小規模企業共済は、掛金を処理することが認められ、経営者が65歳を超えて解約したり、仕事をやめることにより解約する場合、受け取る積み立てを退職所得扱いできる優れた制度です。ただし、途中解約する場合、受け取る積み立てが一時所得となってしまい、課税額が変わるため注意が必要です。具体例を出しながらご説明します。
中小企業経営者の味方「小規模企業共済」とは
「小規模企業共済」とは、独立行政法人中小企業基盤整備機構により運営される、いわば国が用意した「経営者の退職金制度」です。
掛金の額を変更(1,000円〜7万円/月)が可能ですし、掛金は全て所得控除することが認められています。
おまけに中小企業では経営者に退職金の積み立てがあることは稀ですが、65歳を超えて解約したり、仕事を辞めることによって解約する場合は、退職所得扱いとなり、税務上大幅な優遇措置を受けられることになります。
経営者にとって、これほど有用な制度はそうそう存在しません。
このような背景もあり、小規模企業共済への加入件数は約160万件に達し、日本の法人と個人事業主の合算となる約400万件ベースで考えれば、2〜3人に1人の経営者が活用していることになります。
小規模企業共済は途中の任意解約に注意が必要
ただし、小規模企業共済には1つの難点があります。
それは、解約したときに掛金を100%回収するには、最低でも240ヶ月分(20年間)の支払いが必要であり、65歳を超える前に任意解約した時は、得た元本を一時所得として計算されてしまうことです。
人生いろいろですから、良いときもあれば悪いときもあり、小規模企業共済の掛金を支払うのがキツい、ムダ!と感じる場合に、任意解約を検討される方が多いようです。
この際に得る一時所得は、以下のような単純な式で計算されます。
総収入金額-収入を得るために支出した金額(必要経費)-特別控除額(最高50万円)÷2
ここまでは良いのですが、小規模企業共済を任意解約した場合、今までの掛金を必要経費とはみなしてくれません。
加入していた時の掛金は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)されていたので、解約したことによる必要経費までも認めると課税の公平性に欠けるためです。
任意解約と65歳を超えての解約や仕事を辞めることによる解約の場合で課税額はどう変わる?
具体的に数字を挙げて、任意解約の場合と通常解約で、課税対象額がどう変わるか見てみましょう。
任意解約の場合
例えば、60歳までに合計500万円の掛金を支払ったあとに任意解約し、475万円の解約返戻金を受け取った場合、一時所得は以下のように計算して算出されます。
(解約返戻金500万円-50万円)÷2=一時所得225万円
通常解約の場合65歳を超えての解約や仕事を辞めることによる解約の場合
対して、65歳で小規模企業共済を解約し、解約返戻金500万円を受け取った場合は、以下のように退職所得額が計算されることになります。
(500万円-20年×40万円)÷2=退職所得0万円(掛金の払込期間は20年とする)
60歳で任意解約すると一時所得として225万円が課税対象となるのに対して、65歳で20年以上掛金の払込みをすれば、退職所得は課税されません。
冷静に低利の一時貸付制度を利用するのもあり
このように、同じ額の掛金返戻金を受け取るにせよ、「65歳を超えての解約や仕事を辞めることによる解約」か「任意解約」での受取かで、税金のキャッシュアウト額は大きく変わります。
解約を検討するにせよ、突発的に解約するのではなく、冷静にリターンの計算をして、どうしても駄目なら解約するほうが賢明です。
というのも、小規模企業共済は契約者に対して、これまでの掛け金の額トータルの範囲内で低利の一時貸付制度を設けています。
解約を急がずに、一時貸付制度を上手に活用して資金調達すれば、制度の恩恵を受けられるケースも多いでしょう。