トクホ認可取り消し後の検査はひとまずOK。ところで機能性表示食品は大丈夫?

時事

 9月23日の日本サプリメント(株)のトクホ制度初の表示許可取消に端を発した、消費者庁による保健機能食品の品質管理調査の結果、特段の問題は発見されませんでした。一方で、機能性表示食品の検証事業では、研究レビューの質や分析法、関与成分の表示と実物の相違が見られ、問題となっています。健食ビジネスを行う企業には高度な倫理観が求められています。

スポンサーリンク

トクホ認可取り消し後の品質管理調査はひとまず問題無し

 9月23日の日本サプリメント(株)のトクホ制度初の表示許可取消に端を発した、消費者庁による保健機能食品の品質管理調査の結果が公表されました。

 現在販売中のトクホ366 品目のうち、11月1日時点では分析中であった7品目について追加報告が11月29日に公表され、全ての品目の関与成分量は、許可等申請書の記載どおり適切に含有されていることが発表されました。

 参考:特定保健用食品の関与成分に関する調査結果について(第2報)(消費者庁 平成28年11月29日)

 懸念された関与成分量についてはひとまず問題なしでしたが、現在販売されている366品目のうち、半数以上の195品目が外部の試験・検査機関による検査ではなく、自社検査だったことにやや不安が残ります。

 また、許可を受けていた1271品目中、現在販売されていない品目数が71%の903品目にも上り、連絡先不明の事業者が2社存在したことは、国の管理の甘さと言わざるを得ません。

 トクホ制度は規制緩和により、事業者から国への定期的な報告義務はありませんが、企業の自主管理に委ねられているからこそ、取得して終わりではなく、透明性の高い厳しい品質管理が求められます。

スポンサーリンク

機能性表示食品では調査により問題が露見する

 一方、平成27年に新設された機能性表示食品については、どうでしょうか?

 機能性表示食品制度は、トクホや特別用途食品のような許可制ではなく、国の事後チェックを前提とした制度です。

 27年度の国の検証事業では、「届け出された研究レビューの検証」「機能性関与成分の分析方法の検証」「機能性表示食品の買い上げ調査」を行っています。

 結果、

  • 研究レビューの質に問題がある
  • 分析法について関与成分の同定や定量可能性が低いまたは不可能
  • 商品中の関与成分の含有量が表示値を下回る、過剰に含まれる、ロット間で大きなばらつきが見られる

 等の品質管理上の問題点が見つかっています。

 そんな中、八幡物産(株)は、同社の販売する機能性表示食品『北の国から届いたブルーベリー』について、機能性表示の届出を11月25日に取り下げ、今後は「いわゆる健康食品」として販売すると発表しました。

 なお、同品の取り下げは、昨年9月30日の取り下げに続いて2度目となります。

 取り下げの経緯について、消費者庁の検証事業を踏まえて調査した結果、「採用論文中に科学的な根拠の弱いものが含まれていることがわかり、機能性表示を行うには十分ではないとの判断を下した」としています。

スポンサーリンク

消費者に対する高度な倫理観を求められるのが健食ビジネス

 一つ間違えば、許可取消や表示違反のリスクの高い健食ビジネス。それぞれの食品制度を俯瞰して、戦略的な事業判断が求められます。

 また、製品の品質に関して不備に気付いた場合は、その時点ですぐに「どのような対応をとるのか」を企業判断する必要があります。

 判断基準は、「消費者に対する信頼を裏切らない姿勢はどうあるべきか」で決められるべきでしょう。

 折しも健食市場は、収縮を続ける国内市場における数少ない拡大市場です。

 もしも御社が健食市場への新規参入を検討するならば、これまでの事例を反面教師とし、消費者に対して正しい啓発活動を行うことで、「毎日の健康をサポートするパートナー」としての企業ブランドを確立していただくことを、心から願って止みません。

時事
シェアする
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
久保 京子

株式会社 フィデス 代表取締役社長

広告表示のコンプライアンスや消費者視点の顧客サービスを重視した、ネット通販マーケティングのコンサルティング会社です。

景品表示法や医薬品医療機器等法(旧薬事法)などの広告法務や、顧客満足を高める顧客対応など、ネット通販の「守り」の部分をバックアップします。

広告表示規制が強化される中、違法表記は企業の信用やブランド価値の低下など、致命的な事業リスクになりかねません。
また、拡散力が飛躍的に高まったネット時代のカスタマー対応は、ダイレクトに売り上げとコストに影響を与えます。

カスタマー対応はもとより、広告の違反基準となるのは、サービスの受け手である一般消費者目線です。
常に消費者目線を意識することが、事業のリスクマネジメントの基本となります。

お気軽にご相談ください。

取得資格
内閣総理大臣及び経済産業大臣事業認定資格 消費生活アドバイザー
※消費者と企業の懸け橋として、企業の消費者志向経営をサポート。
 消費者庁の法執行専門職員(景表法やJAS法などの違反被疑事案の調査補助を行なう)や、
 照会専門職(事業者からの相談対応)の要件となる資格。

サービス内容
法令順守広告制作・監修・コンサルティング
顧客対応・顧客情報活用コンサルティング
ECサイト改善コンサルティング

久保 京子をフォローする