テレビ東京増収増益 弱小テレビ局汚名返上

企業分析

 テレビ局5社の2014年9月期業績発表が終了した。5社中2社が増益となったが、その中でも著しい躍進を遂げているのがテレビ東京である。長らく続いたテレビの時代に「5強1弱」の1弱と呼ばれた弱小テレビ局が予算の少なさをバネに、ブレない姿勢とニッチな市場を狙う戦略で独自の差別化に成功したことは多くの経営者にヒントを与える。

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テレビ東京 民放唯一の増収増益達成

 11月に入り民法テレビ局各社の業績が出揃った。フジ、朝日、TBSなど3社は減益、日本テレビとテレビ東京は増収と結果が分かれている。
  
 中でも特筆すべきは唯一の増収増益を果たしたテレビ東京である。2014年第二四半期の業績は売上高前年比4.4%増の581億円、経常利益に至っては昨年から91.5%増の25億円強を叩きだしたのである。
 
 1980〜90年台に隆盛を極めた民放テレビ局の中でテレビ東京は日陰の存在であり、5社にNHKを加えたテレビ業界の勢力図は「5強1弱」、テレビ東京は屈辱的な「1弱呼ばわり」されていた。
 
 今回の増収増益について決算説明資料を見ると、テレビ東京がどれだけ元気か垣間(かいま)見える。
 
 他のテレビ局が広告費の減収に悩んでいるのに対して、テレビ東京は広告費が想定を上回るほど好調をキープしているからだ。
 
 また、アニメ関連グッズ販売事業やインターネット事業も好調となっており、時代の変化に即応している面も評価できる。
 
 テレビ東京がなぜこれほどの好調をキープしているのか、理由を紐解いてみた。

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テレビ東京が成功している3つの理由

予算が少ない お金をかけないオリジナル性

 テレビ東京の歴史はNHKや他の在京テレビ局に比べて20年ほど新しく、「科学テレビ協力会」という財界による支援で、広告のない民間の教育テレビという立場ではじまったため、スポンサーが集まりにくかった。そのため低予算で番組を作らなければならず、今でも当時からの潮流が受け継がれている。日本へ訪れる外国人素人密着取材の「YOUは何しにニッポンへ」や蛭子能収と太川陽介といった脇役芸能人をメインに行き当たりばったりの旅を繰り広げる「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」など、素人チック・ゲリラ的で内容が面白い番組を低予算で作り、視聴者の評価を得ている。顔となっているアニメ放映も予算の少なさから力を入れはじめたコンテンツである。

ターゲットを明確化 万人受けしない番組作り

 他の在京テレビ局が時間帯によって万遍なくテレビを見る層へアプローチする番組編成を行うのに対して、テレビ東京はある特定の熱烈な層に対してインパクトを与える番組編成を行っている。例えば「ワールドビジネスサテライト 」は同じ時間帯に放送されるニュースと比較して、経済動向に特化したニュース編成が行われており、意識の高いビジネスマンに対象を狭めた番組となっている。そのため、シェアの高い広告主の出稿増や特定層にアプローチしたい新規広告主の獲得に成功している。

徹底した姿勢の差別化 視聴者も受け入れる

 賛否両論はあるが、重大事件・事故が起こると民放各社およびNHKは番組編成を変更して特別報道番組を放送するのに対して、テレビ東京は番組編成を変更せず、速報をテロップのみで流す。その行為ゆえ「テレビ東京伝説」という言葉も生まれている。1990年代には一時的に報道特番を他社のように行ったが、赤字に転落したことから即時撤退した。できないことは他の民放各社にゆだねる姿勢で、自らは特化した番組作りに徹している。自社放映の「ケロロ軍曹」でもテレビ東京をモデルにしたテレビ局を風刺したセリフで「テレビ東京が特番を放送するのは地球滅亡の時」という意味のセリフまで登場させ、自らをネタにするほどだ。

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予算に限り 創意工夫のエッジを効かせよ

 テレビ東京のとってきた戦略は経済学でいう「ランチェスター戦略」※を地で行っていると言えよう。
 
 他の大資本TV局のように万人受けする番組を予算をかけて作るよりも、局地戦に持ち込んで低予算でディープな番組を数多く作り、熱狂的なファンを取り込む姿勢が結果につながっている。
 
 失敗した時にも手を引くダメージが少ないため、よりいっそう多くのチャレンジを行うことも可能だ。
 
 個人の個性が多様化する時代に、資源が少ない中小企業にとっての生き延びるヒントがテレビ東京の姿勢から得られるかもしれない。
 
※ランチェスター戦略
 弱者として戦うべき市場を局地戦に持ち込み、その市場において大きな相手との競争に持ち込み、差別化を図り勝利を目論む戦略のこと。

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