武田薬品工業が7兆円買収劇〜飛び交うインサイダー情報
武田薬品工業が、とうとう売上2兆円のシャイアーを7兆円で買収することを先週発表しました。
日本史上、最大の買収劇となります。
しかし、いつもながら関係者の口が軽く心配です。今回も合意に至る前から「関係者筋による情報」として、報道各社がスクープ合戦を繰り広げました。
今日発表するものを1日早く報道してもほとんど意味がありません。インサイダー取引の原因をつくっているだけです。
ちなみにインサイダー取引の取締はかなり厳しくなっていますから、インサイダー取引をしても罰則を受ける方が大半でしょう。
根本的な原因は重要情報がポロポロ漏れる、この実態ではないでしょうか。
史上最高額の買収も市場の反応は極めて冷たい
ただし、シャイアーの1−3月期の売上は4,200億円程度、単純に4倍しても2兆円には届きません。それを7兆円で買うわけです。
参考リンク:シャイアー:1-3月売上高が予想上回る、買収への影響は軽微か ブルームバーグ
その為の借入れ、シャイアー自体の借入れの引き継ぎ、シャイアー自体もM&Aで成長してきた企業のため統制がとれるのか、などリスクを心配する報道が目立っています。
その結果、武田の株価も下がり続けているというのが現状です。
M&Aはリスクの塊ですから、リスクを避けるならやらなければ良いわけです。生き残りをかけて武田がやるなら否定はできませんし、嫌な株主は株を売れば良いわけで、極めて自然な流れでここまできています。
それにしても売上の3−4倍の金額を出して買収をするということは、少なくとも売上が10倍くらいになって、十二分に投資金額を回収できる、という算段があってのことだと思います。
私は買収にはまず妄想が大事だと思っています。妄想で10倍、いや100倍にビジネスをスケールさせるイメージを経営者が持ち、イメージを語り、それをM&A部隊が叩いて実現可能性の高いプランにもっていく。
そして、そのプランをベースに買収金額を弾くしかありません。
武田がシャイアーを買収して今の売上を10倍以上にしようとしているのであれば、あるいは7兆円の投資を回収してあまりある利益を出すイメージを持っているのであれば、支持されてしかるべきです。
上場企業の適時開示制度に買収金額のベースとなった事業計画の公表を求めるべき
ただし、現在の制度ではこれは見えません。
願わくは、上場企業の開示情報として、買収金額のベースとなった事業計画を公表すべきだと思います。
それがあれば、その事業計画が実現可能なのか、そうでないのか、という視点で投資家は自身の意思決定ができます。
のれんの減損の可能性を事前に予測するためにも有益な情報だと私は思います。
上場企業の適時開示制度が、更に投資家にとって判断を行う上で透明性の高いものとなることを願っています。