経営者が考えている以上に、従業員は休憩時間がどれくらい与えてもらえるかを気にしています。かつての労使問題でも、労働時間に対して与えられた休憩時間の短さが問題となり、企業が訴えられる事件が数々ありました。労働基準法は、社員に与えるべき休憩時間を労働時間の長さ別で、明確に決めています。労使問題のプロに解説していただきました。
従業員は皆気にしている休憩時間の長さ問題
従業員にとって休憩時間の長さは、経営者が思っている以上に過敏になりやすい問題です。
蒸し返すようですが、ワタミさんで起きた過労死問題では、15時間労働に対して、休憩時間は15分しかなかったことが、大きな問題となりました。
これは、明らかに法律違反なのですが、休憩時間の長さについては、労働基準法でいくつか制限があります。
そして、この制限を知らない経営者の方が、意外に多いのも現実です。
そこで本日は、法令を順守した適正な休憩時間とは、どれくらいの長さなのかを解説したいと思います。
労働時間の長さで遵守すべき休憩時間は変わる
労働基準法では、労働時間の長さによって、休憩時間の有無及び長さが決められています。
まず、労働時間が6時間の以下の場合には、休憩時間を与える必要はありません。
そして、労働時間が6時間を超え8時間以下の場合には、少なくとも45分間、労働時間が8時間を超える場合には、少なくとも1時間の休憩時間を与える必要があります。
労働時間に応じて従業員に与えなければならない休憩時間
- 労働時間が6〜8時間以下:少なくとも45分の休憩
- 労働時間が8時間超:少なくとも1時間の休憩
これを踏まえると、ワタミさんで15時間労働に対して、15分しか休憩がなかったというのは、明らかな労働基準法違反になります。
更に、休憩時間と労働時間との関係で、1つ注意すべき点があります。
休憩時間は、必ず労働時間の途中に与えなければなりません。
例えば、従業員に8時間労働させた後に、45分間の休憩時間を与えても、それでは労働基準法違反となってしまうのです。
また、法定労働時間である8時間の労働時間の場合、休憩時間は本来、45分間で足りますが、この労働時間は労働契約した時間ではなく、実際に働いた時間のことを指します。
労働契約で定められた時間が8時間であっても、極端な話ですが、1分間でも時間外労働をさせた場合には、労働時間が8時間を超えるため、1時間の休憩時間が必要となるのです。
8時間以下か以上かで例え1分違っていても、15分間の休憩を与える必要があるかないかは、変わるのです。
休憩時間は1時間あれば労基法違反にならない
先程お話しましたように、休憩時間は労働時間の途中に与える必要があります。
ですから、労働時間が8時間で、休憩時間を45分とした場合において、時間外労働をさせる時には、15分間の休憩をさせた後に、時間外労働をさせなければならなくなります。
これは事業主にとって時間管理が非常に繁雑となると同時に、従業員にとっては拘束時間が長くなってしまいます。
労働時間が8時間を超える場合には、休憩時間が、少なくとも1時間以上必要となりますが、逆な見方をすれば、労働時間が何時間に及んでも、休憩時間を1時間与えれば、労働基準法違反とならないこととなります。
労働契約の労働時間が何時間でもあっても、最初から休憩時間を1時間と設定しておけば、労働基準法に反することはなくなるのです。
もちろん、必ず最初から1時間の休憩時間を設定する必要はありません。
労働時間が2,3時間程度の場合には、休憩時間を設定する必要もないのですが、正社員はもちろんパートタイマーやアルバイトでも、労働時間がある程度に及ぶ場合には、休憩時間を最初から1時間と設定しておくことをお勧めします。
なお、休憩時間は、必ずしも必要な時間を一度にまとめて与える必要はなく、労働時間中であれば分割して与えても法的には全く問題ありません。
自社の状況に合わせて、適正な休憩時間を設定されることを、お勧めします。