国際社会化が進む現在、もはやどんな企業にも海外でビジネスを展開するチャンスがある。まずは海外のビジネスパートナーと良い関係を築くために習得しておきたいのが「宗教リテラシー」である。特に多民族で構成される国家へ行く場合は、それぞれの宗教とのつきあいかた、特に食事の面でリテラシーを事前に得て、関係を円滑にしたい。
海外の挨拶「貴方の信じる宗教は?」
国際社会化が進む現在、もはやどんな企業にも海外でビジネスを展開するチャンスが目の前に広がっている。
いざ海外へ行き、現地のビジネスパートナーと深く話をする機会を持つと、彼らは貴方にこういうだろう。
What’s your religion?(あなたの信じる宗教は何ですか?)
日本のビジネスにおいて宗教・政治・プロ野球の話題は避けたほうがよい話題と言われてきた。そのため日本のビジネスマンにとって、宗教の話題をいきなり振られると多少驚くかもしれない。
日本は単一民族がマジョリティを占める世界でも稀有な民族構成をした島国である。それに対して、海外特に大陸の諸国家の多くは多民族で国家を構成するため、様々な宗教を信仰する人がいる。
ビジネスパートナー同士で宗教に干渉することはまずないが、敬意を払い、お互い避けられるトラブルを未然に防ぐために、お互いの宗教を知ろうとするのだ。
会話の中で当然貴方もパートナーの宗教はなにか聞き返すと思うが、そのとき相手が信じている宗教から相手とどう付き合えばよいか、即座に判断することができれば、効率よく共に業務へ挑むことも可能になる。
この判断材料として必要になるのが「宗教リテラシー(知識)」である。
宗教リテラシーが一番必要なのは食事
先述のとおり、宗教とビジネスは別のもの。相手の宗教について深く知る必要はない。
しかし海外のビジネスパートナーが特定の宗教を信じている場合、必ず知っておいた方がよい「宗教リテラシー」がある。
それは「食事の問題」だ。
なぜなら宗教ごとに食に対する規制や戒律は異なる。大多数が無宗教の日本人にとって食の戒律は大した問題ではない。
しかし特定の食に関する戒律を有する宗教を信じている人にとっては、戒律を守ることが、信じる神との関係において自尊心を育み、生きる意味にまで通ずる重要な要素になる。
以下、ご存知かも知れないが宗教ごとの戒律で信者が食べることを禁じられた食物である。
- 1)ヒンドゥー教 牛を聖なるものと崇めるため、牛肉を食べない
- 2)イスラム教 豚肉・アルコールは摂取することが禁じられている。(ハラール)ラマダーンと呼ばれる断食期間(2015年は6月28日から7月28日)は日の出から日没まで食事を摂らない。
- 3)ユダヤ教 豚・うさぎが禁じられている。鱗のない海の生き物(うなぎ、タコ、イカ)も摂取しない。肉と乳製品の同時摂取も不可。
- 4)モルモン教 カフェイン(コーヒーや茶類)の摂取が禁じられている。
宗教の中身うんぬんを知らなくとも、相手の宗教が戒律で禁じる食を会食の席で避けることで、相手は貴方に敬意を払われていると感じてくれる。
やがてあなたに感情を許しやすくなり、ひいては円滑なビジネスを行う素地ができる。
日本の感覚 意外と興味深く捉えられる
日本の宗教を信じる総人口は2億人を超えているという統計がある。※1
つまり日本人は一人あたり2つの宗教を持っているという意味にも取れるし、特定の宗教に帰依しているわけではないという解釈も取れる。
実は海外でも無宗教や不可知論者は増えている。特に西欧諸国にその風潮が強い。
また日本に古来からある「八百万の神」という概念、万物自然を愛し敬う姿勢が、日本人固有の宗教概念・スピリチュアル性として海外でリスペクトされはじめていることは朗報だ。
日本人も堂々と相手に日本固有の宗教概念を伝えることで、相互理解が深まり、円滑なビジネス推進につながるだろう。
※1文部科学省 平成19年「宗教統計調査」
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2009/07/10/1245820_005.pdf