ラーメンチェーン戦争激化 次なる戦略に期待
飲食サービス・宿泊業の離職率が30.4%あるのに対して、ハイデイ日高の離職率はなんと11.1%しかない。※2
せっかく育成した人材が離職することは、企業にとって不効率である。日高屋の戦略は人材面における無駄な採用費用を削った、節約経営のお手本と言えよう。
ただし日高屋が今の地位を安寧の元確保し続けるとは言い切れない。なぜなら競合である「餃子の王将」や「幸楽苑」が、日高屋がドミナント戦略をとってきた首都圏の駅前へ出店攻勢を強めているからだ。
もっとも日高屋は自社のライバルはラーメン店ではなく、マクドナルドであり、吉野家であると位置づけている。
定着した人員と効率化された仕組みを利用し、日高屋がどのような攻めの一手に出るのか、これからが楽しみだ。
※1 マイナビ2015 ハイディ日高採用ページ
http://job.mynavi.jp/15/pc/search/corp62526/opt230692/premium.html
※2 テレビ東京「カンブリア宮殿」9月26日放送より