若い従業員のタトゥー露出に悩む経営者が増えています。ある調査によれば、タトゥーに不快感を持つ人が、60代では80%近くに到達するのに対して、20代では20%強に下落する、という結果も出ています。このような問題に備えて、現状の就業規則内で更なる精査を考えたいのが服務規定です。服務規程はどこまで詳しく規定することが可能か解説いたします。
相談が増える従業員のタトゥーに関する悩み
会社というものは、人間の集合体です。
当たり前のことですが、集まるメンバーも生い立ちが様々なら、個性もバラバラ、それぞれの考え方も違います。
ある人にとっては当たり前の事でも、別の人にとっては、非常識となることもあります。
中でも最近、企業の方にヒアリングしていると相談を受けるのが、タトゥーの露出についてどう考えるか?という問題です。
確かに、多様性を認めるダイバーシティという概念は徐々に浸透しつつはあるものの、業種や職種によっては、タトゥーについて一定のルールを定める必要があります。
例えば、金融機関の営業マンが貴方の会社にやってきた時、クールビズの腕全体にタトゥーが入っていたら…
もしも有名な看板を背負った営業マンだとしても、ナニワ金融道も真っ青な金貸しに思えて、取引をしたいと思えない方も多いことでしょう。
タトゥーを服務規程により禁止するのは合法
とはいえ、世代が若くなると「タトゥーの何が悪いの?」という人の比率は増えます。
ある調査によれば、タトゥーに不快感を持つ人が、60代では80%近くに到達するのに対して、20代では20%強に下落する、という結果も出ています。
このような問題に備えて、現状の就業規則内で更なる精査を考えたいのが服務規定です。
服務規定は、労務管理上非常に重要な事項ですが、法定労働時間や有給休暇と違って、労働基準法等の制限を受けません。
また、服務規程は、よっぽど公序良俗に反する内容でなければ、どのような事項を就業規則に記載しても問題ありません。
そこで私は、タトゥーなどに関する相談を受けた時は、服務規定に関して事業主の方に、「社長が従業員に必ず守って欲しい事項を、どんなに細かいことでも結構ですから、なるべく数多く具体的に書き出して下さい」とお願いします。
「タトゥーの露出を禁止するのはもちろん、職種によってはタトゥーを禁止するのも構わないですよ。」と、アドバイスしています。
タトゥーが駄目なら必ず服務規程に入れよう
ところが、私がこのようなアドバイスをすると、事業主の方からこんな答えが返ってくることが多いのです。
「タトゥーを入れない、見せないなんて、そんなこといちいち言わなくても、普通ならわかるはずだ。そんなことを書いて従業員と軋轢を産みたくない」と。
確かに、就業規則に、服装や髪形について等の細かいところまで記載するのはどうか?と思われる事業主の方の気持ちもわかります。
しかしながら、服務規定は、なるべく具体的に細かい部分まで記載しなければ有効性を失います。
従業員の中には、「タトゥーが取引先に威圧的な印象を与える場合がある」と思わない従業員もいるかもしれません。
ファッションとして、見せびらかすような服装で業務に当る従業員もいるかもしれません。
極端な話、「タトゥーを見せて営業をしたら法律違反になるのか?」と言われてしまえば、話し合いをするレベルにならなくなってしまいます。
そのような時に、「業務中は、タトゥー・入れ墨が見えるような服装は禁止する」「タトゥー・入れ墨を入れることを禁止する」という規定を定めておけば、「これは会社のルールだから」、と言えることになります。
もし、それを守らなければ、懲戒処分の対象とすることも可能になるでしょう。
服務規程は具体的かつ可能な限り細かく作成を
確かに、些細なことまで記載に盛り込むことなく、従業員がモラルを持って労働してくれることが一番望ましい姿と言えます。
しかし、従業員の中には、事業主の考えとは違った方向を向く従業員が出てくる可能性は否定できません。
そのような従業員に対応する時に、規定が有るか無いかによって、解決に至るまでの労力や時間は全く変わります。
ですから、服務規程については、なるべく具体的かつ可能な限り細かい部分まで規定することをお勧めします。