スタッフの退職金を「中退共」などで積み立てている企業はあるかもしれませんが、中小企業で経営者に退職金の積み立てがあることは稀です。そこで、節税と経営者の退職金代わりとなる「小規模企業共済制度」をご紹介いたします。加入にあたっての注意事項、支払額と解約手当金受け取りにあたっての注意ポイントを税務のプロが解説してくれます。
経営者に退職金を用意している企業は少ない
いきなりですが、御社には退職金制度はありますか?
もしかすると、スタッフの退職金を「中退共」などで積み立てている企業はあるかもしれません。
では、経営者ご自身の退職金について、導入済み、検討もしくはご用意されていらっしゃいますか?
残念ながら、中小企業では経営者に退職金の積み立てがあることは稀です。
そこで、本日は節税と経営者の退職金代わりとなる「小規模企業共済制度」をご紹介しましょう。
小規模企業共済制度の概要と加入資格は?
小規模企業共済制度は、個人事業を廃業したときや、会社等の役員を退職したときなどの生活資金等をあらかじめ積み立てておくための共済制度です。
この制度は、小規模企業共済法に基づき、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しています。
加入することが可能なのは、常時使用する従業員が20人(商業、サービス業は5人)以下の個人事業主や、その経営に携わる共同経営者、会社等の役員などです。
ただし加入にあたっては、以下の注意事項を抑えておく必要があります。
注意事項1:加入者が共同経営者の場合
共同経営者とは、個人事業主とともに経営に携わっている方で次の要件をともに満たす方となります。
- 事業の経営において重要な意思決定をしている、または事業に必要な資金を負担している。
- 事業の執行に対する報酬を受けている。
注意事項2:従業員の加入に制限あり
常時使用する従業員には、家族従業員や臨時の従業員、共同経営者(2人まで)は含みません。
注意事項3:共同経営者の実態確認あり
共同経営者として加入した場合、3年ごとに加入時から引き続き事業主の方とともに事業の経営に携わっていることを確認するため、中小機構から状況確認のための文書が送られてきます。
小規模企業共済の掛金・限度額と納付方法
それでは掛け金や納付の方法は、どのように定められているのでしょうか?
月額の掛金限度額
1,000円から7万円までの範囲内(500円単位)で自由に選択できます。
掛金の納付方法
毎月の掛金は、預金口座振替での納付となります。また、掛金の払込方法は「月払い」「半年払い」「年払い」から選択できます。
納付の方法
掛金月額は、500円単位で、最高限度額(7万円)まで増額できます。一方、経営の著しい悪化等の一定の理由により、掛金の納付の継続が困難であると認められた場合に限り、1,000円まで減額できます。
共済金(解約手当金)について
共済金の額の算定方法は以下のとおりです。
(共済金等の額) = (基本共済金) + (付加共済金)
詳細はとても複雑ですので、ご興味がある方は一度ご自分の顧問税理士さんへお問い合わせください。
小規模企業はとても魅力的な制度ですが、解約にあたっては無条件で解約ができるワケではありません。そこで注意事項もお伝えしておきたいと思います。
注意事項1:100%回収に20年かかる
解約した場合には、共済金ではなく解約手当金という名目でお金を受け取ることになりますが、掛金分を100%回収するには、最低でも240ヶ月分(20年間)の支払いが必要です。
注意事項2:解約は状況により専門家と相談が必要
解約して元本割れするのを防ぐためには、廃業や事業譲渡という方法もありますが、どのような手段をとることが最善かは事業の状況によりますので専門家に問い合わせることをお勧めします。
条件によっては利回り30%で節税可能にもなる
掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として、課税所得金額※1から控除されるため節税対策となり、同時に「解約手当金」として受け取る時に経営者にとって退職金代わりとなります。
例)課税所得 500万円の方の場合
掛金年額 : 84万円(月7万円)
節税額 : 255,600円※2
これを利回りに換算すると、約30.4%になります。
元本保証でここまで優遇された金融商品は他にはありません。(あったら是非教えてください。)
いかがだったでしょうか。
とても良い商品であることは理解していただけたことと思います。
※2 税額は、平成26年6月1日現在の税率に基づき、所得税は復興特別所得税を含めて計算しています。住民税均等割については、5,000円としています。