ひと昔前までは、個人で会社設立の準備を進めるのは非常に大変で、税理士へ委託するケースが大半でした。
ただ、最近は会社設立のための書類を作成してくれるツールが充実してきて、個人でも設立するのが容易になってきています。
会社設立の書類作成ツールとして、「会社設立freee」と「マネーフォワード会社設立」の2つがあります。
今回はこの2つのツールについて、会社設立の手順を踏まえながら機能を説明していきます。
会社設立までの流れについて
まずは、会社設立までの流れを確認しておきましょう。
会社設立の大まかな流れは下記の通りです。
- 基本事項の決定、印鑑の作成
- 定款の作成
- 資本金の入金、登記用書類の提出
- 設立登記完了の届け出、銀行口座の解説
基本事項の決定、印鑑の作成
会社設立の際は、最初に基本事項を決めていきます。
会社名(商号)、事業目的、資本金額など、会社の基本的な情報を決定させます。
基本事項が固まったら、各種認証を受けるための法人実印、印鑑証明書を作成して、準備しておきます。
定款の作成
定款とは、会社の基本的なルールをまとめたもので、いわば会社内の「規則」と呼ぶべきものです。
作成した定款は、公式性を持たせるために、認証を受ける必要があります。認証は公証役場で行われ、ここで定款の内容を確認されます。
定款の認証が必要なのは株式会社に限ります。合同会社は定款の認証は必要ありません。
資本金の入金、登記用書類の提出
定款の認証後、会社設立の登記を行っていきます。
まず、登記を進めるためには「資本金の入金」を証明する必要があります。資本金額の入金を行い、入金の証明書を準備しましょう。
資本金の入金証明書以外に、下記の書類が登記で必要となります。
- 登記申請書
- 定款
- 役員の就任承諾書
- 役員の印鑑証明書
- 印鑑届出書
- 発起人決定書
- 調査報告書
- 財産引継書
- 資本金額の計上に関する証明書
これらの書類をまとめて、法務局へ提出します。提出してから1週間ほどで登記完了になります。
設立登記完了の届け出、銀行口座の開設
登記が完了した後も、まだ提出しなければいけない書類があります。
下記の書類をそれぞれの提出先へ、定められた期限以内に提出しなければなりません。
書類の種類 | 提出先 | 期限 |
---|---|---|
新規適用届 新規適用事業所現状書の添付書類 |
年金事務所 | 会社設立から5日以内 |
法人設立届出書 | 都道府県税事務所 | 都道府県によって異なるが、おおむね15日以内 |
法人設立届出書 | 市区町村役所(東京23区は、提出の必要なし) | 市区町村によって異なる |
法人設立届出書 | 税務署 | 会社設立から2ヵ月以内 |
給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 1回目の給与支払日まで |
青色申告の承認申請書 | 税務署 | 会社設立から3ヵ月以内(3ヵ月よりも前に事業年度が終了する場合は、その前日まで) |
法人設立届出書には。定款の写しや設立時の貸借対照表など、各種書類を添付する必要があります。
法人の銀行口座を記載する書類もあるので、書類の準備を進めながら、法人口座の開設手続きも進める必要があります。
書類の準備をツールで簡単に行える
上記の流れの中で、会社設立者の負担となるのが登記前と登記後の書類作成です。
書類作成をすべて自力で行うのは、昔は困難であったため、税理士の力を借りることが大半でした。
この書類作成の負担を一気に軽減してくれたのが、会社設立freeeやマネーフォワード会社設立などの書類作成ツールです。
ツールを使うことで、税理士への依頼分を最小限に抑えた会社設立が可能になりました!
会社設立freeeの特徴
会社設立freeeは、下記の特徴をもった会社設立ツールとなります。
- 3ステップで簡単に会社設立ができる
- 法人口座、クレジットカードの申請書類を作成できる
- 専門家に作成を代行してもらうこともできる
3ステップで簡単に会社設立ができる
会社設立freeeを使えば、3ステップで会社設立を行うことができます。
- 必要書類の作成(入力ステップ)
- 法人登記の手続き(設立ステップ)
- 登記後の手続き(始動ステップ)
必要書類の作成(入力ステップ)
画面上で一度情報を入力すれば、各書類に情報が反映されます。
何度も繰り返し、同じ情報を入力する必要がないので、手間を省くことが可能です。
また、入力ステップにて法人設立時に必要となる会社印を購入することができます。
入力する項目は、下記のものになります。
- 会社名、形態
- 会社の住所
- 連絡先
- 発起人
- 事業内容
- 資本金、株式
- 取締役、監査役
- 決算期
- 公告の方法
会社名、形態
設立する会社名、並びに会社の形態(株式会社or合同会社)を入力します。
株式会社、合同会社はそれぞれ享受できるメリットが異なってくるので、よく調べた上で選択するようにしましょう。
会社の住所
会社の住所は正式表記で入力を行います。
いくつか拠点、事務所がある場合は、その中から本拠とする場所を選んで、住所を入力します。
連絡先
連絡先は、手続き時に連絡がとれる電話番号を入力します。
法人設立前の段階ですので、固定電話でなく携帯電話でも可能です。原則、会社の代表者の電話番号を入力します。
発起人
発起人とは「設立メンバー」のことです。
株式会社では、代表取締役、取締役、監査役、出資者の情報入力が必要です。
合同会社の場合は、代表者のみの情報入力となります。
各発起人の住所に関しても、正式表記で入力します。
発起人は、法人格の出資者を入力することはできませんので、注意してください。
事業内容
事業内容は、定款に記載する事業内容を入力します。
定款に掲載していない事業内容を行うことになると、定款を修正して追加記入することになります。
定款の追記にはコストが発生するので、現時点でまだ行うか分からない事業でも、将来扱う可能性があれば予め入力しておくようにしましょう。
資本金、株式
株式会社の場合は、資本金・株式に関する情報入力も必要です。
資本金額によって、中小法人になるか否かが変わってきます。
中小法人になると、普通法人よりも税制が優遇されるので、こちらも迷ってしまう場合は専門家に相談することをおすすめします。
取締役、監査役
株式会社では、取締役、監査役の情報も入力していきます。
取締役会を設置する場合は、「取締役3名以上」「監査役1名以上」の登録が必要になります。
取締役の任期は「2~10年」、監査役の任期は「4~10年」の間で指定することが可能です。
決算期
決算期は基本的に自由に設定することが可能です。
公告の方法
公告とは、株式会社が毎年の決算、資本金の情報など、会社情報を公開することを指します。
公告の方法は、下記の3つの中から選択可能です。
- 官報:国の機関紙に掲載する方法(費用:74,330円~/掲載1回)
- 電子公告:Webサイトで情報を公開する方法
- freee電子公告:freeeの電子公告サービスを利用して公開する方法(費用:3,980円/年)
各項目の内容について、自身で決められない、もしくは決め方が分からないという方は、税理士や行政書士に相談してアドバイスを受けるようにしましょう。
書類作成は自身で行う形にすれば、作成を丸々依頼するよりも依頼料を抑えることができます。
法人登記の手続き(設立ステップ)
設立ステップでは、入力ステップで作成された書類をもとに、法人登記の準備を進めていきます。設立ステップの手順は下記の通りです。
- 定款の認証
- 出資金の入金
- 登記書類の印刷、提出
- 設立日の登録
定款の認証
定款は入力ステップで入力した情報に基づいて自動作成されています。
自身で定款の文言を考える必要がないので、負担が少ないです。
定款は公証役場にて認証を受ける必要があります。どのように定款を認証してもらうか、下記の方法の中から選択します。
認証方法 | 内容 | 費用 |
---|---|---|
電子定款 | 電子文書にて定款を認証する方法になります。行政書士へ認証代行を依頼すると、印紙代40,000円が不要となり、費用削減となります。 | 5,000円 |
紙定款 | 定款を用紙に印刷して認証してもらう方法です。 | 40,000円(印紙代) |
定款の認証方法を選択したら、認証手続きに進んでいきます。
会社の本店所在地のある都道府県内から、定款を受け取る公証役場を選択します。
その後、定款の内容を今一度確認します。問題がなければ、発起人の印鑑証明書をPDF化して、定款のデータとともに代行してもらう行政書士へ送信します。
手続きが完了したら、行政書士から連絡がきますので、連絡後に公証役場に行って定款を受け取ります。
紙定款の場合は、定款を自身で印刷して、その定款を公証役場に持っていきます。
会社の本店所在地のある都道府県内の公証役場へ向かい、認証手続きを行います。
出資金の入金
出資者から、1人の発起人の個人口座へ出資金を入金してもらいます。
出資金の入金を証明するために、「口座名義」「銀行、支店名、口座番号」「振込額、振込人、日付」が分かる書類をプリントアウトしておきます。
通帳、ネットバンキングの明細のどちらでも利用可能です。
登記書類の印刷、提出
提出する登記書類に関しても、入力情報を元に自動で作成されています。
作成されている書類を印刷して法務局へ提出すれば、登記の手続きは完了します。
設立日の登録
最後に、法務局で受け取った「登記事項証明書」に記載されている法人設立日を会社設立freeeの画面で入力します。
法人設立後に必要となる書類に、自動的に法人設立日が記載されるので、毎回入力する手間が省けます。
登記後の手続き(始動ステップ)
会社設立後にも、各書類を作成して役所へ提出する必要があります。
会社設立freeeを使えば、設立後の書類作成も楽々行えます。
書類を提出しにいく役所は下記の通りです。
- 税務署
- 都道府県税事務所
- 年金事務所
税務署
税務署では、主に国税関連の書類を提出しにいきます。
会社を設立してから1ヵ月以内に、下記の書類を持参して持っていく必要があります。
- 法人設立届出書
- 株主名簿
- 青色申告の承認申請書
- 給与支払事務所棟の開設届出書
- 源泉所得税の納付の特例に関する申請書(従業員が10名未満の場合)
- 定款のコピー
- 登記事項証明書のコピー
- 設立時の貸借対照表
設立時の貸借貸借表は、自身で用意する必要がありますが、法人設立届出書、株主名簿などは会社設立freeeを使って自動作成できます。
ダウンロードして印刷するだけなので、会社設立後の忙しい時期でも安心です。
都道府県税事務所
都道府県税事務所では、地方税関連の手続きを行います。
会社設立freeeに、管轄の都道府県税事務所は表示されるので、持ち物リストに記載された書類を準備して、提出しにいきます。
提出する書類は下記の通りです。
- 法人設立届出書
- 定款のコピー
- 登記事項証明書のコピー
年金事務所
年金事務所では、社会保険関連の手続きを行います。
会社を設立した場合、代表取締役や役員であっても、社会保険に加入する必要があります。
年金事務所に関しても、管轄の事務所が画面に表示されるので、各書類を準備して提出します。
提出期限が法人設立から5日以内ですので、少々時間がタイトですが、会社設立freeeを使えばすぐに書類作成できます。
提出書類は下記の通りです。
- 健康保険、厚生年金保険新規適用届
- 登記事項証明書の原本(コピーは不可なので注意)
法人口座、クレジットカードの申請書類を作成できる
会社設立freeeで各種書類を自動作成する他に、法人口座や法人名義のクレジットカードの作成も同時に行うことができます。
法人口座、法人名義のクレジットカード作成は、個人で行うと少々手間がかかりますが、会社設立freeeを使えば簡単に作成することができるので、余計な時間をかけずに済みます。
専門家に作成を代行してもらうこともできる
会社設立freeeでは、時間のない人向けに「専門家による登記代行サービス」を提供しています。行政書士、税理士などの専門家が下記の事項を代行して行ってくれます。
- 電子定款などの会社設立書類の作成
- 公証役場への訪問
- 法務局への登記申請
下記の条件を満たせば、翌日に登記を行ってもらうことが可能になります。
- 印鑑証明書、法人印鑑などの準備ができている
- 資本金の払い込みが可能である
- 専門家の事務所に訪問ができる(事務所は東京所在)
代行サービスは、東京島、神奈川県、千葉県、埼玉県に本店所在地を置く会社のみ利用することができます。
サービス手数料は「30,000円」です。費用は安いとはいえませんが、登記作業をすべて任せられるので、コストパフォーマンスは高いといえます。
マネーフォワード会社設立の特徴
マネーフォワード会社設立は、クラウド型のバックオフィスサービスを扱うマネーフォワードが提供する会社設立ツールです。
マネーフォワードの特徴は下記のものになります。
- ガイドに沿って登記関連の情報を入力できる
- 操作に関する質問をメール、チャットで質問可能
- 法人設立後のサービスが充実している
ガイドに沿って登記関連の情報を入力できる
マネーフォワードでは、会社設立で必要な情報をガイドに沿って入力することができます。
会社設立をするのが初めての場合でも、ガイドに沿って入力することで円滑に入力を進められます。
入力した情報に基づいて各書類が自動作成されるので、行政書士に依頼しなくても登記書類を作成可能です。
入力項目は、会社設立freeeと同様になりますので、上述の項目内容を参照されてください。
操作に関する質問をメール、チャットで質問可能
マネーフォワード会社設立では、操作に関する質問をメール、もしくはチャットで質問することができます。
入力や書類作成を進める中で、やり方が分からなくなってもすぐに確認することが可能です。
メール、チャットでの質問は、マネーフォワード会社設立利用者であれば無料で行えます。
一人で会社を設立する際は何かと不安な点が多いですが、メール、チャットで質問できれば心強いですね。
法人設立後のサービスが充実している
マネーフォワードは、経理や労務などバックオフィス関連のクラウドシステムを幅広く提供しています。
会社設立後に必要となるバックオフィス機能をトータルで準備できるよう、各種サービスを提供しています。
また、現金・クレジットカードの決済システムや販促ツールも合わせて提供しており、実際の事業運営のサポートツールも充実しています。
下記、マネーフォワードが提供するサービス一覧となります。
- マネーフォワード クラウド
- fondesk(フォンデスク)
- MF KESSAI
- PAY.JP
- ペライチ
マネーフォワード クラウド
マネーフォワードクラウドは、マネーフォワードが提供するクラウド型のバックオフィスサポートソフトです。
会計業務、給与計算、請求業務、勤怠管理、経費精算などを一括して行うことができます。
各業務を自動化することに長けており、会計、人事労務の作業を効率化することが可能です。
銀行口座、クレジットカードと取引明細を同期することもでき、面倒な入力を省くこともできます。
会計の仕訳も人工知能がパターンを認識して、自動で勘定科目を提案してくれます。
マネーフォワードクラウドがあれば、法人設立後のバックオフィス業務は問題ないといっても良いでしょう。
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fondesk(フォンデスク)
fondeskは、オフィスや事務所への電話を代行して受けてくれる電話番サービスです。
受け取った電話の内容は、チャットやメールで知らせてくれます。
開業したてのころは人員が足りなかったり、業務が忙しいこともあり、電話対応をすべて行うのが中々難しいです。
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ペライチ
ペライチは、ホームページ作成ツールで、プログラミングやワードプレスの知識がない人でも利用できる仕様になっています。
スマホ表示の最適化、SSLにも対応しており、ホームページ作成の専門家を雇わなくても、洗練されたホームページを作ることが可能です。
利用料金は、980円からとなっていますが、マネーフォワード会社設立を経由すれば、60日間利用料が無料になります。
freeeは「作成代行が頼める」、マネーフォワードは「法人設立後のツールが豊富」
会社設立freeeとマネーフォワード会社設立を比較すると、基本的な情報入力、書類作成の面ではそこまで差はありません。
会社設立freeeでは、自身で登記書類を作成できなくても、登録されている行政書士に代行依頼を頼めば、登記書類を作成することができます。
登記書類を作成する時間がない方に、会社設立freeeはおすすめです。
マネーフォワード会社設立は、法人設立後に提供される各種ツールが充実しています。
特に、マネーフォワードクラウドは法人のバックオフィス機能を集約したクラウドソフトになります。
新たにクラウドソフトを導入しなくても、マネーフォワードクラウドがあれば十分事足りるほど搭載機能が充実しています。
法人設立後、スムーズに事業に入っていきたい方にマネーフォワード会社設立はおすすめです。
まとめ
会社設立freee、マネーフォワード会社設立、どちらのツールを使っても、登記書類の作成自体はスムーズに行えます。
会計の知識がなくても、入力フォームに情報を入力するだけで、簡単に登記書類の作成が完了します。
登記書類作成機能の他のプラスαの部分で、会社設立freeeが良いのか、それともマネーフォワード会社設立が良いのか検討してみてください!