日本で19年ぶりに誕生した自動車メーカーが発売した自動車はなんと、EV三輪自動車「エレクトライク」だ。日本エレクトライクの凄さは大手に先んじて、多種多様な三輪自動車を既に発売ベースへ持ってきていることである。不得手な部分のコスト削減を外部委託で行い、得意分野の開発に集中する姿は、新たな分野へ取り組む中小企業にヒントを与える。
新参メーカーが発売したのはEV三輪自動車
日本で19年ぶりに誕生した自動車メーカーが、EV三輪自動車「エレクトライク」を発表したと読売オンラインなどが報じた。※1
「エレクトライク」を生産販売する日本エレクトライク(神奈川県川崎市)のホームページによると、三輪自動車特有の問題であった横転を防ぐために、後輪を左右それぞれに電子制御するアクティブホイールコントロールの技術が用いられた。
また、リチウムイオンバッテリーの容量を小さくして部品コストを抑えるなど、経済性も両立させた仕様となる。
同社のブログによると、車両価格はバッテリー容量によって異なるものの、130万円〜160万円を予定しているとのことだ。
クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助事業の申請がおりれば、30万円の補助金が取得できるため、実質100万円程度で我々はEV三輪自動車を購入できるようになる。※3
日本エレクトライクが大手に仕掛ける差別化
かつて昭和の時代、ニッポンの路上でも普通に見かけた「三輪車(オート三輪)」は、三輪がゆえに横転してしまう事故が多発し、四輪乗用車の普及も手伝い姿を消していった。
だが、技術革新が進み、環境問題が深刻になった今、小回りの効く「三輪車」がもう一度、とくに商用分野のモビリティとして見直されているのだ。
2012年の国土交通省による「超小型モビリティの導入促進」もこの動きに加勢する形となっており、これまでの自動車の概念から進化した時世代の乗り物として三輪自動車への関心が再び高まっている。
大手自動車メーカーもこれら政府の導入する政策に呼応して、超小型モビリティの開発をスタートしている。
トヨタは2013年のジュネーブモーターショーで、前二輪をモーターで駆動する超小型EV三輪車の「i-ROAD」を発表し、現在すでにフランスや日本国内で実証実験をスタートさせている。※4
三輪自動車ではないが四輪の超小型モビリティという分野では、ホンダも「MC-β」の実証実験を開始し、日産自動車も「日産ニューモビリティコンセプト」の利用形態を検証している。
ところで富山県で生産する「エレクトライク」の用途は、おもに宅配業、農業、倉庫業などを想定しているという。
さらに業態に合った使い勝手の荷室スタイルが4種類用意される。
これほど日本エレクトライクが大手に先んじて、多種多様な三輪自動車を既に販売ベースまで持ってこれたのには理由がある。
彼らはシャシーにインドのバイクメーカー、バジャージ・オートの製品を使うなど、自社開発にかかるコストを削減することで、製品の用途に最適なモノづくりを可能にしているのだ。
なお、バジャージ・オートは、オーストリアのバイクメーカーKTMの筆頭株主であり、インドネシアでは川崎重工と提携するインドの大手グローバル企業である。
中小が一気に羽ばたくには選択と集中が必要
日本エレクトライクの事例は、小さな会社が新たな分野に参入する際のヒントを与えてくれている。
小さな企業ほど、自分たちの不得手な部分は一定の範囲で外部に委託し、自社の得意な分野に集中特化する「持たないビジネス(ファブレス)」を行うことが、事業のスピードを向上させるために肝要ということである。
匠の技、優れたモノづくりだけでは、この先の勝負は困難にならざるを得ない。
アイディア、スピード、柔軟性、小回り。小さな会社は大企業にない長所を活かして、翔ぶが如く一気に抜きん出る必要がある。
参照元
※1 Yomiuri Online
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150615-OYT1T50074.html
※2 日本エレクトライク ホームページ
http://www.electrike.co.jp/index.html
※3 日本エレクトライク ブログ
http://ameblo.jp/elec-trike/entry-12039485094.html
※4 トヨタ自動車
https://www.toyota.co.jp/jpn/tech/personal_mobility/i-road/