自分の不平不満が全て会社のせいだと考えて、周りにも言いふらすような「ブラック社員」を抱えて、頭を悩ませる経営者が増えています。ブラック社員を生まないためには、「労働生産性とモチベーションの高い優秀な人材が集まる組織作りをする」ことが重要になりますが、中でも子育て主婦層に眠る優秀な人材の確保に成功している企業ではブラック社員が生まれにくいようです。人事のプロが解説してくれます。
ブラック企業ならぬブラック社員が増加する
ブラック企業と言う言葉が世の中にすっかり定着してしばらく経ちますが、最近はブラック社員と言う言葉もチラホラ聞くようになりました。
ブラック社員とは、自分の勤務する会社をブラック企業と判定し、自分の不平不満が全て会社のせいだと考えて、周りにも言いふらすような社員のことです。
なぜブラック社員が増えているのでしょうか?
もちろん、ブラック企業と言われる企業の中には本物のブラック企業も見受けられますが、そこまでひどい会社でもないのにブラック企業と呼ばれてしまっている会社が多いような気がします。
実際に私がお付き合いしてきた範囲だと、経営者の方は往々にして「社員にはしっかりと働いてもらったうえで還元も行いたいし、休みも取ってもらいたい。早く仕事を切り上げて早く帰ってもらいたい」と考える方のほうがが多いと感じております。
しかしこれらの思いは、「この会社でないどこかもっと良い会社」を目指す人に伝わらず、ブラック社員化してしまいます。
ブラック社員をなるべく会社内に生まないために、経営者はどのような対策を立てれば良いのでしょうか?
労働生産性の高い人材の集まる組織作りが必要
ブラック社員を生まないためには、「労働生産性とモチベーションの高い優秀な人材が集まる組織作りをする」ことが重要になってきます。
「労働生産性」とは、投入した労働量に対してどれ位の生産量が得られたかを表す指標です。
日本の国内企業における労働生産性の現状は、2013年のデータによると、OECD(経済協力開発機構)加盟34か国の中で20位と下位にあります。首位のノルウェーと比べると半分以下の生産性しか生み出せていません。
ちなみに、OECD主要7か国中では最下位と言う結果であり、日本企業に務める社員がいかに効率よく働けていないかが分かります。
では、どの様にこの現状を打破することができるでしょうか?
勿論、社内のムード作りや、ノー残業デーの設定、強制的に電気をシャットダウンするといった方法もあります。しかし根本的には、生産性が高い優秀な社員が集まるように採用を充実させることが一番大事になってきます。
とはいえ最近は、人材不足の上に就職市場は完全な売り手市場になっています。その中で、人材を集める会社になるには、様々な工夫が必要になってきます。
端的に言うと、「いい会社アピール」と「差別化戦略」を積極的に行い、売り手市場を買い手市場に変化させることが肝要です。
「いい会社アピール」と言っても、わざとらしいものや大仰に騒ぎ立てなければならないなど、難しく考える必要はありません。
今までやってきた福利厚生、例えば、「社員に万が一のことがあった時のために定年までの収入補償保険を掛けている」などの事実を今までよりもしっかりホームページ上でアピールするだけで、会社の見え方がかなり変わります。
実際の実務を通じて得た「お客様からのお喜びの声」を積極的に集めて採用ページへ掲載してもいいですし、「社員インタビュー」なんかも積極的に載せてみても良いですね。
ただしこれらはありきたりなところで、皆さんも実行されているはずです。そこで中小企業で特に優秀な人材を集めることに成功している企業の特徴を提示したいと思います。
子育て主婦層には生産性の高い人材が多く眠る
生産性とモチベーションが高く優秀な人材を囲い込むことに成功している企業、それは、子育中の女性や男性でも「積極的に働ける環境が整っている」ことを提示している企業です。
実際、子供を預かる態勢をしっかり整えた企業がそれをしっかりとアピールしたことで、一般的な周囲のライバル企業よりはるかに安い時給でも、子育て主婦の応募が殺到したという事例もあります。
しかも応募が殺到しただけではなく、子育て主婦の経歴を見てみると、驚くほど高いキャリアを持っている方が多かったようです。
さて、これらの子育て主婦は採用された後、予想以上に真面目かつ高い労働生産性を発揮し働いてくれます。
なぜでしょうか?それは彼女たちが仕事に飢えているからです。
他社の面接に行っても「子供がいるから」という理由だけで落とされてしまう方たちは、仕事に飢え、社会との接点に飢えています。
そんな方たちの仕事に対するモチベーションは、給料を貰いに来るだけのサラリーマンとは全く違い、「仕事をやらされてる・・・」「仕事をしてやっている!!」という気持ちを持つケースが極めて低い傾向にあります。
もちろん「子供が熱を出して」等々のアクシデントは起こります。しかし、そんなアクシデントも、モチベーションが低く労働生産性の低い社員をダラダラ雇うよりは、リスクとしては遙かに小さいものです。
「学生アルバイトが自分勝手な都合でいきなり休みを取る」割合より、「主婦が子育てで休む」割合のほうが遥かに少ないと言う人事担当者もいらっしゃいます。
彼女たちは早く帰りたい、早く帰る必要がある、とはいえ会社で確固たる居場所を作る必要がある、と考える傾向が強いため、効率良く労働生産性を高めて働く存在になりやすいのです。
採用方法次第では国から助成金が出るケースも
どんなに就職市場が売り手市場でも、仕事に飢えてる優秀な人材は必ずいらっしゃいます。
その代表格が、先ほど述べたような子育て主婦の皆さんです。
何も最初から正社員に雇用せず、お互いのマッチングを計った上で社風が合うようなら雇い入れるという対策を打てば、「就職困難者」を雇い入れたとして国から助成金が貰える場合もあります。
勝手なイメージで生産性の高い人材に門戸を閉ざして、ブラック社員だらけの会社を作って苦しめられることのないよう、柔軟な考えで採用に取組みましょう。