「ディスラプター」とは、関係のなさそうな業界から、突然死角をついて、横からシェアを切り取っていく戦法のことです。リアルの世界で起きたディスラプターの3つの例を提示します。今後ディスラプターとして私達の業界に突然入り込むことが予想されるのが「シェアリングエコノミー」を掲げる企業達です。どのようにディスラプターと対峙すべきか検証します。
死角から突然市場参入するディスラプター
日経電子版 2015/7/30「あなたの業界に迫るウーバー ディスラプターは敵か :山川 隆義ドリームインキュベータ社長」
という記事があり、そこでマーケティングの世界での新しい言葉が紹介されていました。
それは・・・
ディスラプター = 関係のなさそうな業界を横から切り取っていく戦法
というものです。
ディスラプターは業界を超えて、こちらが予測もできないような死角から突然市場に進出してお客を奪っていく企業のことだそうです。
ディスラプター3つの例と未来におきること
この「ディスラプター」という言葉を知って、この20年くらいの間、日本市場で起きてきたことの多くの説明がつくと感じました。
例えば・・・
- (1)iモードでケータイ王国を築き上げたユーザーを、パソコン業界のアップルが突然iPhoneというスマートフォンを発明して奪っていった
- (2)同じくスマートフォンのハードを販売しているアップルによって、ソフト業界であるCD販売業界の顧客が奪われた
- (3)コンビニが100円コーヒーや、ドーナッツを販売してドトールコーヒーや、ミスタードナッツの顧客が奪われた
などがすぐに思い浮かびます。
これらはリアルの世界での事例ですが、これからインターネットの世界でディスラプターが増えることが予測されています。
つまり自社の商材とは全く違ったものを売っている企業が突然、競争力の高い練りに練った販売戦略で、こちらの市場に入ってくることが予想されます。
何故このようなことが増えて来ているのかというと、日本経済新聞の記事で山川氏はこう言及しています。
「背景には、(1)全てのものがつながることで業界の壁がなくなったこと(2)情報レイヤーと物理的な人のレイヤーの両方のつながりが生まれたこと--この2つがある。」
つまり、ITの普及とクラウドや低コスト、高速ネット接続が可能になったことで、顧客リストさえあれば誰でも何でも売れる時代になったというのはチャンスが増えて良いことでありますが、何も手を打たずに静観する企業にとっては怖い時代が訪れているのです。
特に、国内というある意味「身内」ばかりを見ていると、突然海外からディスラプターが入ってきて顧客を奪い去ることがあります。
そうした意味で今最も多くの業界にとって脅威なのが、ウーバー(UBER)というインターネットアプリを利用したタクシー配車サービスだと言えます。
なぜ私達はこの会社に気をつけなければならないのでしょうか?
この会社の恐ろしいところは、彼らがただのタクシー配車の専門会社というわけではなく、実現しようとしている未来へのビジョンがあらゆる業種に影響を与えるからです。
ビジネスの形態には色々とありますが、特に余っているものを蓄えて、情報格差を利用し、最も高値で売れる時に高く売るという形態を取る業態を取っている方にとってウーバーは今後脅威となります。
彼らは今後は空いているリソースを、それを必要とするユーザーにコンピューターとネットの力で最安値で紹介する、シェアリングエコノミーを実現しようとしているからです。
ITが普及していなかった時代は確かにそうしたことが可能でしたが、今後はそれが難しくなるはずです。
何故なら情報を蓄えて隠そうとしても、競合他社がその情報をいち早くネットに放出することにより、ユーザーは余分な出費をしないで、最適な購買決定をほとんどリアルタイムで実施することが出来るからです。
かつてはコンピューターの出現によりたくさんの情報を蓄えて、その情報を活用して高値で商品やサービスを販売することが可能でした。
しかしディスラプターの登場により、情報は今までより更に加速度的に早く出回ることになり、企業ではなく消費者が得をする時代が来るようになったのです。
ディスラプターには質で勝負するしかない
それでは私達はどのようにディスラプターと対峙するべきなのでしょうか?
まず現在の業績が安定している企業ほど、ディスラプターには気をつけなくてはなりません。何故ならそうした業界に魅力を感じたディスラプターが予想外のアングルからこちらの市場に侵入してくるからです。その時業界が破壊されて過去のやり方が通用しなくなっても、時既に遅しです。
いつディスラプターが入ってくるのかを考えていても意味はありません。入ってくるということを前提としてこちらも動いて、手を打たなくてはなりません。
防御策は、ディスラプターが入ってきても全く問題が無いように現在のサービス、商品のクオリティーを高め、競争力を圧倒的に高めることしかありません。
積極策としては、自社の顧客基盤を拡大するために自らがディスラプターになることが挙げられるでしょう。