昭和の生存戦略はその時代においては正しいものだった
生きる時代で私達にとって有効な生存戦略は異なります。
昭和の時代であれば、その時に良しとされた生き方がありました。たとえば、滅私奉公、終身雇用などの生存戦略です。
平成初期にも、その当時は良しとされた生き方がありました。成果至上主義、業績至上主義をモットーとする働き方が、バブル崩壊後に多くの企業、そこで働く社員にビジネス生存戦略として採用されました。
ただし、これらの生存戦略は冒頭でお伝えしたように、いつしか通用しなくなっています。にも関わらず、時代の変化に気が付かず、多くの人は過去の生存戦略を現在に持ち込んでしまいます。
例えば残業についての考え方一つとってもそうです。昭和の時代であれば日本経済は右肩上がりの成長を続けていたので、とにかく猛烈に働くことが会社と個人双方の成長発展につながりました。
更には社会にも、個人にも分かりやすい成功のロールモデルが存在しました。目指すべきゴールを見つけるのが簡単かつ明確であったため、後はとにかくがむしゃらにやるだけで努力と成果が正比例していたのです。
たとえば、こんな感じです。
松下幸之助のように社員の一生をどんと背負う経営者こそ真の経営者だ。そうすれば社員も私の会社に入ったら滅私奉公で働いてくれるはずだ。
今の会社に60歳まで滅私奉公で働けば年功序列で給料は必ず上がる。だから、結婚したら一戸建て住宅を買おう。
このような昭和の生存戦略から生まれた労働に関する価値観は、「他人より一歩先んじる」、つまり、人よりむちゃくちゃ働けば報われる。というものです。
残業は美徳、とされていたのも昭和の生存戦略にマッチしていたからなのです。昭和の時代において、これは正しい生存戦略でした。
昭和と現代で比較する勝者の価値観・生存戦略
それでは今、平成最後の30年という年にこれらの概念は通用するでしょうか?いいえ、全く通じません。
なぜなら、仕事の質が大きく変化したからです。労働集約的な働き方が通用しないビジネスに身をおいている人は特にそう感じることでしょう。
人力で紙伝票をガンガン処理していた時代と異なり、現在の事務処理における正義とは、AIとクラウドの電子データを活用した「効率化」と「自動化」です。
隣で朝から夜まで一生懸命、休まずに伝票処理ができる人より、効率化ツールを開発し、ボタンを押せば5分で同じ結果を出せる人の方が評価されるのが、私達が過ごす平成30年です。
事実、私達が生きる現代においては、がむしゃらに時間をかけてなんとか仕事をこなす会社や人よりも、脳に汗をかいて効率化出来る会社や人が勝者となるわけです。
それなのに、「残業をせずに帰るのはやる気がない」と昭和のワークスタイルを選択するなら、ビジネス生存戦略における敗者となる可能性が高まります。
頭脳労働者の多くは仕事を如何に早く終え、早く自宅に帰るなり、余暇を使って違うコミュニティにジョインするかを考え、効率化につながる勉強や知識・情報の仕入れに奔走しています。そして、この生存戦略を取っている人材、会社が言うまでもなく今の時代を牽引しています。
もしあなたが、未だにがむしゃら働いている、がむしゃらな働き方こそ美徳であると考えているなら、古い概念をアンラーンする必要があります。
アンラーンとは「学んだことをリセットする」こと
アンラーン?なんだそれ?と思われた方に、この言葉の意味をご説明しましょう。
物事を学ぶことを英語では「Learn(ラーン)」といいます。その逆の意味で「Unlearn(アンラーン)」という言葉があります。
逆と言っても、「学ばない」ということではありません。「Unlearn(アンラーン)」には、「学んだことをリセットする」という意味があります。
では、過去の生存戦略にしがみついている人達にとって、なぜアンラーンが大切なことなのでしょうか?
一つ例をあげてみましょう。私は自社の成長を継続させるために、ネットマーケティングを手がけていますが、時々過去の成功体験が足かせになっている人たちを見かけます。
具体的な名前を出すと個人批判になってしまうので明言は避けますが、かつてものすごく有効だった“とある”マーケティング手法がありました。
その方法を使って、その方は荒稼ぎをして、そのやり方を不特定多数の人に対する「稼げる情報商材」として売りまくっていたのです。
しかし、ある時を境にその有効な手法はいきなり通用しなくなりました。否、それをやるとペナルティを受けてしまい、Googleの検索結果に表示されなくなったり、厳しく罰せられたりしてしまう事になったのです。
ところが、ネットを検索していると、未だにその手法に手を染めている業者や、「稼げるノウハウ」として販売している情報商材屋を見かけます。
「そのやり方、もうとっくに通用しないよ」と言いたくなってしまうのですが、彼らは過去に荒稼ぎ出来た成功体験から抜け出せず、未だに過去の生存戦略にしがみついているのです。
ITの世界は日毎に変化しており、まだ未整備なビジネス分野です。
従って、新しいサービスが登場した直後などは、ある種の分野が無法地帯のようになっている時があって、法整備や規制が追いついていないゆえに、ネットビジネスには裏技的な手法が存在するタイミングがあります。
ですが、当然そのような状態はいつまでも続きませんから、いつかは裏技も使えなくなります。そのときにアンラーンしなければ、そのビジネスを実践している会社や個人は、過去の成功体験に殺されてしまうというわけです。
先程の方も同じように過去の生存戦略に固執した結果、今頃どうしているの?という状態です。
アンラーンを実践するための2つのステップ
とはいえ、「古い常識や習慣をさっさと捨ててしまえ」と言われたところで、これを捨てられる人はなかなかいません。
アンラーンを阻害するもの、それは「今更、別のことを学ぶなんて面倒くさい」という心理や、「自分はこれまでこのやり方でやってきたんだ」というプライド、過去の成功体験です。
これらの阻害要因を超えて、アンラーンするには、以下2つのステップを経る必要があります。
1)現実を直視する
現実を見て、満足しているならそもそもアンラーンする必要はないはずです。しかし、「皆疲弊しているのに成果が出ていない。このままでは会社が失速する」「時代にマッチした働き方ができていないきがする。精神的にも不安だ」「あまりにも費用対効果が悪い。もっと他に良い方法があるのかもしれない」という疑念が湧いてきたなら、まずはその現実を見ることです。
うまくいっていない、思うように成果が出せていないと感じたときは、その感情、現実を直視してください。
この時こそ、あなたがアンラーンするタイミングです。
2)ホンモノを見て今の生存戦略を学び実行する
ホンモノを見ることで、開眼することはよくあります。
例えば私は「投資といえば株式投資か不動産投資」という強い思い込みがありました。
なぜなら、これ以外の手法はリスクが大きく、手を出すべきではないと考えていたのです。
ところが、今は運用資産の多くを仮想通貨に移してトレードをしています。そのきっかけは、仮想通貨の可能性を熱く説き、資産を数十億円に増やす人たちを目の当たりにしたからです。
現在の生存戦略、ホンモノを目の当たりにするために必要なこと、それは、現在の生存戦略を実践している人達と会い、学び、良いと感じたなら自らすぐに実践することです。
私の場合も、直接、仮想通貨にベットする方々に会いに出向き、話をじっくりと聞き、自分でも納得行くまで調べた時、投資対象として「仮想通貨」を追加しました。
現在は低迷を続けている仮想通貨ですが、このような時だからこそ仮想通貨に投資を開始しています。少し前までは考えられなかったことですが、ホンモノを見たことで「投資=株・不動産」という思い込みをアンラーンしたわけです。
テクノロジーの発達が加速するこれからの時代、これまで「常識」「正しい」「時代の最先端」とされてきた情報や知識は次々と陳腐化していきます。
いつまでも過去の常識を大事に抱えて、時代にマッチしない生存戦略を押し付けてしまうと「痛い人」になってしまいます。
今まで保有してきた情報や常識を躊躇なく捨てる力、アンラーンという断捨離能力が、ビジネスの世界で生存戦略を展開する私達は求められています。