5月8日、東芝はインフラ工事の会計処理に不適切な点があったとして、前期(2015年3月期)の業績予想を取り消し、期末配当についても無配となることを発表した。一部では組織ぐるみの粉飾決算を指摘し、上場廃止も有り得ると考える旨もある。しかし国策企業である東芝を潰すことはまず考えられない。東芝には真摯な真相解明が求められる。
東芝が不適切会計で決算発表延期ストップ安
5月8日、東芝はインフラ工事の会計処理に不適切な点があったとして、前期(2015年3月期)の業績予想を取り消し、期末配当についても無配となることを発表した。
社外専門家による第三者委員会を設置して調査することも併せて発表された。
これを受けて5月11日、東芝の株価はストップ安となった。
損害額や故意か過失かといった点は不明で、電力システム社、社会インフラシステム社、コミュニティ・ソリューション社の3部門が調査対象となっている。
現時点では粉飾決算とは言い切れないが、コストの過少申告行為が粉飾決算につながると指摘されている。
一部ではこれらの行為を受けて、東芝が上場廃止になる可能性もあるのではないかと言われている。
過去の粉飾決算例 東芝の上場廃止はある?
東芝といえば大手重電の一角であり、売上高6兆円以上に及ぶ大企業である。もし今回上場廃止ということになれば、そのインパクトは計り知れないものになるだろう。
過去の粉飾決算事例としては
- カネボウ:2,000億円規模の循環取引/2005年に上場廃止
- ライブドア:売上の架空計上による粉飾/2006年に上場廃止
- オリンパス:M&Aを利用した損失飛ばし/以後も上場維持
- リソー教育:組織全体による売上の水増し/以後も上場維持
といった例がある。
今回の東芝についてはどう判断されるのだろうか?
結論から言うと上場廃止はあり得ず、粉飾決算があったとしても「特設注意市場銘柄」への適応措置が下される程度の処分となるだろう。
1つ目の理由は、東芝の技術が東京電力復活の鍵を握っていることにある。元来東芝は東京電力の高い品質要求に応え、製品・ソリューション提供で常にトップシェアを占め、関連技術をリードしてきた高電圧変電・系統機器のトップメーカであり、東京電力を技術面で補助している。
2030年の電源構成案で、原子力発電所の発電率シェアが維持されることも含めて、今後も日本の電力分野で東芝が担う役割は大きい。
もう1つの理由も、同じく電力に絡んでいる。東芝の原子力発電所の海外販売は国策として行われている。1基4,000億円以上にも及ぶ原子力発電所の受注は政府にも大きな収入となる。
インフラ系企業を潰すことは国にとってもデメリットが大きいのだ。
巨大事業には人為的な計算が入りやすくなる
巨大規模の工事には、工事進行基準と工事完成基準の2つの収益計算方法がある。
このうち東芝は工事進行基準をとっているため、工事原価の過少申告、不適切な工事損失計上の時期、といった現在発覚している事態には、人間の意図が絡んでいた可能性が高い。
第三者委員会により、真相解明が待ち望まれる。