金銭的報酬は、ある一定レベルまでの労働を行う人には、モチベーションを与えるのに有効な手段ですが、人間は社会的生物であるがゆえに、経営者は社員に対して、金銭的報酬とは別の報酬として3つの「非金銭的報酬」を与えなければなりません。3つの非金銭的報酬について触れた上で、社内報をどう活用して、これを社員へ付与できるか解説いたします。
モチベーションの向上には非金銭的報酬が必要
金銭的報酬は、ある一定レベルまでの労働を行う人には、モチベーションを与えるのに有効な手段です。例えば、単純作業など入れ替え可能な作業に従事する人にとって、金銭的報酬は大きな誘因となります。
ところが金銭的報酬が、労働のモチベーションに与える影響には限界があると言います。
ノーベル賞経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが、アメリカで幸福や人生の充実度と所得の関係について統計を取ったところ、所得7万ドル(日本円で約800万円)までは、金銭が幸福や充実度と比例するのに対して、それより上の報酬を貰う人々にとってこの比例関係は無くなっていったそうです。※1
従って、経営者は社員に対して、金銭的報酬とは別の報酬として「非金銭的報酬」を与えなければなりません。
しかも、非金銭的報酬のために働く人のほうが、金銭的報酬のみで働く人よりも、生産性は圧倒的に高くなっていくのです。
本日は、社内報を通じて、会社が働く人々の非金銭的報酬をどのように向上させられるかについて、解説していきたいと思います。
非金銭的報酬として社員に付与する3つの報酬
まず「非金銭的報酬」として、会社が社員に付与できる3つの報酬をご紹介致します。
1)コミュニケーション報酬
これは、上司や仲間からの励まし、承認、信頼など、他者との人間的なつながりによって得られるものです。
人間は社会的動物ですから、円滑なコミュニケーションが取れることは、社員から大きなプラスの報酬と見なされます。
2)自己実現報酬
「この会社にいるとこのようなビジネススキルが身につく」「これだけの人間力を高められる」といった実感は、社員の行動を動機づけるものになります。
当然、会社はそのように実感させるための「絵」を社員に示さなければなりません。
3)ベクトル報酬
経営理念やビジョンに対する、共鳴によって生み出される報酬が、ベクトル報酬です。
「会社の存在目的」、「どのような思いで会社を運営していくのか?」といった理念やビジョンを伝える役割を持つのは、もちろん経営者や管理職の方々です。
自らの言葉で社員に伝え、同じベクトルのもとで仕事に取り組まないか?と提案する必要があります。
社内報は3つの非金銭的報酬を社員に付与する
以上、3つの「非金銭的報酬」を見てきましたが、社内報では、これら全てを有効に機能させることが可能です。
まず、1)の「コミュニケーション報酬」では、社内報で取上げること、それ自体が、「承認」になります。
社内の公式メディアで取上げてあげることで、社員のモチベーションアップに繋げられます。
2)の「自己実現報酬」では、社内の優秀な社員を取上げることで、この会社で頑張っていればこのようになれるのだ、そのような成功モデルを見せてあげることが可能です。
これからの社員にとっては、成功モデルが励みになり、この会社で頑張る、というモチベーションに繋がっていきます。
更に3)の「ベクトル報酬」ですが、これは読んで字のごとく、明確な方向性を経営者自らが「社内報」を通じて発信することで、社員が安心して、現在の業務に邁進することができます。
全員へ向けて方向性を打ち出すことにより、公平性も保つことが可能です。
想いを明確にしつつ、現場レベルでは、具体的にどのようなにアクションを起こせばいいのかがイメージできる、そんな編集も必要なのです。
以上、働く人視点で考えてみた、社内報の効果を取り上げてみました。
まだ、社内報を制作していらっしゃらない会社様がありましたら、一度モチベーションアップのツールとして、社内報の制作を検討されてみては如何でしょうか?
※1 Daniel Kahneman: The riddle of experience vs. memory