「知財トロール」とは、企業に対し知的財産権を行使し、巨額の賠償金やライセンス料を得ることを目的として知的財産権を取得する者を指します。アメリカではその暗躍が多いに注目され、取締りも強化されていますが、日本ではまだ商標制度の抜け道があるため、私達は自衛意識を持って彼らから自社の知的財産を守らねばなりません。
知的財産を悪用する「知財トロール」の暗躍
読者の皆様は「知財トロール」という言葉をご存じですか?
“トロール”は怪物という意味を持ち、企業に対し知的財産権を行使し、巨額の賠償金やライセンス料を得ることを目的として知的財産権を取得する者といわれています。
特許権を利用するパテントトロールは比較的知られているのですが、最近はこのほかにも、商標権を利用する商標トロール、著作権を利用する著作権トロールが現れています。
「知財トロール」とは、これらを総称して名付けられたものです。
知財トロールはアナと雪の女王にも手を出した
知財トロールの活動は企業の経済活動を阻害するおそれがあります。
これを受けて経済産業省が、「知財トロール」の活動を規制するため、法律を整備しようと検討を進めていることが、読売新聞で9月末に報道されました。
実際に、私達の知らないところで現在、商標を大量に出願している人間が存在しています。
どれぐらい大量かというと、年間10,000件を超え、我が国で1年間に出願される商標の総件数で、およそ1割にも及ぶ規模です。
自社で使用する商標ではなく、他社に対し商標権を行使して、ライセンス料を得ることを目的としているといわれています。
大量に出願された商標の中には、私達もよく知る「アナと雪の女王」なども含まれています。
幸いなことに、アナと雪の女王は本家のディズニーが先に商標登録していたことから、「知財トロール」に悪用されることはありません。
しかし、仮に商標登録が遅れていたならば、知財トロールはその権利を主張し、巨額の賠償金やライセンス料をディズニーに請求し、一時的にでも子どもたちが大好きなアニメに触れることが出来なくなったかもしれないのです。
知らぬ間に知財トロールに知的財産を盗まれぬよう自衛意識を持とう
日本のビジネスにおいては、知的財産を守る意識が未だ低いため、「知財トロール」に商標を奪われた後になってから、余計な裁判を争わねばならぬケースが後を絶ちません。
このように「知財トロール」の活動は、企業の経済活動を阻害するおそれもさることながら、商標制度の抜け道をついて活動している点も問題となっています。
経済産業省が対策を講じようとしている点は、まず、この「商標制度の抜け道」を規制しようというところではないかと考えます。
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