7月1日にアメリカとキューバの54年ぶりとなる国交回復が発表されたことで世界的な利権争いが始まっている。なぜならキューバは資源大国であり、進んだ医療技術を持った国だからだ。日本にとってもキューバは歴史的関わりが古く、しかも親日国でもあるため、日本政府がどのようにキューバと経済的交流を深めていくのか今後注目が集まっていくだろう。
米国と国交回復したキューバに世界中が注目
7月1日にアメリカとキューバの54年ぶりとなる国交回復が発表された。
キューバは人口わずか1,100万人ほどの小国であるが、今回の国交回復を機に世界から注目を集めている。
なぜならキューバは世界有数のニッケルコバルトを埋蔵する資源国であり、アメリカとの国交回復を機に、自国における地下資源開発の本格化が進むことが期待されているからだ。
東京新聞(TOKYO web)によると、すでにキューバでは今年1月から、中国の提案によるコンテナ基地と工業団地の造成が始まっており、中国政府が負担する開発資金は1億2000万ドル(約150億円)になるという。
また、5月には李克強首相がブラジル、コロンビア、ペルー、チリへのインフラ投資を表明し、中南米の進出に意欲を示しているとも伝えられている。
ニッケルコバルトに関わる各国の利権争いは、1996年、クリントン政権時代のアメリカが制定した「ヘルムズ・バートン法」にさかのぼる。
ヘルムズ・バートン法とは、アメリカのキューバに対する経済制裁をより強化するため、キューバのニッケルを(微量でも)使った製品をアメリカに輸入した国は、アメリカからペナルティが課せられる法律をいう。
だが、ついに2014年国連総会において、圧倒的な賛成数でヘルムズ・バートン法が国際法に反すると決議採択され、経済勢力図の「今」を如実に表す形になった。
今回の国交回復で最後に笑う者は誰になるか、世界中の熱視線がキューバに集まっている。
キューバは教育・医療の水準が極めて高い国
地球の裏側に住む我々ニッポン人にとって、キューバ共和国は『冷戦時代にアメリカとソ連に翻弄された革命の国』『キューバ危機で核戦争寸前の火種になった社会主義国家』または『砂糖の生産を主要産業にする貧しい国』というイメージを持つかもしれない。
もしも、そうした先入観があるとすれば、この先はまったく役に立たなくなろだろう。
キューバは世界の有数の医療大国であり、国民の教育水準がきわめて高い文化国であるからだ。
医療費、教育費はすべて無料、乳幼児の死亡率は低く、平均寿命は80歳を超える。さらに5万3千人もの医師を66ヶ国に派遣するなどの国際支援を行っている。
なかでも医薬品開発の分野では、約900種の医薬品のうち500種以上を中南米などに輸出し、キューバの技術力に目をつけた中国は、すでに上海でキューバの医薬品をライセンス生産にも着手している。
医療・教育大国であり、未開発の地下資源を保有するキューバにとって、今回の国交復活はまたとないカードになるだろう。
日本政府も今年4月には、キューバに対する無償資金協力の「再開」を表明しており、11月には官民合同の「初会合」がキューバで開かれる予定だ。
アメリカに気遣いし続けるニッポンも、今回の国交回復が実現すれば、プラント開発、建設、医療分野以外にも、観光や自動車、キューバ料理、サルサミュージックなど、一般の消費者に向けたビジネスが拡大する可能性は大いにあるだろう。
親日カードが利権争いに通用するかは未知数
キューバと日本人の交流は、およそ400年前の安土桃山時代に始まり、首都のハバナには伊達藩(伊達政宗)から派遣された倉常長率(慶長遣欧使節団)の銅像が立っているという。
地下資源を豊富に持つ医療・文化国キューバをめぐる超大国間の利権争いに、はたしてニッポンの「親日」というカードがどこまで通用するのか。
いずれにしろ、1920年代のビンテージカーが街中を走る光景は、それほど長くは見られないはずだ。