アベノミクスの肝いり法案「女性の活躍推進法」が8月28日に可決・成立しました。女性の社会進出を政府が達成しようとしている主な要因は、「国庫に入るお金を増やす」ことだと伝えられています。しかしそれ以外にも、深刻な問題を解決することを政府は目指しています。2030年までに労働力人口は約821万人減少するという、深刻な問題を解決しなければ日本の経済的な打撃は深まるからです。プロが解説してくれます。
安倍政権肝いり・女性の活躍推進法が可決
少し前の話になりますが、8月28日に「女性の活躍推進法」が可決・成立しました。
アベノミクスの成長戦略で「女性の活躍推進」が叫ばれているところですが、それを法的にも明確にして、一層の推進が図られることになります。
今回の法制定により、国・地方公共団体、301人以上の大企業は、
- (1)自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析
- (2)その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表
- (3)自社の女性の活躍に関する情報の公表
を行わなければなりません。(ただし300人以下の中小企業は努力義務)
また、行動計画の届出を行い、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良な企業については、申請により厚生労働大臣の認定を受けることができます。
認定を受けた企業は、厚生労働大臣が定める認定マークを商品などに付することができます。
認定マークについては、今後定める予定となっています。
日本政府が女性の社会進出を進めようとする理由は、一体どこにあるのでしょうか?
あと15年で大阪府人口分の労働者がいなくなる
これまでも日本政府は「女性活躍」を成長戦略の中核の一つに掲げ、「20年までに指導的地位に女性が占める割合を30%にする」といった目標を掲げていましたが、法制化することで、ワークライフバランスの一層の推進を図ろうとしています。
一般論としては、歓迎すべきことでしょう。
しかし、庶民感覚としては…「あんまり関係ない」という感じでしょうか。
現実には、働く女性の約6割が非正規雇用で、大企業の管理職なんて、縁のない話。そんな状態で「活躍といっても…」と、当の女性にも違和感があるようです。
そもそも政府の発想には、「税や社会保険の保険料も、女性に負担してもらおう」という狙いがあります。
これが政府の本音であることは、言うまでもありません。
しかし「国庫に入るお金を増やす」以外に、もうひとつの切実なニーズが日本という国にはあります。
ただ、「法律ができたから」という消極的なことではなくて、これからの中小企業のあり方を考えたときに、ワークライフバランスに取り組むのは、むしろ、必須の条件といえます。
その理由は、日本国内で働く人が将来大きく不足することにあります。
「2030年までに労働人口は約821万人減少する」という試算もあり、この数字は大阪府の人口に匹敵する数字です。
つまり15年後には、まるまる大阪府が切れるぐらい、働く人がいなくなる、というわけです。
大阪府の昨年労働人口は442万3千人(2014年)であるため単純比較はできませんが、豊富な人口を背景に大阪府内の総生産は40兆円を超えております。
これが無くなれば、G20参加国のサウジアラビアやアルゼンチンの国内総生産を凌ぐ労働生産力が、消滅してしまう可能性があります。
労働人口の不足を補うためには、女性の社会進出が必須となるのです。
中小企業の人財確保にワークライフバランス!~行政も後押し
すでに大企業では、それを見越して人財の囲い込みをはじめています。
仕事と家庭の両立を可能にする取り組みには、行政からインセンティブとして、様々な支援策がこれからも出てくると思います。
御社が人財不足でなやんでいるなら、これを契機に積極的にワークライフバランスに取り組み、女性社員の採用も検討されてはいかがでしょうか。