長い待ち時間にスマホでゲームしても給料は発生する?
先日、運送業を営んでいる経営者の方から、こんなご相談をいただきました。
トラックの運転手が、配送先の関係で、荷物の積み降ろしを行うまでの間、トラックの中で待期している時間があります。
このような時間、運転手は、車内で特に何も作業を行っていないのですが、このような時間も労働時間となるのでしょうか?
労働時間とは、具体的にどのような時間と定義されるのでしょうか?
確かに運送業の現場では、取引先の作業の関係で、荷物の積み下ろしを行うまでに、手待ち時間が発生する場合あります。
手待ち時間に従業員は、車内で特別何か作業をしているわけではなく、場合によっては本を読んでいたり、ラジオを聞いていたり、スマホでゲームをしていることもあるでしょう。
このような手待ち時間は、休憩時間と同じことができるわけですから、経営者から見れば労働時間とは違うのではないか?とも見えるかもしれません。
労働時間か否かの判断は「使用者(事業主)の支配下にあるか否か」で決まる
しかし、結論から言うと、労働時間は、実際に労働に従事する時間はもちろんですが、使用者の支配下に入っている時間全てを指します。
従って、トラック運転手の手待ち時間は労働時間となります。
では、労働時間とは?という問題を考えた時に、何を基準に労働時間か否かを判断したら良いのでしょうか?
労働時間か否かを判断する最も重要なポイントは、「使用者(事業主)の支配下にあるか否か」です。
「使用者の支配下にあるか否か」、と言われると、少しわかり難いかと思いますが、従業員側の視点から言えば、従業員にその時間の自由利用が認められているかどうか?これが問題となります。
つまり、休憩時間中の従業員は、使用者の支配下にはなく、手待ち時間は使用者の支配下にあることとなります。
休憩時間は、労働基準法により従業員の自由利用が保障されています。
もちろん、現実的には何らかの制約があるのですが、休憩時間においては、従業員は労働をしなくても法律的に問題が無いのです。
しかし、手待ち時間は自由利用が保障されているわけではありません。
結果的に車内で本を読んだり、スマホをいじったり、ラジオを聞いて過ごすことができても、いつでも荷物の積み下ろしができる態勢を取っておく必要があります。
従業員は、たとえ作業をしていなくても、その場所から自由に離れることはできません。
このように、従業員が自由にその時間を利用できることが出来ない場合には、使用者の支配下にあると考えられるのです。
手待ち時間が法定労働時間を超えたら残業代も発生する
これは、昼休みの交替制での電話当番も同じ考えとなります。
このように、労働時間とは?ということを考えた場合に、その時間が、使用者の支配下にあるのか?従業員の自由利用が保障されているかどうかで判断されます。
ですから、いくら本を読んでいたり、ラジオを聞いていたりしても、その場から離れることができない手待ち時間は、労働時間です。
当然、給料の支払いが必要となってきますし、手待ち時間が法定労働時間を超えるならば、割増賃金の支払いも必要となってきます。
この点は勘違いされている経営者の方が多いので、特に勤怠管理上、気に留めておくべき知識と言えるでしょう。
同時に、如何に時短労働できるか社内の労働環境、効率的な働く仕組みやシステム組みによる生産性の向上、社内人材の能力開発を行い、無駄な時間が生まれないようにすることも求められます。