汗ばむ季節で気になるのが汗の臭いである。この時期に真剣に考えなければならないのが、わきがや口臭など職場における「スメルハラスメント」の問題だ。臭いの発生源となる社員にとっても不可抗力で問題が生じているケースがあり、一方不快な思いをする社員の意見も過小に評価してはならない。具体的なスメルハラスメント対応策を提示する。
夏が近づくと職場で気になり始める人の体臭
5月も記録的な暑さの日々が続いており、いよいよ本格的な夏がやってくる。
これからの汗ばむ季節で自分でも気になるのが、汗の臭いである。デオドラントシートや制汗剤でケアしている読者の方も多いはずだ。
更に自分の臭いはともかく、他人の臭いはもっと気になるのが人間の性だ。臭いのキツイ社員が職場にいて、お悩みの方もいることだろう。
働くこととは多くの人と接することをも意味し、多くの職場では人と接すること無く仕事を行うことはできない。
だからこそ、これからの季節で真剣に考えなければならないのが「スメルハラスメント」、通称「スメハラ問題」だ。
スメルハラスメントの具体的な改善提案策
「わきが」や「加齢臭」など本人ですらどうしようもできない臭いから、タバコの臭い、入浴していない体臭、過度の香水など、職場では時として「臭い(におい)」で不快な思いをする場合がある。
スメルハラスメントとは、体臭や口臭などの臭いを通じて、職場で他人へ”嫌がらせ”となってしまう行動を指す。
例えば人によっては、臭いが原因でイライラして仕事にならなかったり、気分が悪くなって、仕事の生産性が落ちてしまうケースがある。
仕事の中身よりも臭いで仲間を否定し、チームの環境が悪くなってしまう場合もある。
スメルハラスメントは、職場の生産性や人的マネジメントに大きな影響を与えるのだ。
経営者やマネジメント層は職場でスメルハラスメントが生じている場合、どのように問題と対応できるだろうか?以下提示する。
1)責任者が臭いの元となる人へ実態を伝える
臭いで不快感を抱いている社員ではなく責任者(経営者・マネジメント層)が、臭いの元となっている人を傷つけないように、スメルハラスメントが生じていることを伝える。一番重要なのは本人のパーソナリティを否定せず、仕事と切り離して、客観的な事実を伝えることだ。
2)臭いの原因が何かを探り解決策を提示する
臭いの原因が何かを本人と共に話しあおう。具体的な改善策を一緒に考えて行動を促そう。臭いを発生させている本人はどんな言い方をされても、必ず心が傷ついている。1人で改善策へ向けた行動を取るにも力が出ない場合もあり、職場で孤独感を強めれば元も子もない。一緒にできることは損得抜きに手伝ってあげよう。ドラックストアへ一緒に行くことや、二人で飲みニケーションを行い仕事に対するプラスの言葉をかけてあげることが、場合によっては必要だ。
3)改善の努力無くば職場の変更や配置換えも視野に入れる
原因や対策がわかっているのに、本人が何らかの改善に向けた努力を行わない、もしくは開き直るならば、最悪の場合は職場の変更や配置換えも視野に入れる必要がある。この場合は全体最適化に向けて客観的な判断が必要となる。
セクハラやパワハラと違い、スメルハラスメントが生じている場合は考慮すべき事情がある。
臭いが病気療養中あるいは病気を理由とした、本人にとっても「不可抗力」な事態で生じてしまった可能性もあるからだ。
本人が気がつかない間に、糖尿病や慢性肝炎はたまた癌にかかって、体臭が発生している場合もある。例えば胃潰瘍を患っている人は、強烈な口臭を発生させるケースが多々報告される。
このような原因によるスメルハラスメントが生じている場合は、社内の不快感を抱いている社員も含め、全ての人に説明し理解を求める必要が生じる。
病院で治療するための万全なバックアップ対策を取り、休暇を取らせることも考えよう。
臭いを発生させている本人に働く意欲があって、不可抗力ゆえに改善できない場合は、職場全体の環境を維持しながら、本人のためのスペース作りや柔軟な働き方を提案する必要も生じる。
たかが臭いされど臭い 問題と向きあおう
「人の個性は10人10色」というように、臭いが全く気にならない人も世の中には多い。
ただし、臭いを気にする人にとっては、職場でたえず悪臭が漂う環境は、爆音で自分の好みでない音楽を耳元で延々と強制的に聞かされるような感覚だ。
経営者や上司は職場環境や、社内の円滑な人間関係を維持する重要な役目を担っている。
「たかが臭い」と決めつけず、スメルハラスメントと向きあおう。