シティバンクが韓国内で運営する支店を75%閉鎖すると報道されています。韓国勢との激しい競争、強力な労働組合との摩擦、規制当局による不利な扱いの三重苦による、事実上の撤退と見て良いでしょう。しかし、他国の出来事をあざ笑う余裕は日本にありません。日本でも全く同じ状況が金融業界で起きているからです。
シティバンクが韓国で75%の支店を閉鎖する
シティバンクが韓国内で運営する支店を75%閉鎖すると報道されています。
これまで、韓国国内では外資銀行が韓国勢との激しい競争、強力な労働組合との摩擦、規制当局による不利な扱いにより、極めて厳しい環境にあることが、以下リンク先の記事には記載されています。
参考:シティバンク、韓国内支店の75%閉鎖:日本経済新聞(2017/7/10)
ただ、これは日本も同じ状態で、外資銀行は日本国内で殆ど活躍できていません。
最後までリテール(個人向け)営業を続けてきたシティバンクですら、2014年にこれを撤退しましたから、個人で外資銀行と馴染みのある日本人は殆どいないのではないでしょうか?
合理的な企業行動は恣意的な国家操作やワガママにいつまでも対応できない
では、彼らが撤退するとどうなのか?ということについてですが、外資銀行が撤退を続けると大抵は国内銀行が業務を引き継ぐわけで、顧客はその度に口座振替などの手間による迷惑を被ってきました。
今回のシティバンク大量閉鎖にあたって韓国では、労働組合が反対しているようです。
たしかに労働者を無視した撤退はいただけません。
ただし、外資に対する規制を厳しくして、国内行を保護するべく企業の自由を奪い、更に畳み掛けるように労働組合が会社を相手取ったわけです。
企業としては、「これではやっていけないので、撤退します。」と宣言したわけですが、企業は合理的な経済共同体ですから、この選択は理に叶っています。
これに対して今度は、「撤退するな。」と反論するのは、極めてビジネスセンスの欠けた行為ではないでしょうか。
ビジネスには必ず着地点が必要ですが、これをまともに受けては、着地点を見出すどころか、シティバンクが韓国で生き残る術(すべ)はなくなるからです。
このようなやり方は、いつまでも通用するものではありません。
韓国の出来事は保護政策で似通っている日本へ与えられた教訓
たとえ外資であれ国内勢であれ、最高のサービスを提供できる企業を政府は、自国ビジネスの発展のため邪魔すべきではありません。
民間通しの鍔(つば)迫り合いで、相手が「目の上のたんこぶ」であれば、徹底的に研究して、自分たちのビジネスを見直すきっかけにしていくべきでしょう。
特に国内銀行は、年金の運用をはじめとして、国策と密接に繋がっている部分は確かにあり、こういった調整が難しいのも否めません。
とはいえ、いつまでも自分たちのメリットだけを主張し続けていると、国際的な競争力を失った「おらがこの村の大将」的な、ガラパゴス企業しか国内には残らなくなります。
ビジネスのグローバル化が進む今、習慣や価値観の違いに上手な折り合いをつけ、それら外資の優秀な力を懐柔するしたたかさが、国はもちろん、企業、そして個人に求められています。
今回のシティバンクによる事実上の撤退も、他人事ではなく、自分ごととして捉えていくきっかけになると思います。
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