先週、格安スマホサービスを提供する楽天モバイルが、プラスワン・マーケティングから同事業(ブランド名:フリーテル)を5億2000万円で買収することを発表しました。しかし、その財務状況は債務超過と慢性的な赤字にあえぐ実態を示しており、「よく5億円以上を出した」と言われるもの。楽天の狙いはどこにあるのでしょうか?
楽天モバイルが同業のフリーテルを買収する
先週、格安スマホサービスを提供する楽天モバイルが、プラスワン・マーケティングから同事業(ブランド名:フリーテル)を5億2000万円で買収することを発表しました。
参考URL:楽天:会社分割(簡易吸収分割)による事業の承継 に関するお知らせ
携帯大手各社も子会社を通じて参戦する格安スマホ業界ですが、その業界実情は非常に厳しい様子です。
楽天モバイルが買収したフリーテル事業の数値を見ると、その実情が伺えると思いますので、以下ご紹介しようと思います。
フリーテル事業の中身は超がつく赤字会社…
今回の対象事業は、直近以下の財務状況です。
売上高 | 4,329百万円 |
流動資産 | 1,405百万円 |
流動負債 | 2,977百万円 |
固定資産 | 472百万円 |
固定負債 | 113百万円 |
資産合計 | 1,877百万円 |
負債合計 | 3,090百万円 |
見てわかるように、既に完全債務超過です。
資産の合計が約18億円、負債合計も約30億円あることから、楽天は債務超過を解消するだけで12億円程度は追加で出資をする必要があります。
また売上は43億円ありますが、対象事業を分割する前のPL(損益計算書)が大幅赤字で債務超過でもありますから、赤字を垂れ流しをしている状況でしょう。
楽天にはこれを再生させる算段があっての買収だと思いますが、株式に5億2000万円の価値をよくつけてくれたものだと思います。
数値面だけでいうとタダでも買ってくれる先を見つけるのが難しいという状況ですから、売り手(プラスワン社)にとってはラッキーだったと言えます。
乗り遅れた携帯市場の更にニッチマーケットを楽天は狙う
4月末には消費者庁から顧客への景品表示法違反(優良誤認・有利誤認) の措置命令も下され、ギリギリの売り込みをかけねばならぬほどプラスワン社は苦境に追い込まれていたものと思われます。
一方で、プラスワン社は既に43万回線の契約を獲得し、ここ数年で出来た業界内で6%のシェアを保有していました。※
携帯電話という巨大市場の中でも格安スマホ市場は、2014年頃に出来たばかりのニッチマーケットです。
マーケットが出来て早い段階で各社が苦戦を強いられている以上、遅かれ早かれM&Aが頻発するのは自明の理。
楽天はソフトバンクなどに遅れを取り、巨大な携帯電話市場こそ取り損ねましたが、同社には楽天カードを中心とした巨大な経済圏があり、そこへ多数のSIMをリンクさせることができれば一定の旨味が生じます。
それを踏まえて新たなマーケットでは先手を取り、いち早く影響力を強めたいと考えているのでしょう。
※MMD研究所
https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1638.html
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