社員が副業を行うことで、新たなスキルを築いたり、隠れた能力に気付くことが出来る点に着目し、副業を認可する企業が増えています。このような企業は、社員に自主的な副業を行わせることで、会社のコストを掛けない自発的なキャリア開発を狙っている点で、節約しようとしています。副業を認めるメリットを3つご紹介します。
副業を認可する会社が徐々に増え始めている
経済産業省(中小企業委託事業)の平成26年度兼業・副業に係る取組み実態調査事業報告書(PDF)によると、調査した4,513社のうち96パーセントもの会社が副業や兼業を不可としていました。
しかし、多様な働き方が社会的に認められるようになり、就業規則などで社員の副業を全面的に禁止することが違法だと広く知られるようになってから、副業を公に容認する会社が少しずつ増えています。
労働者側から見ると、副業が認められ給与を複数の会社からもらえることには、複数の収入口を持つことでリスクヘッジとなり、収入増にもつながるなど大きなメリットがあります。
しかし、副業を認めることは、会社側にもメリットを生み出します。
少し前の話ですが、製薬大手・ロート製薬でも副業を解禁したことが大きなニュースになりました。
まずは、ロート製薬が副業を解禁したのは、どんなメリットを見越してのことだったのかご紹介しましょう。
ロート製薬が社員の副業を認可したのはなぜ?
ロート製薬では2016年4月から、会社の許可を受ければ副業が認められるようになりました。
これを受けてロート製薬は、社外チャレンジワーク、社内ダブルジョブという制度を設けました。
社外チャレンジワークは休日や終業後に副業を認めるもの、社内ダブルジョブは複数の部門・部署の仕事を担うものです。
希望者が立候補し社内で審査を受けた上で先へ進められます。
ロート製薬が増益増収の中で副業を解禁した理由は、同社の発表によると、「もっと先の成長をうむためのダイバーシティ※」が理由とのこと。
「副業によって視野を広げ、それを自社の成長につなげていきたい」という言葉もありました。
※ダイバーシティ:いろいろな人材を積極的に活用しようという考え方。人種、性別、国籍、年齢、信条に偏見やこだわりを持たずに、さまざまな人材を活かして最大限のパフォーマンスを発揮させようとするもの。
企業が社員に副業を認可する3つのメリット
ここからは、ロート製薬の副業認可事例を踏まえ、副業を会社が認めることにどんなメリットがあるのか、考えてみましょう。
メリット1)新たな発見により本業に良い影響がある
本業の業務を遂行する中でも、労働者は自分の新たなスキルに気付くことはあります。
一方で、副業はいつもと違うメンバーの中で仕事をするため、本業だけの時よりも自分自身の新たなスキルに気付きやすくなります。
物事に対する視点や視野、視座というビジネスに必須の「3つの『視』」に変化が生まれることもあります。
この「3つの『視』」は、下記のものです。
- 視点:対象のどこを見ているか
- 視野:どのような範囲を見ているか
- 視座:どのような立場(場所)から見ているか
この「3つの『視』」がより研ぎ澄まされることで、副業を行うことは、本業にも良い効果を生むと考えられています。
本来であれば、教育費用をかけて育て上げるスキルも、労働者本人が副業で身につけてきてくれることが期待できますし、スキルがつくことで、自立心やモチベーションも良い方向に向かいます。
メリット2)多様性が生まれる
「アウトプットはインプットから」と言いますが、まさにその通りで、副業で社員が得た新たなスキルや人脈は、そのまま自社の多様性につなげられます。
副業を通じて社員のキャリアに深みが出ると、事業を多角化する際の人材確保、技術の応用や転用につながるため、会社自身のリスクマネジメントにつながります。
「3つの『視』」を持った労働者たちがいることで、この多様性が生きてきます。
メリット3)有能な人材を発掘しやすくなる
今度は、自社が副業社員に職場を解禁するメリットについて考えてみましょう。
この場合、副業を受け入れる側になってみると、優秀な人材を見つけやすくなるメリットが生じます。
副業社員と一緒に仕事をすることは、求職者を時間とお金をかけて集める作業を軽減し、より実践に即した人を見つけるチャンスにつながります。
副業する際に会社が社員へ念頭に置いてもらいたいこと
このように、副業解禁は、企業側にもメリットがある制度です。
ただし、一点注意が必要です。
お金のためだけに行う副業が、社員を成長させる効果は限定的です。
社員が副業する際は、さまざまな会社でたくさんの人に出会い、新たな情報を仕入れることを推奨すると同時に、本業でそれらの経験を如何に活用するか考えてもらうようにしましょう。