少額投資非課税制度の口座はまだ拡大余地あり
2018年1月からスタートした積み立て型の少額投資非課税制度、いわゆる「つみたてNISA」。皆さんは口座開設しましたか?
一部報道によると、1月末時点の申込件数が、主要証券・銀行11社で約38万口座に達したそうです。
毎月掛け金を拠出する個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」や従来型のNISA積み立ても合わせると、積み立て投資は全体で150万口座を突破したとのこと。
税制優遇に着目して投資を始めた「投資初心者」が、ここ数年で急増していると思われます。
ただし、一般NISAの口座数が1,102万口座(2017年9月時点)であることを考えると、まだまだ拡大の余地はあるともいえます。
実際2017年12月の、スタート直前のアンケート調査では「つみたてNISA」を知っているか、という質問に対し「知っている」と回答したのは29.4%でしかなかったそうです。
しかも「年齢が若ければ若いほど認知度が低い」という結果に。
若い世代・資産形成世代に、コツコツ投資に取り組んでほしいという金融庁の意向とは、全く逆の数値となっています。
今後も引き続き、現役世代への周知施策が求められます。
NISA、iDeCoの都道府県別認知度
さて、このつみたてNISAの認知度ですが、年齢別だけでなく、都道府県別の調査もあり、興味深い結果となっています。
Q.2018年1月からつみたてNISAがスタートすることを知っているか
山梨県が第1位。2位以下も大都市とは限らないようで、しかも西日本に集中しているのがわかります。
ちなみに2017年1月からルールが変更になった個人型確定拠出年金(iDeCo)に関しての質問も。
2017年6月 日経リサーチ調査 生活実態調査データベース『データ・ア・ラ・モード』定期調査 金融資産・銀行編 Q.個人でも確定拠出年金に加入できることを知っているか
2017年6月 日経リサーチ調査 生活実態調査データベース『データ・ア・ラ・モード』定期調査 金融資産・銀行編 Q.2017年1月からiDeCoの加入対象者が拡大したことを知っているか
やはり山梨県がトップ。
この3つの質問に対し、いずれもトップテンの回答率を出したのは、山梨県、東京都、福岡県のみだったようです。
その他、回答率が高い県は首都圏、福岡、鹿児島の他、堅実なイメージの強い北陸各県なども見られました。
一方で回答率が低かった県には、上記以外の九州、東北、そしてこの手の調査では毎度低位置常連県の沖縄が入っています。
ある部分に聡くある部分に疎い…謎の多い山梨県民のマネーリテラシー
しかし山梨に関しては、一方でまったく逆の結果を出した調査もありました。
「金利が上がったら債券価格はどうなるか」「預金保険制度で1,000万円まで保護される預金の種類は」などの25問の正誤クイズの正答率を、都道府県別に出した調査では、まさかの山梨最下位。強豪沖縄をおさえてぶっちぎりの47位です。
NISAやiDeCoなどの【制度】については詳しいのに、実際の【金融知識】は苦手ということなのでしょうか。
その他の県では、上位も下位もある程度近しい順位なのに、山梨だけが正反対の結果。理由はわかりませんが、機会があれば調べてみたいと思います。
一般NISAの開設率はどこが高い?
さて、本題のつみたてNISA口座ですが、現段階ではまだ都道府県別の開設率までは出ていないようです。
しかし、「つみたてNISAが始まる」ことを知っているのであれば、当然つみたてNISA口座の開設率も高く、実際に運用をする人も多いと予想できます。
一方で、一足先に始まっている一般NISAの口座開設に関しての調査は出ています。
少額投資非課税制度(NISA)口座の開設率/2017年6月 日経リサーチ調査 生活実態調査データベース『データ・ア・ラ・モード』定期調査 金融資産・銀行編
前出の3質問、そしてリテラシー調査結果と比べるとやや異なる結果となっていますが、奈良、福井、東京、福岡などは、やはり共通して「マネーリテラシーが高い」「投資に積極的」な県民性、という結果が出ました。
そして、こちらもやはりというべきか…東北や九州沖縄(福岡鹿児島を除く)は、低い数値を記録しました。
もちろん地域金融機関がどれだけNISAに積極的か、も大きく影響していると思いますが、その口座獲得戦略も地域住民の気質に合わせたものだと考えれば、やはり長年にわたって醸成された県民性を反映した結果だと言えるでしょう。
さて気になる山梨ですが、こちらでは上位にも下位にも出てきません。謎は深まるばかりです…。
欧米に比べれば未だ日本人のリスクに対する抵抗は強い
このように金融に対する知識、意識は都道府県別で大きく差があることが分かりましたが、いずれにしても欧米に比べればどんぐりの背比べです。
投資信託・株式などのリスクを伴う有価証券保有率では、
- 日本:14.3%
- アメリカ:46.1%
- 欧州:24.3%
と、まだまだリスクに対する抵抗が強く、現預金での保有が圧倒的に多い国民性であることがわかります。
一般NISA口座にしても、高齢者が高手数料の「毎月分配型」の投資信託を、勧められるままに開設する、というパターンがまだ多そうですし、「リテラシーが高くなってきた」とは、まだまだ言えない状況にあります。
金融庁が取り組む「貯蓄から投資へ」促す一連の施策は、投資初心者にとってチャンスです。
できる範囲でまずはスタートし、たまには失敗もしながら実際に運用を続けることが、私たちのマネーリテラシーを上げていく近道かもしれません。
NISA、iDeCoともまだ未経験の方は、つみたてNISAをまずは最低金額から始めてみてはいかがでしょうか。