自動車社会の複雑化を要因とした事故の増大や交通違反に鑑み、今年も6月1日から改正道路交通法(以下、道交法)が施行される。今回の改正でもっとも大きく変わるものは”自転車の罰則”だ。道路の右側を通行しているのを警察官に見つかった場合、1回で違反切符を切られ罰金を支払う必要が生じるなど、自転車運転の社会的責任が大きくなる。
2015年道路交通法改訂は全ての人に関連する
自動車社会の複雑化を要因とした事故の増大や交通違反に鑑み、道路交通法が次々に改正されている。
昨年は、てんかん等一定の病気に罹患しているドライバーに対して、公安委員会が免許の効力や質問票を送付する制度や、パリのエッフェル塔周辺に敷かれた道路のように”ラウンドアバウト”(環状交差点)を想定した新規交通法も施行された。
今年は6月1日に改正道路交通法(以下、道交法)が施行される。
今回の改正道交法は特定の人間が対象となるものではない。自動車を運転しない子供から高齢者まで、ほぼすべての人に影響を与える改定内容になっている。
詳しく見てみよう。
改正道交法最大の目玉は自転車に関する罰則
6月からの改正でもっとも大きく変わるものは”自転車の罰則”だ。
自転車は道路交通法上では”軽車両”として扱われ、違反取り締まりの対象となる。一方で、免許を必要とせず乗れるため、小さな子供から高齢者まで幅広く利用されている。
信号無視をしてすぐに赤切符を切られれば、全国の老若男女が裁判所へ詰めかけ、日本の司法は崩れてしまいかねない。
従ってよっぽどのことがなければ、自転車への罰則は実行されず、青切符すら切られていなかった。
しかし6月の法改正では、自転車に対しても青切符(反則金のみの対応)が切られるようになり、違反行為は厳しく罰せられる。
警視庁・自動車交通安全対策課へ問い合わせたところ、今回の改定で青切符が切られることはありません。(5月28日訂正)
どのような行為で反則金が取られるようになるか、簡単にまとめてみよう。
1)反則すると一発アウトで反則金
車道の路側帯について、進行方向に向かい右側を通行しているのを警察官に見つかった場合、通行区分違反として3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金が課せられる。自転車を車道で乗る時は、必ず道路の左側を通行する必要がある。
警視庁・自動車交通安全対策課へ問い合わせたところ、「警察官の判断により即時に3ヶ月以下の懲役又は反則金支払いとはならない」旨の見解をいただきました。ただし「注意されても指示に従わない場合などに、上記措置が行われる可能性がある」とのことです。(5月28日訂正)
2)3年以内に2回以上違反した場合、講習受講義務(有料)が発生する行為(講習を受けなければ更に罰金発生)
- 歩道を全力で漕ぐ自転車の運転。やむをえず歩道を走る場合は徐行運転。原則的に路側帯を運転する。
- 通行区分に逆らう自転車の運転(一方通行などの標識は自転車も守る義務が発生する。ただし「自転車を除く」と書かれている場合は除外)
- 通行禁止違反
- 指定場所一時不停止行為
- 交差点安全進行義務違反
- 交差点優先車妨害
- 夜間の無灯火運転など安全運転義務違反
- 信号無視
- 遮断踏切への立入り運転
- ブレーキ不良自転車の運転
- 酒酔い運転
なお今回のの措置については、刑事未成年たる14歳未満は対象外となっている。(5月28日加筆)
自転車の取り締まりが強化されている背景
今回の道交法改正に至った経緯には、自転車事故が多発している日本社会が背景として浮かび上がる。
例えば2013年には兵庫県で、子供の運転する自転車と歩行していた高齢者が衝突し、歩行者が重い障害を抱えてしまった。結果として子供の親には、約1億円の損害賠償を命じる判決が下されたのだ。
これを受けて兵庫県では今年3月から、自転車保険加入(罰則なし)を義務とする条例を定めた。
少子高齢化が進む以上、高齢者による注意不足が、自転車による大きな事故へ繫がる可能性も指摘されている。
では改正道交法に対して我々はどのような対策を打つべきだろうか?
1つは改正内容を熟知し、違反を起こさないようにすることだ。
もう1つの対策は、自転車保険加入を検討することである。自転車保険には、自転車運転中の事故により、本人がケガをした場合に加えて、個人賠償責任として他人へケガをさせた場合の補償もついている。
自転車を運転する社会的責任が強まっている以上、正しい取り扱いをこの機に覚えよう。