パナソニックが担当者を1,000人配置し、街のでんきやさんである「パナソニックショップ」の後継者探しを支援し始めると報道されています。
パナソニックショップの多くは「社長=株主=会社」という状態で成り立っており、規模も小さいため事業承継も難易度が高く、独力で進めるのが難しいという判断があったものと思われます。詳細を解説します。
街のでんきやさん「パナソニックの店」の後継者探しを支援
パナソニックが担当者を1,000人配置し、街の電器屋さんである「パナソニックショップ」の後継者探しを支援し始めると報道されています。
参考URL:高齢化進む「街の電器屋さん」 後継者探し支援…パナが担当者1000人
というのも、パナソニックショップによる売上は、パナソニックの国内家電売上高で2割のシェアを占めています。
平成28年の同社調査では、その30%近くに後継者がいないとのこと。
ものすごく大きなコストがかかるでしょうが、後継者がいなくなれば大きな売上パイが消失する可能性もあり、同社もおちおち看過できないところがあるのでしょう。
そして、おそらく、今回の取組はパナソニックにとって、とても難易度の高い業務となるのではないかと考えています。
「パナソニックの店」後継者探しの行方は?事業承継の難易度は高い
こういった話は、販売代理店だけではなく、メーカーの協力工場でも今後起きてくることでしょう。
企業城下町と呼ばれる市町村には、大手メーカーの小さな協力工場、いわゆる町工場が数百、数千とあります。
しかし、販売代理店であれ、協力工場であれ、これら大手メーカーを支える協力企業は、1〜2名でやられているケースが多く、私達のようなアドバイザーがM&Aのご協力するのがなかなか難しいの現実があります。
中でも難しいのは、「社長=株主=会社」の場合です。
業界は違いますがわかりやすい例で行くと、和食店で、オーナー社長が板前をやっているような場合、事業承継を進めるのは非常に難しいことです。
なぜなら、社長が抜けると板前が抜けてしまうため、お店として成り立たないのです。
このような場合、私達にできることがあるとすれば、同業者の中から店長となる人材がいる場合に、その人を送り込むことしかありません。
しかし、大抵の場合そんなことは起こりにくく、これらの社長達も外部のアドバイザーを使うというより、知人の中で事業を引き継いでくれる方を探すほうが、コストも掛からずベストでしょう。
規模が小さく、「社長=株主=会社」という形態の会社における事業承継というのは、本当に難しいことなのです。
FC本部・元締め企業は後継者探しや事業承継を積極的に支援すべき
冒頭でお伝えしたパナソニックショップも同様で、オーナー社長がお客さま周りをしていることが多いでしょう。
投資家がお金を出して済む話ではなく、お金の問題を解決したとしても、誰が事業承継後に店長をやるのかまで、事細かなフォローを誰かがやってあげないと成り立ちません。
販売代理店たるパナソニックショップ独自で、事業承継が進まないと判断し、パナソニック本体が動き出したのでしょう。
情報を1,000人の足で事細かに稼いだ後に、力のある代理店に承継者のいない代理店を吸収してもらう、縁故やネットワークの中で承継者を見つける、といった業務が行われるはずです。
このような同業の中での個人間のM&Aは以前から盛んであり、例えば歴史の長いFCビジネスでは、加盟店間でのM&Aは日常茶飯事で行われています。
「社長=株主=会社」のような協力企業に対する、FC本部やパナソニックのような元締めが事業承継に関与するのは本当に重要なことです。
Photo credit: 水村 亜里 via Visual hunt / CC BY-SA