16億人の断食〜イスラム圏へ進出した企業はラマダンにどう対応すべき?

労務

 16億人の信者を抱えるイスラム教の聖なる月「ラマダン」。敬虔なイスラム教徒の人々は、この期間に入ると、日の出から日没までは一切の飲食を摂らなくなり、仕事にも様々な影響が及びます。したがって、イスラム圏の諸国へ進出した企業にとって、ラマダン期間の労務管理は非常にハンドリングが難しいものとなるのです。ラマダン期間中に労務管理で気をつけるべき点をご紹介しましょう。

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イスラム圏で日系企業が驚く宗教がビジネスへ与える影響

 昨今、経済成長が著しい東南アジア(インドネシアやマレーシア等)への進出、富裕層の人口比率が高い中東諸国の人々を取り込む「ハラルビジネス」を展開するため、イスラム圏諸国に拠点を構える企業が増えています。

 宗教の戒律を生活に取り入れ守ることが少ない日本人が海外に行くと、驚くほど宗教がライフスタイルに大きな影響を与えることに気がつくものです。

 特に、敬虔なイスラム教徒(以下、ムスリム)の人々は生活の中心に宗教があるため、宗教に合わせて仕事を調整します。

 中でも、彼らにとっての一大行事が、「ラマダン」です。

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約一ヶ月間の断食が続くラマダンとはどんな期間か?

 ラマダン(ラマダーン)とは、イスラムの暦で「断食月」という意味の言葉です。

 ラマダンは、イスラムの聖典・コーランに定められた、神の恵みに感謝を示す月(斎戒【さいかい】月)とされ、2017年は5月27日から6月25日までが、ラマダンとされます。(国によってラマダンのシーズンは変わります。たとえば、ドバイ(UAE)の場合、司法省が月観察委員会の判断で、開始と終了の日を決定します。)

 この期間、多くのイスラム教徒は日の出前に食事を済ませ、日の出から日没までは一切の飲食を摂らず、アッラー(イスラム教の神)への感謝を示します。

 日の出前と日没後は飲食をすることが許されますが、流石に日中何も食べられないのは堪えるところ。

 後半の残り数日になると、疲れやお祭り騒ぎ(日没などに皆で集まり飲食をする)が続いたことで、仕事中にだるそうなスタッフや、眠さで集中力が欠けたスタッフも出始めます。

 中には、ラマダンが辛くて早く帰宅するスタッフもいます。

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ラマダンの労務管理におけるビッグイベント「就業時間の変更」

 「商売と宗教は別のもの」と考える日本人経営者にとって、このような状態はなかなか理解しにくいものです。

 しかし、「郷に入りては郷に従え」という言葉にあるように、日系企業がイスラム圏の諸国に拠点を構える場合、ラマダンの習慣に応じた労務管理を行う必要があります。

 代表的なところだと、就業時間の変更は必須のものとなるでしょう。

 たとえば、私達がコンサルティングで入っている日系企業の多くは、7:30~16:30(1時間休憩)、もしくは8:00~17:00(1時間休憩)という勤務開始が朝早い体制に変更したりします。

 また、教えに忠実な中東アラブ地域では現地の労働法によって、6:00~12:00という6時間シフトとなることが多いです。

 例えば、UAEではラマダンの間、労働時間を2時間短縮するという労働法を制定しています。

 このような場合、午前中は宗教問わず全従業員で業務にあたり、午後は非イスラム教徒従業員で対応という勤務体制になります。

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ラマダンの間に労務管理で気をつけるべき3つの点

 就業時間の変更以外にも、ラマダンの間は以下のような形で、従業員の労務管理に気をつける必要があります。

1)ムスリム・非ムスリム率を把握したシフト決め

 特に勤怠管理においては、期間中に業務が滞りなく進めるために、担当業務ごとのムスリム・非ムスリムの比率を、前もって確認する必要があります。

 昼夜交代制の業務シフトを組んでいるような業態ならば、ムスリムのスタッフが入れない時間帯のシフトを考慮して、その時間帯に非ムスリムに入ってもらえるよう、前もってお願いする必要があるかもしれません。

2)ムスリム・非ムスリムの休憩時間・休憩場所棲み分け

 自ら断食しているとは言っても、ムスリムだってお腹は空きます。

 断食中のムスリム従業員への配慮として、非ムスリムの食事時間をムスリムの休憩時間とずらすなどの施策を取るのが賢明です。

 日中のムスリムは水分も取れませんから、非ムスリムにはラマダン期間中、水分をムスリムに見えないところで飲むよう、飲用場所を指定する必要があるかもしれません。

 また、通常喫煙しているムスリムスタッフでも、ラマダンの期間中は禁煙する人が多くなるため、非ムスリム従業員用に喫煙コーナーを用意する必要があります。

3)駐在邦人スタッフのビザの早期取得

 邦人スタッフ向けの配慮となりますが、国によって、ラマダン期間中は大使館業務も勤務時間が短縮されることがあります。

 この場合、ビザ取得が遅れる傾向があるので、邦人スタッフのビザ取得が必要な場合は、早めに済ませておくのが得策でしょう。

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イスラム圏に進出するならラマダンへの考慮は避けて通れない

 「こんなことまでしないといけないの?」と思われた方、きっと多いかと思います。

 しかし、海外ではイスラム教をはじめとして、宗教と商習慣が密接に結びついているため、日本では考えられないスタッフへの配慮が企業に求められるのです。

 これから、イスラム圏の国々でビジネスを展開される方には、ラマダンを念頭に置いた労務管理をご検討いただければと思います。

Photo credit: Seyfi Şeren via VisualHunt / CC BY

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吉住 幸延

ガルベラ・パートナーズ グループ代表取締役
吉住 幸延

経歴:

1993年、慶應義塾大学・経済学部を卒業
大学在学中に北京師範大学に留学
新卒で株式会社ヤオハン・ジャパンに入社
経理部・財務部に所属し、事業再生や上場準備を担当
1998年、株式会社インテリジェンスにて営業を経験
2000年、会計事務所にて会計業務を経験
2005年、株式会社ガルベラ・パートナーズを設立
その後、ガルベラ・パートナーズグループに拡大
現在は、主にコンサルティング部門を統括する
趣味:アウトドア

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