ベアで今年の春闘が終わろうとしている
2月から続いた春闘がいよいよフィナーレを迎えつつある。
春闘とは、毎年2月ごろから行われる労働運動である。主に労働組合が正社員の賃金引上げなどを目的に、労働時間短縮、労働条件改善なども合わせて会社へ改善要求を行う行為を行う。ここで出した改善要求を会社側がすべて受け入れれば希望通りの賃金や労働条件となる。逆に交渉は失敗することもあり、その場合ももちろん改善は受け入れられない。
すべての会社が一斉に始めるのではなく、まずは大手製造業を中心に始まり、その後大手非製造業、そして中小企業の春闘と続く。大手企業の方向性が決まり次第、中小企業もそれにならうという流れである。
全体的な春闘は3月中には決着する。今年の改善要求に対して大企業からは、過去最高水準の賃上げが続々と実施決定している。ボーナスなどの一時金についても、要求が受け入れられ、好業績や物価上昇などの影響や経営側の歩み寄りが功を奏した結果となっている。
今年はニュースでも「賃上げの春」「ベア最高相次ぐ」と取り上げられるように大企業の労働組合は軒並み強気姿勢となった。
ところでベアの意味を正確に把握している?
ところで、「ベア最高相次ぐ」の「ベア」の意味をご存知だろうか?
ベアとは、「ベースアップ(Base Up)」の略で、賃金の基本給テーブルを引上げるという意味である。
例えば月20万円の基本給で雇われていて、10%のベアが決定した場合、月給は22万円となる。現実には、1%や2%などの賃上げが多い。
そして「ベア」にも種類があり、以下の通りだ。
1)ブルなベア要求
闘牛の「ブル」のように下から突き上げていくような強気な給与ベースアップ要求を指す。過去最大の純利益を残したトヨタ自動車の労働組合のように、過去最大の賃金ベースアップを要求した場合が、これに該当する。
2)ベアなベア要求
熊「ベア」のように手で振り下ろして相手を仕留めるように弱気な給与ベースアップ要求を指す。赤字幅が拡大したシャープの春闘は、夏の賞与が半減し、定期昇給が維持されたため、このケースに当てはまる。
中小企業の春闘はこれからがいよいよ大詰め
今年、大企業で展開された春闘は、使用者側と従業員側の話し合いだけではなく、国・政権の後押しがちらちら見え隠れしたため、別名「官製春闘」とも呼ばれている。
消費税増税による影響はボディブローのように家計や財布のひもに響くため、経済の好循環のために、まず大企業の賃上げが必須となるからだ。
今週は中小企業で労使交渉がまっさかりの期間となる。
大手企業が続々とベア要求を受け入れている中で、労働組合は否が応でも”わが社もベアを!”という声を上げることだろう。しかし、現時点では日本企業の99%を占める中小企業の回答は鈍いと考えられている。
昔と比べてストライキなど労働者による反発は少ない社会になった。しかし、その解消されない不満は転職などにつながり、人材流出を引き起こしてしまう。
中小企業の経営者にとっては、自社の経営に鑑みた慎重な対応が求められる春闘となりそうだ。