時代の流れとして多くの企業が副業を認めるようになりました。一方で、従業員が副業によってトラブルを起こしてしまい、業務に支障をきたす、会社に実害がもたらされてしまうケースも増えています。副業によって生じたトラブルの実例を見ながら、副業で発生しかねない余計なトラブルを防ぐための対策についても考えてみたいと思います。
従業員に副業を認めることで生じるメリット
昨今、ダブルワーク、パラレルキャリア、という言葉が使われるようになっています。
要は、特定の会社で正規雇用を維持して働きながら、勤務時間の終了後に別の会社で働く、空いた時間をアルバイトに使うという働き方です。
実際に、大手企業やITベンチャーでは、徐々にこのような働き方を認める会社も増えてます。
残業代のコスト削減にもつながりますし、他の職場で働くことにより社員の経験を自ら積み上げてもらえますし、社風もオープンだということで採用など有利に働きやすいからです。
労働基準法の視点から見ても副業は認められるべきもの
では、労働基準法から考えた時に、ダブルワークやパラレルキャリアはどのような形で捉えることが可能でしょうか?
従業員との雇用契約は、従業員に決められた時間(所定労働時間)働いてもらい、その対価として給料を支給する形態の契約です。
つまり、雇用契約とは、「時間」を基準とした労働契約であり、従業員は契約で決められた時間分は、会社の定めに従って働く義務が生じます。
従って、残業が必要な場合、会社側は契約で決められた時間以上に働く部分について、残業代を支払わねばなりませんし、従業員にもこれを請求する権利があります。
一方で、業務自体が終了すれば、従業員は業務外の時間をどのように利用しても、会社から干渉を受けるいわれはありません。
勤務時間終了後に別の会社で働いても、それは、従業員の自由なのです。
ですから、勤務時間終了後にアルバイト等をすることを、会社側が無条件に禁止することは、労働基準法の観点からは基本的には出来ません。
副業が風俗…副業のお店が潰れてトンズラ…
ただし、副業を社員に認める場合、デメリットが生じるケースがあることにも注意する必要があるでしょう。
たとえば、アルバイトの業種によっては、会社の信用を損なう可能性も考えられます。
よく実務で生じるトラブルが、従業員が定時であがった後、会社には何も言わず風俗店で働いており、これを第三者から報告されるというパターンです。
報告を受けるだけならまだしも、悲惨な実例として、「風俗店で◯◯社の社員のAAが働いてるぞー!」とネット投稿をされてしまい、会社として大きな実害を受けたケースもあります。
また、従業員は、会社に対して適正な労働力を提供する義務があります。
勤務時間終了後にまた別の会社であまりに重労働を行うと、翌日の勤務に影響が出て、適正な労働が出来ない場合もあります。
更に、自分でお店を開いて、あまり上手く行かずに借金をこさえていきなりトンズラ…というケースもありました。
外部との取引対応はもちろん、社内整備にも大きな手間がかかり、後ろ向きな作業が続く経営者の姿に、深く同情を覚えたものです。
このように、会社が干渉できない時間において、従業員が副業することによるトラブルが実際に生じています。
もちろん、従業員が高度なモラルや識別力をもって、自主的にバランスの取れた判断を下していれば問題ありませんが、全員が全員にそうしてもらうのを期待するのは酷です。
結論:副業を認めるなら一定の制限とルールが必要
従って、副業を行う際は、会社で一定の制限やルールを作ったほうが、かえってスムーズなことが多いのが現実です。
たとえば、従業員のアルバイト等については就業規則等で許可制にすることで、規定の妥当性が生じます。
万が一、無許可でアルバイトしていた場合には、懲戒処分の対象とすることも可能となってきます。
社風や従業員の勤務形態によって、もう少し緩い形のほうが良いとしても、申告を義務付けるくらいはやっておいたほうが良いでしょう。
たしかに、近年の厳しい経済情勢の中で、1つの会社の収入だけで生活を成り立たせることが、従業員にとって合理的でないのという現実もあるでしょう。
しかし一方で、会社にも従業員に適正な労働を求める権利があります。
副業を認めることにはリスクもあるという点を十分に認識しながら、上手に時代の流れに沿ったキャリア制度を運用する力量が経営者に求められます。