大抵の会社では、労働者の雇用開始から3ヶ月程度の試用期間を設けています。ただし、この期間にトラブルが生じて労働者を解雇しなければならない時、「試用期間だから」という理由で闇雲に解雇予告を出したり、解雇手当を支払うことなく労働者を解雇すると、後でトラブルが生じやすくなります。なぜなら、試用期間でも雇用から14日を過ぎると解雇に制限が生じるからです。
試用期間内の解雇を容易に考える経営者は多い
大抵の会社では、労働者を採用する際に適正を見極める時間として、入社後3ヶ月程度の試用期間を設けています。
試用期間内に採用した労働者が何らかのトラブルを起こすこともありますが、その内容が解雇事由に抵触していた場合、試用期間中であっても会社は解雇を行えます。
ただし、このような場合に経営者の方から、「試用期間内に見極めが出来て良かった」という声をたまに聞きますが、私は必ず手順を確認することにしています。
というのも、労働者を解雇する際は原則的に、
- 平均賃金日額の30日以上分の解雇予告手当を支払う
- 30日以上の解雇予告期間を設ける
これらのうち、いずれかを行う必要があるからです。
しかも、試用期間内に解雇を行うとき、多くの会社ではこの原則を「試用期間中だから」という理由で闇雲に無視して、手当の支払も予告期間も設定していません。
ここに大きな落とし穴があるのです。
試用期間内でも14日を過ぎると解雇予告や手当が必要になる
確かに労働基準法の規定には例外規定が設定されており、一定の場合には解雇予告を出したり、解雇手当を支払うことなく、労働者を解雇することができます。
その例外規定の中の1つに、「試みの使用期間中の者」があり、試みの使用期間中の者に対しては、解雇予告手当を支払うことなく解雇することが可能です。
実は、「試みの使用期間中の者」は法律で具体的に、「雇用されて14日以内の労働者」という形で明文化されています。
つまり、労働者を雇用して14日以内なら解雇予告手当の支払いが不要となり、14日以上雇用した場合は解雇予告手当の支払いが必要となってくるということです。
冒頭でもお伝えしたように、多くの会社では「試用期間は3ヶ月」と定めますが、解雇の要件については労働基準法が優先します。
「試みの使用期間中」と「試用期間」は、言葉が似ているのですが、それぞれが持つ意味は全く異なるのです。
試用期間内でも雇用には重大な責任が生じる
また、これも勘違いされている経営者が多いのですが、「試用期間」だからといって、単に、「うちの会社と合わない」「思ったより頑固な人間だった」などの理由で、労働者を解雇できると考える方がいらっしゃいます。
解雇予告手当さえ支払えば、無条件に試用期間内の労働者を解雇しても、何の問題も起こらないと考えているのです。
しかし、これも大きな間違えです。
従業員を解雇した後で、労働者がその解雇を不服として訴えを起こした場合に、会社が行った解雇が正当なものと認められるうえで合理的な理由が必要なのは、試用期間内であっても同じです。
合理的な理由が認められなければ、解雇は不当行為となってしまいます。
しかも、解雇の正当を争うときには、解雇予告手当の支払いの有無は全く考慮されません。
「解雇予告手当を支払っているのに、何を今更…」と考えるのは非常に危険なことなのです。
たとえ、試用期間を設定したとしても、労働者を雇うことには重大な責任が伴っているということを忘れないでください。