小渕優子経産相が支援者ら向けの「観劇会」費用を一部負担した疑いが出ている問題で、経済産業大臣を辞任した。公職選挙法で禁止された「有権者への利益供与」違反に当たるという。民間ベースでも接待とわいろの違いを明確に理解したうえで、上手に取引先と付き合い、同じ問題を起こさないようにしたい。
小渕経産相辞任 わいろ認定は限りなくクロ
10月20日(月)、小渕優子経済産業相が一連の不透明な政治資金に絡む問題で、経済産業省大臣を辞任した。
小渕経産相を支援する2つの政治団体が、2010年、2011年に明治座(東京都中央区)へ支援者を招いた観劇会の費用を、合計で2,643万円負担していることが問題となっている。観劇会は2007年より開催されているので、最大で1億円ほどの資金が支援者の観劇会に流用されたのではないかとも言われる。
小渕経産相は10月16日の国会委員会内で「大変お騒がせし、心からおわび申し上げる」と陳謝しており、「観劇に関しては、出席したおひとりおひとりから実費を頂いていると承知している」と発言しているが、問題の火を消すことはできなかった。
差額を政治団体が負担していたと明確に認められた場合、公職選挙法第221条(買収及び利益誘導罪)内の「有権者への利益供与禁止」の規定に抵触したことになる。状況が悪ければ、刑事罪で告訴される可能性もある。
第二次安倍政権は「女性の活躍推進」を標榜しており、経産相は原発問題の舵取り役でもあったことから、今回の事件が政権に大きなダメージを与えることは避けられない。
贈収賄は民間企業でも適用 賄賂と接待の違い
小渕経産相に関わるニュースを見て「わいろ」は官公庁との間、政治家との間における利益誘導・供与を行う場面で生じるものだから、民間ベースの自分には関係ないと考えている人がいるなら、注意が必要だ。
確かに商法ベースで接待とわいろの違いを法律上分ける明文規定はない。
しかし民間企業同士でも、会社に背任するような取引を行って、自らへの利益誘導を行った場合は、会社法の第960条特別背任罪、第967条贈収賄罪によって、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金に処せられる可能性がある。※1
例として、実際には1,000万円で受注している仕事を会社には5,000万円で受注したと申告し、相手方と後に差額の4,000万円を分けあう等した場合は、背任罪・収賄罪で関わった双方が会社法の規定に抵触し、罰せられることになる。
社長であっても過度な自己への利益誘導を以って会社への背任に当たるとされた場合、株主総会や役員会で訴えられアウトとなる。一人代表でも内部からの公正取引委員会通達で捕まる場合がある。
以上を踏まえると、接待費は企業間の取引を前向きに促進するために支払われる経費、わいろは自己への利益供与と認められるもの、という定義が可能だ。
対等な関係で持続可能な付き合いを目指そう
小渕経産相のケース、企業間での贈収賄はいずれも短期的には当事者間を潤すかもしれない。しかし、違法な金銭のやりとりは明るみに出てしまえばそれ以上のデメリットをあなたにもたらす。
真にサスティナブルな取引関係や対等なパートナー関係を築きあげたいならば、やはり実務においてお互いがWin-Winとなる関係を強化しよう。
※1ウェブ会社法
http://www.kaishahou.net/h960.html