モノ・お金・サービスを共有することを前提した経済圏は、「シェアリング・エコノミー」と呼ばれるようになりました。シェアリング・エコノミーの代表格企業として、勢いの留まるところを知らないのが、世界中で配車アプリを運営するUberです。Uberが成功した理由を3つの視点で説明いたします。
シェアリングエコノミーの代表格企業Uber
テクノロジーの加速度的な進化により、21世紀は「所有」から「共有」の時代になったと言われています。
モノ・お金・サービスを共有することを前提した経済圏は、「シェアリング・エコノミー」と呼ばれるようになりました。
このシェアリング・エコノミーの代表格企業であり、またユニコーン企業の最大手として、その勢いがとどまるところを知らないのが、世界中で配車アプリを運営するUberです。
法律や規制の問題もあり日本市場への参入はかなり苦戦していますし、トップランナーということで何かあれば批判の矢面に立たされることも多いのですが、逆に言えば、それだけ注目されているとも言えるでしょう。
日本ではまだ浸透していないUberですが、彼らがなぜ短期間でこれほどの成功をおさめたのか、3つの視点から分析してみましょう。
1:情報の非対称性を見事にマッチングさせた
シェアリング・エコノミー型のビジネスにおいて成功に至る最大のポイントは、マッチングにあります。
ある場所へ行きたいという顧客の需要があり、それを実現可能な輸送手段を供給する事業者がいる、これが従来のタクシーのビジネスを成立させていた需要と供給の関係です。
特にタクシーのような比較的短距離の輸送において、その需要は瞬間的に生じる場合が殆どです。
新幹線や飛行機のように事前に予約をするようなものではなく、その需要の「読み」は供給側として、非常に難易度の高い問題です。
結果として、タクシーを捕まえたいときにタクシーはつかまらず、タクシーが必要でもないときには何度もタクシーとすれ違ったりする、というようなことが起こります。
タクシー事業者側が、顧客の需要に100%応えることができるだけの供給を用意することが出来ていない、と言ってしまうと単純です。
とはいえ、タクシー運転手の人件費などを固定費として抱えてしまう事業者側としては、顧客の需要に合わせて柔軟に供給を調整することにも限界があります。
従って、タクシー事業者にとって気になるのは稼働率であり、顧客の需要をある程度は予測できるにしても、100%需要に応えることは基本的には不可能だと考えられてきました。
しかし、これは20世紀型のビジネスの発想です。
タクシー業界は顧客を乗せてから目的地を聞いたり、駅前のタクシー乗り場に長い長い列をつくるということを相変わらず続けてきました。
それを打破しようとしたのがUberです。
これを成し遂げるのに役だったのが、21世紀のテクノロジー進化が生み出した、スマホです。
スマホにはGPSがついていて、アプリ上で各自の情報やクレジットカード認証を予め済ませておくことができます。また、タクシーを呼ぶ際には、事前に目的地を指定することが可能となります。
例えば、一方には東京駅から六本木まで行きたい顧客の需要があり、他方にはそれに対応出来る運転手がいる。
この状況はこれまでもあったのですが、その需要と供給をマッチングさせることができませんでした。
つまり、顧客とタクシー会社(個人運転手)の間には情報の非対称性が生じていたため、お互いに機会損失がありました。
Uberが着目したのはこの点であり、彼らはスマホのテクノロジーを利用し、顧客の需要に対応する供給を瞬時マッチングさせ、レスポンスを返すというシステムを用意したのです。
これによって、今まで成立していなかったCtoCの交通ビジネスを成立させることに、Uberは成功しました。
2:顧客と運転手間に相互評価システムを設置
CtoC(個人対個人)のマーケットを機能させるために重要なのは、相互評価のシステムです。
シェアリング・エコノミーにおいて、企業が提供しているのはあくまでもマッチングのプラットフォームであり、供給側の品質を完全にコントロールすることはできません。
そこで活用されるのが相互評価システムです。
Uberにおいては、利用者は運転手を評価することができると同時に、運転手も利用者を評価することができます。
利用者がUberを利用するときには運転手の評価を見るのですが、運転手側も呼び出しがあった場合に利用者の評価を見て、乗せるかどうかを判断することができるのです。
市場経済の自由取引においては、不正が行われたりすることを完全に防ぐことができません。
一方で、不正を行うものはいずれ誰からも取引をしてもらえなくなり、淘汰されていくという経済学の基本中の基本の発想が相互評価システムの根底にはあります。
ヤフオク!などでも出品者・落札者双方が評価し合う仕組みがありますので、評価システムそのものは想像しやすいかと思います。
これをとにかく徹底し、利用者・運転手双方として徹底的に評価し合うような仕組みを構築し、取引の透明性を高めることができたため、UberはCtoCのデメリットを排除することに成功しました。
3:既存のタクシー業界に対する不満を解消!
サンフランシスコに住んでいる友人が、以前こんなアドバイスをくれました。
「気軽にタクシーを道ばたで拾えると思ってはいけない。目的地によっては乗車拒否されることもある。サンフランシスコにくるなら、事前に移動手段は考えておいた方がいいよ。」
それが今では、スマホにUberのアプリを入れておけば、そんな心配は一切ありません。
アプリを立ち上げ、目的地を指定すれば、たちどころにシステムからドライバーの情報と料金が表示され、それをアクセプトするだけ。
車が近くまで来れば、それもアプリ上で通知がされるので、道路に出てスマホを少し振り回せば、向こうから見つけてくれます。
事前に料金もルートも確定しているので、遠回りをされることもないですし、運転手が無愛想で嫌な思いをすることもありません。
日本でもタクシーに乗ってから、「今日の運転手ははずれだな〜」と思うことはみなさんも経験があると思います。
相互評価システムによってそのような運転手は自然と淘汰されていきますし、アプリ上でマッチングがされるため大通りに出て、流しのタクシーを拾う必要もありません。
タクシービジネスというのは、運転手の教育もそうですし、タクシーの準備や予約システムの整備などかなりの資本が必要なビジネスです。
しかし、Uberはマッチングのプラットフォームに集中し、かつ、顧客の不満をきちんと解消することで、絶大に支持されたのです。
不満に強いシェアリングエコノミー型ビジネス
プラットフォーム型のビジネスは、勝者総取りと言われています。
つまり、ナンバーワンが顧客も利益もすべてを獲得するのです。
先行者として圧倒的なスピードで成長してきたUberは、いくつもの買収を繰り返し、圧倒的なナンバーワンとして今も君臨しています。
既存のタクシー業界からするとUberは破壊者かもしれませんが、これまで不満はあってもタクシーを使うしかなかった顧客から見れば、Uberは救世主でしょう。
シェアリング・エコノミーというのは、顧客のニーズを満たすための手段にすぎません。
Uberが成功した真の要因は、顧客のタクシーに対する不満を的確に捉え、それを解消するために、シェアリング・エコノミーを活用したことにあると言って過言ではありません。