残業代を計算する際に家族手当や住宅手当は総額から控除OK?
時間外割増賃金や休日割増賃金等の割増賃金を計算する際には、基本給だけでなく、それに付随して支給される手当も含めて計算する必要があります。
しかし、労働基準法では、家族手当、住宅手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当については、割増賃金を計算する際の総額から控除しても良いとされています。
基本給が18万円で、家族手当が2万円、役職手当が1万円の場合、基本給と役職手当との合計、19万円で割増賃金を計算すれば良いということです。
であれば、残業代を計算する際に家族手当や住宅手当は、総額に含めなくても良いのでしょうか?
原則的に控除はOKだが一定の条件が必要となる
確かに、労働基準法では、時間外割増賃金や休日割増賃金等を算出する際の賃金の額に、家族手当、住宅手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当は、含めなくても良いとしています。
ただし、ここで各手当毎に注意点があります。解説していきましょう。
家族手当
家族手当の場合、家族の人数に応じて手当が支給されていれば、割増賃金を計算する際に総額から控除しても良いのですが、家族数に関係なく一律に支払われている場合には、総額から控除することができません。
住宅手当
同じように、住宅手当も、ローンや家賃に応じて住宅手当の額が決められていれば良いのですが、ただ、一律に定額で支給されている場合には、割増賃金を計算する際の総額から控除できなくなります。
通勤費
通勤費も同様で、総額から控除するには、通勤距離や通勤手段等に応じて手当の額を支給する必要があります。
“名称だけ手当”で算出方法が不明確な手当は残業代不払いの原因
つまり、家族手当や、通勤手当、住宅手当といった名称だけを付ければ、割増賃金の計算の際の総額から、これら手当分を控除できるようになるわけではありません。
この点は多くの経営者の方が誤って理解しています。
手当に家族手当や住宅手当といった名称だけを付けて、支給額の算出方法が不明確にも関わらず、割増賃金を計算する際に、それらの手当の額を含めないで計算してしまうと、結果的に割増賃金の不払いが生じてしまいます。
もし、このような不払いが発生してしまった場合、従業員一人に対しての不払いの額は、少ないのかもしれません。
しかし、従業員の数がある程度いる会社では、従業員全員に対して割増賃金の不払いが起こってしまっている可能性があるので、結果として不払いの額が高額になってしまう可能性があります。
このような事態を防ぐためには、家族手当や住宅手当、通勤手当を支給する場合には、就業規則にその支給額の算出の根拠をしっかり明記することが重要です。
従業員にとっての不利益変更となる手当支給は無効のおそれあり
最後に1つ補足の注意点です。
家族手当を例にお話しますが、仮に現在、家族手当を家族数等に関係なく一律に支給している場合があったとしましょう。
今後、家族数に応じて支給額を算出するように変更する場合、結果として家族手当の支給額が、現在支給している額より下がってしまう従業員が発生する可能性があります。
このような場合には、従業員にとっての不利益変更となってしまい、会社が一方的に変更してしまうと、その変更が無効となってしまう場合が考えられます。
変更を有効なものとするには、従業員の同意が必要となってきます。
労働基準法だけを考えていると、思わぬ落とし穴が待っている場合がありますのでご注意下さい。