家族手当、住宅手当、子女教育手当、通勤手当の支払い条件は、従業員にとって重要な事項です。手当を設定するか否かは会社が自由に判断して良いことになっています。ただし、手当を設定するなら、その支払条件が一定額か個別条件による設定かで、トラブルの起きやすさが変わります。特に割増賃金の支払では、どちらの支払条件を選択するかで手当の支払額が大きく変わってしまうのです。
手当の設定をどうするかは基本的に会社の自由
給料に関する条件は、就業規則に必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」です。
基本給以外に手当が支給されるなら、その手当の具体的な内容も記載しなければなりません。
従業員にとって給料は最も重要な労働条件ですが、支払い方法や実際に支払う額は、最低賃金を上回っていれば会社側が自由に設定可能です。
給料に附帯する手当に関しても、その支給額や計算方法は、会社が任意に設定できます。
ただし、法律の制限を受けない手当も、就業規則への記載方法次第でトラブルを生む要因となるため注意すべきです。
手当に細かい条件を設定しないと割増賃金の支払でトラブルが起きる
手当について労使間でトラブルが生じたり、労基署から不備を指摘されるのは、時間外割増賃金の支払との兼ね合いが殆どです。
まず、従業員を法定労働時間を超えて働かせたり、休日または深夜に働かせるなら、会社は労働基準法で定められた割増賃金を必ず支払わねばなりません。
この割増賃金を計算する際は、基本給以外の各手当を含んだ金額で計算する必要があります。
一方で労働基準法は、家族手当、住宅手当、子女教育手当、通勤手当に関して割増賃金を計算する際に、それらの額を含めなくても良いと定めています。
つまり、基本給25万円、業績手当10万円という形で支払うより、基本給25万円、家族手当5万円、通勤手当5万円として支払う方が、同じ35万円支払う場合でも、割増賃金の額は少なくなります。
ただし、手当の額を割増賃金を計算する際に除くなら、条件を1つ満たさねばなりません。
家族手当があるならば家族の人数等に応じて手当が支払われ、また、住宅手当があるならば家賃や住宅ローン残高に応じて手当が支払われる必要があるという条件です。
つまり、家族手当や住宅手当として単に一定額が支払われるいるなら、たとえ、名称が家族手当や住宅手当であっても、割増賃金を計算する際には、その額を含んで計算しなければならなくないのです。
就業規則には必ず個別条件に応じた手当の記載を含める
手当が一定額の会社さんはかなり多いですが、もしかするとムダに割増賃金の支払をしている可能性があります。
逆に、手当が一定額なのに割増賃金に手当を含めていないならば、それは割増賃金に支払不足が生じていることをも意味します。
もしそのような状態なら、給料に家族手当や住宅手当、通勤手当を含めて支給するなら、就業規則には「家族手当を10,000円支給する。」という形では無く、「家族1人につき2,000円を支給する」という形で規定することをお勧めします。
この部分は、労働基準監督署の調査を受けた場合には必ずと言って良いほどチェックされます。是非ご注意下さい。