妊娠したことを理由に女性職員を解雇し、国の是正勧告に従わなかったとして、厚生労働省はマタハラで茨城県牛久市のクリニックの実名を公表しました。クリニックは約9割を女性職員が占めており、資格保持者が多く、離職率も高い場所であり、もともと職員の権利意識が強くトラブルが多い職種のひとつです。今回のように実名が公表されると経営が圧迫される可能性があるため注意が必要です。
マタハラで茨城県の病院が初の実名公表措置へ
妊娠したことを理由に女性職員を解雇し、国の是正勧告に従わなかったとして、厚生労働省はマタハラで茨城県牛久市のクリニックの実名を公表しました。
男女雇用機会均等法に基づきマタニティーハラスメント(マタハラ)をした事業主の実名を公表するのは1999年の制度開始以来、初めてになります。
厚労省によると、是正勧告に従わなかったのは、牛久市のクリニック「牛久皮膚科医院」(安良岡勇院長)。安良岡院長は2月、正職員の20代の看護助手が妊娠したと報告したところ、約2週間後に突然、「明日から来なくていい。妊婦はいらない」と退職を迫ったという。看護助手は「妊娠したばかりで、まだ働きたい」と訴えたが、院長が認めなかったため、茨城労働局に相談。産経新聞2015年9月4日付け記事
厚生労働省や労働局は計4度にわたる指導や勧告を行っており、この段階で是正されていれば公にされることはありませんでした。
クリニックでは雇用巡るトラブル起きやすい
院長は聴取に対して「均等法は知っている。だが、守るつもりはない」と回答したといいます。
何が院長をここまでさせたのでしょうか。並々ならぬ決意さえ感じました。
クリニックは約9割を女性職員が占めており、資格保持者が多く、離職率も高い職場であり、もともと職員の権利意識が強くトラブルが多い職種のひとつです。
私自身もクリニック向けの解雇トラブルセミナーを行ったことがありますが、参加者が多く、非常に熱心に聞いていただいた印象があります。
質問も具体的であったため“現在進行中の事案なんだろうなぁ”と思ったほどです。
それほど普通のクリニックはトラブルは避けたいと思っているのです。
均等法違反は金銭だけでなく患者の信頼も失う
おそらく今回の一件は事業所名公表だけでは済まず、女性職員から不当解雇による民事訴訟も提起されることでしょう。
更にクリニックに対する悪い口コミも広がっていくことと思われます。
そうなると当該院長は、金も信用も失うことになる可能性が非常に高いです。
しかも今回の事例は男女雇用機会均等法上、“初”のマタニティーハラスメント(マタハラ)をした事業主の実名公表事例として語り継がれることになります。
不幸な結末を想定し、この院長に先を見通した的確なアドバイスをした方はいなかったのでしょうか。
100%避けることができただけに社労士としてあまりにも辛い出来事です。